名も無き世界へようこそ。 ここには主に日常の日記、野球関連の事柄、アニメの感想を載せています。 また、最近二次創作SSも書き始めました。 良かったら読んでいってくださいw 読んだらコメント書いてくれるとメチャ嬉しいですw 宜しくお願いしますwm(_ _)m

2008年1月27日日曜日

<第10話 愛しい君>訂正版

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』


いきなりですが、ここでお詫びを申し上げます。

夢中で描いている内に話が全く噛み合わなくなっている事に今日朝起きて気付きました…。orz

そういう訳で、こちらは訂正版となってます。

本当にサーセン。m(_ _)m

後書きでも語っておりますので。

読んでくれている方には本当に申し訳無い事をしてしまいましたです。m(_ _)m

次からは、そうならない様に気をつけますです、はい。








<第10話 愛しい君>









智哉がフェイトやなのはの護衛任務を引き受けてから数日が過ぎた。

ここ数日、オレはフェイトとなのはを学校に送った後、大学には行かず、フェイトの家に戻ってリンディさんやクロノ、エイミィと共に闇の書について資料を集め漁っては調べている。

資料はエイミィが主に集めてきたものだ。

その資料を基に、オレ達は互いに今後の方針や対策を練っている。

今はその作業も休憩中。

クロノは通信を使ってレティ提督と会話中。

ガチャ。

「…クロノ、ちょっt…」

『…それから、グレアム提督のところの使い魔さん達が会いたがってたわよ?可愛い弟子に会いたいって。』

「……リーゼ達ですか。……その、適当にあしらっておいて貰えますか?」

苦笑しながらそう伝え、ではと挨拶をしてから通信を切りこちらに気付いた。

「…申し訳ない。……でどうしたんです?」

「……あぁ、先程の話の続きなんだが、進めたいから戻って来て貰おうと思ってね。邪魔のようだったから、終わるまでこうして待ってたって訳さ。」

「そうでしたか、済みません。分かりました、行きましょう。」

クロノは言いながら椅子から立ち上がり、リビングへと戻るので、オレもその後を続いた。

エイミィの姿が見えないと思って色々な方を向いていると、台所の冷蔵庫を漁っていた。

オレ達に気付いたのか、

「おう、クロノ君。そっちはどうだった?」

「武装局員の中隊を借りる事が出来た。捜査を手伝って貰うよ。そっちは?」

「良くないね~。昨夜もまたやられてる。今までより少し遠くの世界で……魔導師が十数人、野生動物が約四体。」

「野生動物?」

エイミィの現在の状況説明の中に野生動物もあったため、クロノは不思議に思ったので、疑問を投げ掛けたのだろう。

「魔力の高い大型の生物だろうな。リンカーコアさえあれば、人間で無くとも別段良いのだろう。」

オレがエイミィの代わりに、クロノに説明した。

「……しっかし、まさか野生動物のリンカーコアまで蒐集対象にするとは。まさに形振り構わないとはこの事だろうな。恐れ入るよ、ヴォルケンリッター。」

そして同時に自分の正直な感想を漏らす。

二人もオレの感想に複雑な表情を浮かべていた。

少しの間の後、エイミィが口を割る。

「闇の書のデータを見たんだけど……何なんだろうね、これ?」

データをホログラムで表示したので、

「魔力蓄積型の…ロストロギアか。魔導師の魔力の源であるリンカーコアを喰らう事によってそのページを埋め、増やしていくようだが。」

簡単にではあるが、オレの今持ち合わせる知識で説明した。

「…全ページである、666ページが埋まると、その今まで溜め込んだ魔力を媒介にして、真の力を発揮する。それこそ、次元干渉レベルの強大な力を。」

「んで、本体が破壊されるか、又は所有者が死んでしまうと、白紙に戻ってまた別の世界で再生する…と。」

「様々な世界を渡り歩いて、自らが生み出した守護者に守られ、魔力を喰らって永遠を生きる。破壊しても何度でも再生しまい、停止させる事の出来ない途轍も無く危険な魔道書。」

クロノとエイミィもオレの説明に付け加えるように話す。

「……それが通称『闇の書』と呼ばれる魔道書か。…今の所の策として、完成前の捕獲だろうな。そのためにはまず、ヴォルケンリッターを捕獲し、そこから主を引きずり出さなければいけない…か。」

「……うん、頑張ろう!」

オレ達は顔を揃えて頷いた。

…ふと、何となく顔を台所に向けると、丁寧にランチマットに包みが一つ置いてあった。

「エイミィ、この弁当らしき包みは?」

「……え?どれです……って、まさかフェイトちゃん?」

「今何時か分かるか、クロノ?」

「……ええと。十二時過ぎたところ、ですね。」

フェイトの弁当箱をヒョイと持ち上げ、

「ならまだ間に合うな。ランニングがてら届けて来るわ。」

そう二人に伝えてオレはフェイトの家を出た。





(…アイーシア、昼の時間まであとどの位だ?)

≪およそではありますが、五分といったところでしょうか。≫

ここら辺はまだ中間、まだ半分程度しか来ていない。

普段、フェイトとなのははバス通学。

オレが護衛をしている今は二人ともオレに合わせて歩いているが、二人の家からだと結構遠い。

そこで、オレが護衛の任に就いてからは、少しでも二人の負担を軽減するために荷物を持ち、代わる代わる負んぶして校門前まで送っている。

二人は、特になのはは恥ずかしいからと言って、何時も遠慮するのだが、多少強引にでも負ぶってしまえば流石に失礼と思ってしまうのか、何も言って来なくなるので何時もそうしているのだった。

フェイトの方はと言うと、最初はなのはと同じように恥ずかしいと言って遠慮するのだが、フェイトに催促すると顔を紅く染めながらも嬉しそうにして背中に抱き付いて来る。

そのままフェイトを背負って立ち上がると、何時も決まってありがとうございますと耳元で囁くのだ。

帰りは流石に色々不味いからと言われてしまい、バス停の近くの公園で待っている事に。

…と、オレは弁当が無くて困っているであろう、最愛のお姫様に届けるため、ペースを上げながらそんな事を振り返っていた。






キーンコーンカーンコーン……

「はっはっ…」

(アイーシア、今のチャイムは昼休みの始まりのか?)

≪そのようですね。智哉様、もう少しですので頑張ってください。≫

ペースを上げたお陰か、漸く学校が見えて来た。

しかし、無情にも着く前に鐘の音が鳴り響いたのだった。

最初からこのペースで行けば良かったと少々後悔しながらも、ある事に気付いてデバイスに、アイーシアに思念通話で話し掛ける。

(……それにしてもさ。こんな時に魔力負荷をわざわざ与えてくれなくても良いんじゃないか?)

≪それとこれとは話が別です。智哉様は最近修行に励む事が少なくなっていますからね。こんな時でもないと、走ったりなんか絶対にしないでしょうし。≫

アイーシアはまるで母親が子供に躾をするかのような口調でオレに返す。

久々の魔力負荷に少々応えながら鐘が鳴り響き、少しして到着した。




「…えぇと、フェイトの教室は………っと、あった、ここだな。」

……おいおい、ジロジロ見ないでくれよ、頼むからさ…。(汗)

(…なぁ、アイーシア。)

≪はい?如何なさいましたか、智哉様?≫

(この子らは、オレの一体何が気になるんだろうな?マジ視線が何か嫌なんだけど……。)

格好なのか、オレの背なのか、手に持ってる可愛らしい女の子用のランチマットに包まれた弁当を持ってるからなのか、はたまたどれでも無いのか。

取り敢えず、このジッと見られている状況を如何にかしたかったので、直ぐ傍に居た少年を引き止めて話し掛ける。

「君、ここのクラスだろ?フェイト知ってるかい?」

オレにいきなり話し掛けられた上に、何故このお兄さんだか小父さんだか知らない人がクラスメイトであるフェイトを知っているのか、と言った具合に思いっ切り吃驚しているのだろう、何も返ってこない。

「……小父さん、どうしてフェイトの事知ってるのさ?」

もの凄い怪しいと言いたいのだろう、目を細めてあからさまに口を割る少年。

「……ま、弁当忘れたみたいだったからさ。届けて上げようと思ってね。……で、何処行ったか判りそうかい?」

あくまで弁当を届けに来た事を主張して、信用を買うオレ。

少しの間があった後、漸く渋々と言った表情で指を上に向ける。

「……?上?……あぁ、屋上か。サンキュー、少年!」

廊下は走るな、と教育された筈だがそうも言ってられない。

何せ、最愛のお姫様が弁当を待っているだろうから。

走りながら少年の方にありがとうの意味で片手を顔まで上げて、屋上へ向かう。





ガタン!

屋上のドアが突然思いっ切り開け放たれました。

既に弁当を食べ始めていた生徒達が全員黒いコートを羽織り、サングラスをかけながら、可愛い感じのランチマットでしょうか、に包まれた何かを片手に持っている背の高い人の方を向きました。

勿論私達も例外ではありません。

「え~っと………、お?フェイト、発見!!!」

その人は辺りに居る生徒達をぐるりと見渡した後、何と私の名前を叫びながら近づいて来たんです!

「………ぁ、ぇと……ぁの…」

近くに来るともの凄く恐そうな感じの人で、余りの恐さにはっきりと言葉が出なく、如何しよう、如何しようと思う度に焦りばかりが生じてしまう私。

アリサやすずか、なのはの方へ目だけ動かすと、皆も同じような様子でした。

「はい、弁当だよフェイト。忘れ物をする程今日焦ってた様には見えなかったんだけどな。」

恐い感じの人は親しげに話しながら私の膝の上に弁当を置くと、顎に手を当てて考えに耽ってしまいました。

それにしてもこの声、何処かで絶対に聞いた事がある声でした。

そう、それは何時も私の直ぐ傍にいてくれて、私の心を温かくしてくれる、あの人の、智哉さんの声のように。

そこで私は目を瞑って、ダメで元々なのだから、と目の前の黒いコートを羽織った男の人に向かって思念通話を試してみる事にしたんです。

(………ぁの、……その。……もしかs)

(…ハハ、もしかして気付かなかったのかい、フェイト?…う~ん、それはオレ哀しいかも。)

智哉さんと判ってとても安心した反面、智哉さんにわざわざ忘れてしまった弁当を届けて貰った事に対してもの凄く恥ずかしかった。

「……あの、智哉さん……そのぉ……ありがとうございます。」

私が智哉さんに何気なく感謝の気持ちを述べた時でした。

「えええぇぇぇぇぇええええ!?ととと、智哉さんなんですかぁぁぁああ!?」

そう、私は智哉さんだと判って安心しきってしまっていた為に、傍に居た三人が誰かまだ判らない事に気付いていなかったのが失敗でした。

特になのはが智哉さんだって判ればどういう反応をするか簡単に想像出来た筈なのに。

私がその事に気付いたのはなのはがとんでもない反応を示した後なのでした。

(………あの、フェイト?……皆の、特に傍に居る三人の視線が痛いのだけど、オレは一体どうすれば良いんだい?)

勿論、智哉さんにも突っ込まれます。

智哉さん、ごめんなさい。

私も今は何も考えられません。

智哉さんの顔に苦笑いで返すと、私の考えを受け取ってくれたのでしょう、はぁ~と深い深い溜め息を吐くのでした。

(…なのは、とても素直な反応ありがとう。お陰で横で今にも質問をして来そうな二人は勿論、全員オレの方に目線向けて来てるよ……。……んじゃ、二人とも、オレは帰るから。…ああ、そうそう。フェイト…はまだ携帯持ってないんだっけ?それじゃなのは、授業終わって帰る用意出来たら電話して。迎えに来るからさ。)

私達二人に思念通話で用件を伝え、じゃ、と言う素振りを見せて屋上から出て行く智哉さん。

(…えと、智哉さん?…あの、バスあるので大丈夫ですよ?それに、迎えに来るって何処までですか?何時もの公園で待っていてくれれば良いんですよ?)

私は慌てて智哉さんに思念通話を使って問い掛けますが、

(ハハ、公園で待つのも飽きたからさ、今度からは車で送り迎えしようかと思ってね。それにフェイトに買ってあげなきゃいけない物も出来たし。)

智哉さんはそれだけかい?と言った感じでサラッと私の質問に答え、勉強頑張るんだぞ、と最後に付け加えて思念通話を切ってしまいました。

「………」

私は何を聞いたのでしょう?

正確に言えば、今さっき智哉さんは何と言った、でしょうか?

記憶が正しければ、確か……『車で送り迎えしようかと思ってね。』でs……

「えええええぇぇぇぇぇぇぇええええええ!?」

私はその場で驚きを隠す事が出来なくて、周りを気にする暇なんて勿論無く、絶叫してしまいました。

「……今日いきなり目の前に現れた怪しい人もそうだけどさ。……あなた達も十分変よ、一体どうしたの?」

隣に居たアリサ・バニングスもなのはと私の顔を交互に見ながら呆れ顔で言います。

なのはの隣に座っている月村すずかも不思議な顔をしています。

突然の智哉さんの来訪に、私となのははアリサやすずかを始めとする色んな人から質問攻めにされるのでした。









フェイト達は今学校が終わったようで、なのはから携帯に電話が来た。

電話に出て、今行くからとだけ伝え、携帯を切った後車のエンジンをかける。

「…良し、行くか。」

久々の運転も兼ねてフェイトとなのはを連れてドライブしようと思ったのだった。





校門前は流石に小学校だけあって学校帰りなのだろう、人が沢山だった。

その中に本当に車で来るのだろうか、と凄くソワソワしているフェイトとなのはを発見。

二人の傍まで近寄ったが気付いていない様だったので、プップーとクラクションを鳴らす。

すると吃驚しながらこちらを見て、

「………あの、智哉さん……ですよね?」

間違ってたらどうしよう、というフェイトの表情がハッキリ判ったので、オレはフェイトの顔見て思わず笑ってしまった。

「…あ、笑ったぁ!もう、智哉さん酷いですぅ!」

そう言いながらフェイトは運転席のドアを開けたと思いきや、笑った罰です、とでも言わんばかりに、いきなり飛びついて来た。

そしてそのままフェイトはオレに抱き付いて離れようとしない。

……これじゃ運転出来……無くは無いんだが、もの凄くし辛い事は確かだった。

しかし、正直言って、恋人に抱き付かれるのは恥ずかしいが、それよりも嬉しさの方が格段に上だった。

…上なのだが、車の中とは言え、人が沢山こちらを見ているにも関わらず抱き付くのは流石に、ね。

「……にゃはは。」

なのははオレとフェイトの姿を見つつ、苦笑しながらお邪魔します、と言って車の後部座席に乗った。

フェイトの頭を撫でながら暫くそうして、何とか助席に座らせ車を走らせる。

「…ところで、智哉さん。私に買ってくれる物って何ですか?…まさか私、智哉さんに何かおねだりしました?」

申し訳無さそうに聞いて来たので、そんな事無いよ、と微笑みながらフェイトに返す。

フェイトはオレが何を買うのか頭に色々思い浮かべて聞いて来るが、

「…さあ何でしょう?それはお楽しみって事で。大丈夫。きっと喜んでくれるような物だから。」

と言ってフェイトに期待を持たせつつ運転を続けた。





「……ねぇ、なのは。…いきなりなんだけど、あの人達の事どう思う?」

フェイトは唐突になのはへ話を振る。

「あの人たちって……もしかして、闇の書の?」

「…うん。闇の書の守護騎士達の事なんだけど。」

なのはの問いにフェイトが答える。

「……えと、私は急に襲い掛かられて直ぐ倒されちゃったから、良く分かんなかったんだけど……、フェイトちゃんはあの剣士の人と何か話してたよね?」

なのははあの時の現状を思い出したようではあるが、やられてしまったため、自分で感じた事は余り無かったのか、フェイトにも聞いた。

「…うん。少し不思議な感じだった。…上手く言えないけど、悪意みたいなものを全然あの人からは感じなかったんだ。」

オレは敢えて口を割らず、二人の意見交換を黙って聞く事に集中する。

「…そっか。闇の書の完成を目指している目的とか、教えて貰えたら良いんだけど。……話が出来そうな雰囲気じゃなかったもんね。」

なのはははぁ、と小さな溜め息を吐く。

「…強い意志で自分を固めちゃうと、……周りの言葉って、中々入って来ないから。……私も、そう…だったし…ね。」

「…私は母さんのためだったけど、…傷付けられても、間違ってるかもって思っても、疑っても。……だけど、絶対に間違ってないって信じてた時は、信じようとしてた時は……誰の言葉も入って来なかった。」

ハハ、とフェイトは笑っているが、オレには辛かった、苦しかった思い出を呼び起こした事が原因で暗い表情に変わってしまったのが直ぐに判った。

だから、オレはあくまで黙ってフェイトの頭を撫でて上げた、優しく、只ひたすら優しく。

なのはもフェイトの表情を見ているからだろう、辛そうだった。

そんな中でフェイトはオレの手はそのままになのはを思ってか、

「…でも、言葉を掛けるのは、思いを伝えるのは、絶対無駄じゃないよ。母さんのためだとか、自分のためだとか、あんなに信じようとしてた私も、なのはの言葉で何度も揺れたから。」

そう話す。

フェイトの言葉で、なのはの顔に少しずつ笑顔が戻る。

オレはもう大丈夫だろうと思ってフェイトから手をそっと離すと、フェイトは名残惜しそうにするが、そのまま話を続ける。

「言葉を伝えるのに、戦って勝つことが必要なら、……それなら、迷わず戦える気がするんだ。」

「フェイトちゃん……」

「…なのはが教えてくれたんだよ?そんな強い心を。そして何より、私の全てを受け止めてくれた、私の心の拠り所になってくれた智哉さんが、傍に居てくれたから今の私があるんです。」

なのははそんな事無いと思うけど、と少々照れ、フェイトはそんななのはを見ながら笑っていた。

オレはと言うと、黙ったまま、だがフェイトの言葉を、フェイトの感謝の意を、フェイトの発した一語一句全てを生涯忘れぬように心に刻むのだった。

フェイト、オレは強くなれ、とは言わないよ。

辛くなれば、
泣きたくなれば、

オレを頼って欲しい。

そのために、

今ここに、
君の隣に、
君の傍に、

『オレ』と言う存在があるのだから。






「…さ~ぁ、着いたぞ。」

結構目的地まで遠回りに走っていたためか、流石に疲れたので車を降りた後、大きく伸びをする。

久々の運転だったのもあったのだろう。

だけど、たまにはこういう気分転換の仕方も悪くは無いなと思った。

「…智哉さん、えと……ここは、デパートですよね?」

フェイトがどうしてここなのでしょう、と言った顔で問い掛けて来た。

「…おいおい、フェイト、若年性健忘症は不味いぞ?…まあ、取り敢えずもう一回言うけど。フェイトに買ってあげる物を探しに来たんだ。ま、良いからついておいで?」

フェイトとなのはを連れてデパートの中に入り、オレ達はとあるコーナーに来た。

「……あの、智哉さん、ここは?」

このコーナーは何なのかと言う事をフェイトが言いたい訳では無いのは判っていた。

周りの友達が、特に一番近くに居るなのはが持っているのだ、知らない筈は無い。

それに以前、フェイトはオレの携帯を何度かいじっていた事もある。

そう、この質問を言い直すならば、『ここ』に来てどうするのか、だろう。

「さて、好きな携帯を選ぶと良いよ。買ってあげるから。」

普段と別段変わらない感じで今も?マークを浮かべるフェイトに言ってあげた。

店員もオレ達に、特に今の新しい携帯をマジマジと眺めているオレに気付いたのか、近づいて来た。

「ええええぇぇぇぇえええ!?」

と突然フェイトが大声を上げ出したので、咄嗟にフェイトの口を手で塞ぐ。

もごもごと言う喋られなくなった時の効果音が出る。

フェイトが苦しそうな表情をしたので手を離すと、

「ととと、智哉さん!幾ら私が智哉さんに甘えて良いからってこれは流石に悪いですよ!母さんに何て言われるか…!」

もの凄い勢いで断って来るフェイト。

だが、オレはフェイトの猛抗議を華麗にスルーしつつ、店員に今の最新の携帯の中ではどれがお勧めなのかを聞いていた。

「ほら、フェイト。人任せにしないで自分の携帯なんだから、自分で選ばなきゃ。自分の好きな色とかにしたいだろうし。」

フェイトの両肩を掴んでグイッと沢山の携帯が飾られている前に押し出す。

「妹さんのをお探しでしたか。それでは……」

沢山の携帯の前でオロオロしているフェイト見て、店員が色々勧める。

フェイトは遂に観念したのか、最後の抵抗として、

「……如何しても智哉さんに買って貰わなきゃダメ…ですか?」

涙目になりつつ、上目遣いでオレを見つめて来る。

残念だったな、フェイト。

何時も通りのオレならそれで一発KOだが、今のオレは違うのだよ。

「ダ~メ」

フェイトの頭を撫でながら優しく言ってあげる。

「……ぅぅ、智哉さんのいじわるぅぅ…」

今回ばかりは頭を撫でられて何時も通り心地良く感じてしまう自分に、恥ずかしさと悔しさを滲ませるのだった。

暫くの間、観念したフェイトは色々携帯を見たり開いたり、いじってみたりしたが、表情が険しくなる一方。

フェイトのテンパッていく表情を見兼ねて、どうしたの?と聞いてみると、

「……使い方が全然分かりません…。」

先程とはまた違った意味で涙目になって、終いにはオレに抱き付いて来るフェイト。

困り果てたフェイトの姿を見て苦笑しながら、

「そうだな~」

何か良い案は無いだろうかと思って考える。

う~んと唸っていると、

「……ぁの、智哉さん」

今にも消え入りそうな声で抱き付いたままのフェイトが話し掛けて来た。

「ん?」

「……その……一つだけ、…私でも使えそうなのが……あるんですけど…」

恐る恐ると言った感じで話すフェイト。

「どれだい?」

フェイトをこれ以上困らせないためにも、サラッと返事を返す。

「……ぇと…その……。…笑わないでくださいね?」

抱き付いているため、自然と上目遣いになる。

そんなフェイトがとても愛おしくて、抱き止めていた片手を頬に手をやり、優しく擦って、

「大丈夫、笑わないよ?」

そう答えると、

「……智哉さんのと同じのです。」

オレのと同じ………

ああ、そっか。

なのは達の携帯は使わせて貰ったりしてないけど、オレのは何度かいじった事があるからな。

オレはポケットから自分の携帯を取り出し、店員にこれと同じ種類のは無いか?と聞いてみる。

少々お待ちくださいと言われて、周りを見渡して直ぐ、なのはを一人にしてしまった事に気付き、

「なのは、付き合わせちゃったのに一人にしてゴメンな。こっちおいで?」

「え?……ぁ、あのぉ、……そのぉ…わ、私はd」

目をキョロキョロさせ慌てて断ろうとしているが、ここは強引に手を引いてやろう。

オレはなのはの手を捕まえて引っ張り、正面から抱き付いていたフェイトを右側に、なのはを左側に抱き寄せて離れられないように両腕に力を入れた。

「フェイトの携帯買い終わったら何か奢ってあげるからね。それまでは離さないからな~?」

抱き寄せられた事でなのはは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているが、フェイトはなのはとは逆に、頬を摺り寄せている。

「……お待たせしました、色はこちらで全部になっていますね。」

「フェイト、好きな色を選ぶと良い。」

オレの言葉に頷き、少しの間う~んと唸って考える。

「……じゃあ」

そう言って手に取ったのは外側がオレのと同じ黒を基調にカメラの部分の淵が黄色で、中が白を基調に画面の淵が黄色の携帯。

「それじゃこれを。それと、色々使わせたいのでパケット使い放題、ミニSDもお願いします。」

オレはもう片方のポケットから財布を取り出し、カード一枚を店員に渡して一回でと頼む。

フェイトとなのははオレのやり取りの手際の良さに唖然としていたのだが、それに気付かず

「…ん?二人とも、どうした?ボーっとしてるぞ?ま、オレ的にそれはそれで可愛いから良いんだが。」

と言った刹那、二人揃って顔から湯気が出たかと思う程にボッと紅くなって俯いてしまった。




暫くして、店員が携帯が入っている袋を持って来た。

「……はい、どうぞ。お兄さんからのプレゼントでしょ。大事にしなくちゃね?」

そう言いながら店員はフェイトに渡す。

「良かったね、フェイトちゃん。」

「…うん。ありがとうございます、智哉さん。」

感謝の気持ちと満面の笑みを受け取ったオレは二人を連れてエスカレーターに向かって歩き出すと同時に、

「…あ、そうそう。この子はオレの妹じゃなく恋人です。んでもって、近い将来、嫁にするんで。」

店員に話し掛け、エスカレーターを目指す。

オレの話が聞こえていたであろう二人は、特にフェイトは恥ずかしさで死んでしまうのではないかと思えてしまう程に顔が紅く染まっていた。

店員も何をオレが言ったのかようやっと理解ようで、エスカレーターに乗って直ぐに、絶叫がフロア中に響き渡ったのだった……。











~後書き~

いきなりですが、申し訳ないです。
m(_ _)m

テスト勉強で更新遅れてしまいました。
(>▽<)ゞペチッ
(テストなのに余り、っつーか全然してないのは内緒ww)

10話漸く終わりです~w

来週?今週?までテストあるんで、それまではこんなトロトロなペースかもです…。
サーセン。
m(_ _)m

そして、もう一つサーセンな事が…。orz
夢中で描いている内に話が全く噛み合わなくなっている事に今日朝起きて気付きました…。orz

そういう訳で、こちらは訂正版となってます。
本当にサーセン。
m(_ _)m

<第10話 愛しい君>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』










<第10話 愛しい君>









智哉がフェイトやなのはの護衛任務を引き受けてから数日が過ぎた、ある朝。

時刻は午前6時35分、海鳴市桜台林道にて一人の少女がとある訓練を行っていた。

その訓練とは、魔法の行使。

少女、高町なのはは魔力を奪われてしまい、今は療養と共にリハビリを行っている。

そのリハビリが魔法の行使であった。

なのはは両手をグーにしてみたり、パーにしてみたりしながら、目を瞑って精神を集中させる。

そのあと、胸元に両手を寄せ、魔力の源、リンカーコアを抽出させる。

……が、なのはが抽出したリンカーコアは直ぐに消えてしまった。

しょぼんとするなのは、すぐ傍でその姿をフェレットモードで見ていたユーノもなのはに釣られて溜め息を吐くのだった。







同じ日の午前6時41分、海鳴市市街地のとあるビル屋上にて金髪の少女と、赤い毛並みをした子犬が一匹。

金髪の少女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは自分と同じかそれ以上に長い金属の棒で一生懸命素振りをしていた。

無心で、今は何も考えず、本当にただひたすら強くなりたいと願って。

その姿をすぐ傍で子犬モードのアルフは、ただただジッと飼い主、いや、主を見つめているのだった。

普通の少女には自分と同じ長さの、それも金属の棒はなかなか持てるものじゃない。

ましてや、それを振ることなど到底出来やしないのだが、フェイトはそこらにいるような可愛らしい普通の女の子とは少し違った。

彼女は魔法を使う事が出来る、所謂魔法使い。

普通の女の子とは少し違う特徴を上手く使って、金属の棒の重さを軽減している。

だが、全て魔力で負担してしまっては素振りの意味が無くなってしまい、本末転倒。

一生懸命なフェイトの姿は何て言うか、勇ましいと言う言葉がお似合いだろうか。

しかし勘違いしないで欲しい。

彼女は何処まで行ってもそこらにいる健気で可愛らしい女の子と何も変わらないのだ。

そんな一面も持つ彼女、フェイトを、恋人を、オレはビルの上空から微笑んで見ているのだった。













ここ数日、オレはフェイトとなのはを学校に送った後、大学には行かず、フェイトの家に戻ってリンディさんやクロノ、エイミィと共に闇の書について資料を集め漁っては調べている。

資料はエイミィが主に集めてきたものだ。

その資料を基に、オレ達は互いに今後の方針や対策を練っている。

今はその作業も休憩中。

クロノは通信を使ってレティ提督と会話中。

ガチャ。

「…クロノ、ちょっt…」

『…それから、グレアム提督のところの使い魔さん達が会いたがってたわよ?可愛い弟子に会いたいって。』

「……リーゼ達ですか。……その、適当にあしらっておいて貰えますか?」

苦笑しながらそう伝え、ではと挨拶をしてから通信を切りこちらに気付いた。

「…申し訳ない。……でどうしたんです?」

「……あぁ、先程の話の続きなんだが、進めたいから戻って来て貰おうと思ってね。邪魔のようだったから、終わるまでこうして待ってたって訳さ。」

「そうでしたか、済みません。分かりました、行きましょう。」

クロノは言いながら椅子から立ち上がり、リビングへと戻るので、オレもその後を続いた。

エイミィの姿が見えないと思って色々な方を向いていると、台所の冷蔵庫を漁っていた。

オレ達に気付いたのか、

「おう、クロノ君。そっちはどうだった?」

「武装局員の中隊を借りる事が出来た。捜査を手伝って貰うよ。そっちは?」

「良くないね~。昨夜もまたやられてる。今までより少し遠くの世界で……魔導師が十数人、野生動物が約四体。」

「野生動物?」

エイミィの現在の状況説明の中に野生動物もあったため、クロノは不思議に思ったので、疑問を投げ掛けたのだろう。

「魔力の高い大型の生物だろうな。リンカーコアさえあれば、人間で無くとも別段良いのだろう。」

オレがエイミィの代わりに、クロノに説明した。

「……しっかし、まさか野生動物のリンカーコアまで蒐集対象にするとは。まさに形振り構わないとはこの事だろうな。恐れ入るよ、ヴォルケンリッター。」

そして同時に自分の正直な感想を漏らす。

二人もオレの感想に複雑な表情を浮かべていた。

少しの間の後、エイミィが口を割る。

「闇の書のデータを見たんだけど……何なんだろうね、これ?」

データをホログラムで表示したので、

「魔力蓄積型の…ロストロギアか。魔導師の魔力の源であるリンカーコアを喰らう事によってそのページを埋め、増やしていくようだが。」

簡単にではあるが、オレの今持ち合わせる知識で説明した。

「…全ページである、666ページが埋まると、その今まで溜め込んだ魔力を媒介にして、真の力を発揮する。それこそ、次元干渉レベルの強大な力を。」

「んで、本体が破壊されるか、又は所有者が死んでしまうと、白紙に戻ってまた別の世界で再生する…と。」

「様々な世界を渡り歩いて、自らが生み出した守護者に守られ、魔力を喰らって永遠を生きる。破壊しても何度でも再生しまい、停止させる事の出来ない途轍も無く危険な魔道書。」

クロノとエイミィもオレの説明に付け加えるように話す。

「……それが通称『闇の書』と呼ばれる魔道書か。…今の所の策として、完成前の捕獲だろうな。そのためにはまず、ヴォルケンリッターを捕獲し、そこから主を引きずり出さなければいけない…か。」

「……うん、頑張ろう!」

オレ達は顔を揃えて頷いた。

…ふと、何となく顔を台所に向けると、丁寧にランチマットに包みが一つ置いてあった。

「エイミィ、この弁当らしき包みは?」

「……え?どれです……って、まさかフェイトちゃん?」

「今何時か分かるか、クロノ?」

「……ええと。十二時過ぎたところ、ですね。」

フェイトの弁当箱をヒョイと持ち上げ、

「ならまだ間に合うな。ランニングがてら届けて来るわ。」

そう二人に伝えてオレはフェイトの家を出た。





(…アイーシア、昼の時間まであとどの位だ?)

≪およそではありますが、五分といったところでしょうか。≫

ここら辺はまだ中間、まだ半分程度しか来ていない。

普段、フェイトとなのははバス通学。

オレが護衛をしている今は二人ともオレに合わせて歩いているが、二人の家からだと結構遠い。

そこで、オレが護衛の任に就いてからは、少しでも二人の負担を軽減するために荷物を持ち、代わる代わる負んぶして校門前まで送っている。

二人は、特になのはは恥ずかしいからと言って、何時も遠慮するのだが、多少強引にでも負ぶってしまえば流石に失礼と思ってしまうのか、何も言って来なくなるので何時もそうしているのだった。

フェイトの方はと言うと、最初はなのはと同じように恥ずかしいと言って遠慮するのだが、フェイトに催促すると顔を紅く染めながらも嬉しそうにして背中に抱き付いて来る。

そのままフェイトを背負って立ち上がると、何時も決まってありがとうございますと耳元で囁くのだ。

帰りは流石に色々不味いからと言われてしまい、バス停の近くの公園で待っている事に。

…と、オレは弁当が無くて困っているであろう、最愛のお姫様に届けるため、ペースを上げながらそんな事を振り返っていた。





キーンコーンカーンコーン……

「はっはっ…」

(アイーシア、今のチャイムは昼休みの始まりのか?)

≪そのようですね。智哉様、もう少しですので頑張ってください。≫

ペースを上げたお陰か、漸く学校が見えて来た。

しかし、無情にも着く前に鐘の音が鳴り響いたのだった。

最初からこのペースで行けば良かったと少々後悔しながらも、ある事に気付いてデバイスに、アイーシアに思念通話で話し掛ける。

(……それにしてもさ。こんな時に魔力負荷をわざわざ与えてくれなくても良いんじゃないか?)

≪それとこれとは話が別です。智哉様は最近修行に励む事が少なくなっていますからね。こんな時でもないと、走ったりなんか絶対にしないでしょうし。≫

アイーシアはまるで母親が子供に躾をするかのような口調でオレに返す。

久々の魔力負荷に少々応えながら鐘が鳴り響き、少しして到着した。



「…えぇと、フェイトの教室は………っと、あった、ここだな。」

……おいおい、ジロジロ見ないでくれよ、頼むからさ…。(汗)

(…なぁ、アイーシア。)

≪はい?如何なさいましたか、智哉様?≫

(この子らは、オレの一体何が気になるんだろうな?マジ視線が何か嫌なんだけど……。)

格好なのか、オレの背なのか、手に持ってる可愛らしい女の子用のランチマットに包まれた弁当を持ってるからなのか、はたまたどれでも無いのか。

取り敢えず、このジッと見られている状況を如何にかしたかったので、直ぐ傍に居た少年を引き止めて話し掛ける。

「君、ここのクラスだろ?フェイト知ってるかい?」

オレにいきなり話し掛けられた上に、何故このお兄さんだか小父さんだか知らない人がクラスメイトであるフェイトを知っているのか、と言った具合に思いっ切り吃驚しているのだろう、何も返ってこない。

「……小父さん、どうしてフェイトの事知ってるのさ?」

もの凄い怪しいと言いたいのだろう、目を細めてあからさまに口を割る少年。

「……ま、弁当忘れたみたいだったからさ。届けて上げようと思ってね。……で、何処行ったか判りそうかい?」

あくまで弁当を届けに来た事を主張して、信用を買うオレ。

少しの間があった後、漸く渋々と言った表情で指を上に向ける。

「……?上?……あぁ、屋上か。サンキュー、少年!」

廊下は走るな、と教育された筈だがそうも言ってられない。

何せ、最愛のお姫様が弁当を待っているだろうから。

走りながら少年の方にありがとうの意味で片手を顔まで上げて、屋上へ向かう。






ガタン!

屋上のドアが突然思いっ切り開け放たれました。

既に弁当を食べ始めていた生徒達が全員黒いコートを羽織り、サングラスをかけながら、可愛い感じのランチマットでしょうか、に包まれた何かを片手に持っている背の高い人の方を向きました。

勿論私達も例外ではありません。

「え~っと………、お?フェイト、発見!!!」

その人は辺りに居る生徒達をぐるりと見渡した後、何と私の名前を叫びながら近づいて来たんです!

「………ぁ、ぇと……ぁの…」

近くに来るともの凄く恐そうな感じの人で、余りの恐さにはっきりと言葉が出なく、如何しよう、如何しようと思う度に焦りばかりが生じてしまう私。

アリサやすずか、なのはの方へ目だけ動かすと、皆も同じような様子でした。

「はい、弁当だよフェイト。忘れ物をする程今日焦ってた様には見えなかったんだけどな。」

恐い感じの人は親しげに話しながら私の膝の上に弁当を置くと、顎に手を当てて考えに耽ってしまいました。

それにしてもこの声、何処かで絶対に聞いた事がある声でした。

そう、それは何時も私の直ぐ傍にいてくれて、私の心を温かくしてくれる、あの人の、智哉さんの声のように。

そこで私は目を瞑って、ダメで元々なのだから、と目の前の黒いコートを羽織った男の人に向かって思念通話を試してみる事にしたんです。

(………ぁの、……その。……もしかs)

(…ハハ、もしかして気付かなかったのかい、フェイト?…う~ん、それはオレ哀しいかも。)

智哉さんと判ってとても安心した反面、智哉さんにわざわざ忘れてしまった弁当を届けて貰った事に対してもの凄く恥ずかしかった。

「……あの、智哉さん……そのぉ……ありがとうございます。」

私が智哉さんに何気なく感謝の気持ちを述べた時でした。

「えええぇぇぇぇぇええええ!?ととと、智哉さんなんですかぁぁぁああ!?」

そう、私は智哉さんだと判って安心しきってしまっていた為に、傍に居た三人が誰かまだ判らない事に気付いていなかったのが失敗でした。

特になのはが智哉さんだって判ればどういう反応をするか簡単に想像出来た筈なのに。

私がその事に気付いたのはなのはがとんでもない反応を示した後なのでした。

(………あの、フェイト?……皆の、特に傍に居る三人の視線が痛いのだけど、オレは一体どうすれば良いんだい?)

勿論、智哉さんにも突っ込まれます。

智哉さん、ごめんなさい。

私も今は何も考えられません。

智哉さんの顔に苦笑いで返すと、私の考えを受け取ってくれたのでしょう、はぁ~と深い深い溜め息を吐くのでした。

(…なのは、とても素直な反応ありがとう。お陰で横で今にも質問をして来そうな二人は勿論、全員オレの方に目線向けて来てるよ……。……んじゃ、二人とも、オレは帰るから。…ああ、そうそう。フェイト…はまだ携帯持ってないんだっけ?それじゃなのは、授業終わって帰る用意出来たら電話して。迎えに来るからさ。)

私達二人に思念通話で用件を伝え、じゃ、と言う素振りを見せて屋上から出て行く智哉さん。

(…えと、智哉さん?…あの、バスあるので大丈夫ですよ?それに、迎えに来るって何処までですか?何時もの公園で待っていてくれれば良いんですよ?)

私は慌てて智哉さんに思念通話を使って問い掛けますが、

(ハハ、公園で待つのも飽きたからさ、今度からは車で送り迎えしようかと思ってね。それにフェイトに買ってあげなきゃいけない物も出来たし。)

智哉さんはそれだけかい?と言った感じでサラッと私の質問に答え、勉強頑張るんだぞ、と最後に付け加えて思念通話を切ってしまいました。

「………」

私は何を聞いたのでしょう?

正確に言えば、今さっき智哉さんは何と言った、でしょうか?

記憶が正しければ、確か……『車で送り迎えしようかと思ってね。』でs……

「えええええぇぇぇぇぇぇぇええええええ!?」

私はその場で驚きを隠す事が出来なくて、周りを気にする暇なんて勿論無く、絶叫してしまいました。

「……今日いきなり目の前に現れた怪しい人もそうだけどさ。……あなた達も十分変よ、一体どうしたの?」

隣に居たアリサ・バニングスもなのはと私の顔を交互に見ながら呆れ顔で言います。

なのはの隣に座っている月村すずかも不思議な顔をしています。

突然の智哉さんの来訪に、私となのははアリサやすずかを始めとする色んな人から質問攻めにされるのでした。







フェイト達は今学校が終わったようで、なのはから携帯に電話が来た。

電話に出て、今行くからとだけ伝え、携帯を切った後車のエンジンをかける。

「…良し、行くか。」

久々の運転も兼ねてフェイトとなのはを連れてドライブしようと思ったのだった。




校門前は流石に小学校だけあって学校帰りなのだろう、人が沢山だった。

その中に本当に車で来るのだろうか、と凄くソワソワしているフェイトとなのはを発見。

二人の傍まで近寄ったが気付いていない様だったので、プップーとクラクションを鳴らす。

すると吃驚しながらこちらを見て、

「………あの、智哉さん……ですよね?」

間違ってたらどうしよう、というフェイトの表情がハッキリ判ったので、オレはフェイトの顔見て思わず笑ってしまった。

「…あ、笑ったぁ!もう、智哉さん酷いですぅ!」

そう言いながらフェイトは運転席のドアを開けたと思いきや、笑った罰です、とでも言わんばかりに、いきなり飛びついて来た。

そしてそのままフェイトはオレに抱き付いて離れようとしない。

……これじゃ運転出来……無くは無いんだが、もの凄くし辛い事は確かだった。

しかし、正直言って、恋人に抱き付かれるのは恥ずかしいが、それよりも嬉しさの方が格段に上だった。

…上なのだが、車の中とは言え、人が沢山こちらを見ているにも関わらず抱き付くのは流石に、ね。

「……にゃはは。」

なのははオレとフェイトの姿を見つつ、苦笑しながらお邪魔します、と言って車の後部座席に乗った。

フェイトの頭を撫でながら暫くそうして、何とか助席に座らせ車を走らせる。

「…ところで、智哉さん。私に買ってくれる物って何ですか?…まさか私、智哉さんに何かおねだりしました?」

申し訳無さそうに聞いて来たので、そんな事無いよ、と微笑みながらフェイトに返す。

フェイトはオレが何を買うのか頭に色々思い浮かべて聞いて来るが、

「…さあ何でしょう?それはお楽しみって事で。大丈夫。きっと喜んでくれるような物だから。」

と言ってフェイトに期待を持たせつつ運転を続けた。





「……ねぇ、なのは。…いきなりなんだけど、あの人達の事どう思う?」

フェイトは唐突になのはへ話を振る。

「あの人たちって……もしかして、闇の書の?」

「…うん。闇の書の守護騎士達の事なんだけど。」

なのはの問いにフェイトが答える。

「……えと、私は急に襲い掛かられて直ぐ倒されちゃったから、良く分かんなかったんだけど……、フェイトちゃんはあの剣士の人と何か話してたよね?」

なのははあの時の現状を思い出したようではあるが、やられてしまったため、自分で感じた事は余り無かったのか、フェイトにも聞いた。

「…うん。少し不思議な感じだった。…上手く言えないけど、悪意みたいなものを全然あの人からは感じなかったんだ。」

オレは敢えて口を割らず、二人の意見交換を黙って聞く事に集中する。

「…そっか。闇の書の完成を目指している目的とか、教えて貰えたら良いんだけど。……話が出来そうな雰囲気じゃなかったもんね。」

なのはははぁ、と小さな溜め息を吐く。

「…強い意志で自分を固めちゃうと、……周りの言葉って、中々入って来ないから。……私も、そう…だったし…ね。」

「…私は母さんのためだったけど、…傷付けられても、間違ってるかもって思っても、疑っても。……だけど、絶対に間違ってないって信じてた時は、信じようとしてた時は……誰の言葉も入って来なかった。」

ハハ、とフェイトは笑っているが、オレには辛かった、苦しかった思い出を呼び起こした事が原因で暗い表情に変わってしまったのが直ぐに判った。

だから、オレはあくまで黙ってフェイトの頭を撫でて上げた、優しく、只ひたすら優しく。

なのはもフェイトの表情を見ているからだろう、辛そうだった。

そんな中でフェイトはオレの手はそのままになのはを思ってか、

「…でも、言葉を掛けるのは、思いを伝えるのは、絶対無駄じゃないよ。母さんのためだとか、自分のためだとか、あんなに信じようとしてた私も、なのはの言葉で何度も揺れたから。」

そう話す。

フェイトの言葉で、なのはの顔に少しずつ笑顔が戻る。

オレはもう大丈夫だろうと思ってフェイトから手をそっと離すと、フェイトは名残惜しそうにするが、そのまま話を続ける。

「言葉を伝えるのに、戦って勝つことが必要なら、……それなら、迷わず戦える気がするんだ。」

「フェイトちゃん……」

「…なのはが教えてくれたんだよ?そんな強い心を。そして何より、私の全てを受け止めてくれた、私の心の拠り所になってくれた智哉さんが、傍に居てくれたから今の私があるんです。」

なのははそんな事無いと思うけど、と少々照れ、フェイトはそんななのはを見ながら笑っていた。

オレはと言うと、黙ったまま、だがフェイトの言葉を、フェイトの感謝の意を、フェイトの発した一語一句全てを生涯忘れぬように心に刻むのだった。


フェイト、オレは強くなれ、とは言わないよ。

辛くなれば、
泣きたくなれば、

オレを頼って欲しい。

そのために、

今ここに、
君の隣に、
君の傍に、

『オレ』と言う存在があるのだから。







「…さ~ぁ、着いたぞ。」

結構目的地まで遠回りに走っていたためか、流石に疲れたので車を降りた後、大きく伸びをする。

久々の運転だったのもあったのだろう。

だけど、たまにはこういう気分転換の仕方も悪くは無いなと思った。

「…智哉さん、えと……ここは、デパートですよね?」

フェイトがどうしてここなのでしょう、と言った顔で問い掛けて来た。

「…おいおい、フェイト、若年性健忘症は不味いぞ?…まあ、取り敢えずもう一回言うけど。フェイトに買ってあげる物を探しに来たんだ。ま、良いからついておいで?」

フェイトとなのはを連れてデパートの中に入り、オレ達はとあるコーナーに来た。

「……あの、智哉さん、ここは?」

このコーナーは何なのかと言う事をフェイトが言いたい訳では無いのは判っていた。

周りの友達が、特に一番近くに居るなのはが持っているのだ、知らない筈は無い。

それに以前、フェイトはオレの携帯を何度かいじっていた事もある。

そう、この質問を言い直すならば、『ここ』に来てどうするのか、だろう。

「さて、好きな携帯を選ぶと良いよ。買ってあげるから。」

普段と別段変わらない感じで今も?マークを浮かべるフェイトに言ってあげた。

店員もオレ達に、特に今の新しい携帯をマジマジと眺めているオレに気付いたのか、近づいて来た。

「ええええぇぇぇぇえええ!?」

と突然フェイトが大声を上げ出したので、咄嗟にフェイトの口を手で塞ぐ。

もごもごと言う喋られなくなった時の効果音が出る。

フェイトが苦しそうな表情をしたので手を離すと、

「ととと、智哉さん!幾ら私が智哉さんに甘えて良いからってこれは流石に悪いですよ!母さんに何て言われるか…!」

もの凄い勢いで断って来るフェイト。

だが、オレはフェイトの猛抗議を華麗にスルーしつつ、店員に今の最新の携帯の中ではどれがお勧めなのかを聞いていた。

「ほら、フェイト。人任せにしないで自分の携帯なんだから、自分で選ばなきゃ。自分の好きな色とかにしたいだろうし。」

フェイトの両肩を掴んでグイッと沢山の携帯が飾られている前に押し出す。

「妹さんのをお探しでしたか。それでは……」

沢山の携帯の前でオロオロしているフェイト見て、店員が色々勧める。

フェイトは遂に観念したのか、最後の抵抗として、

「……如何しても智哉さんに買って貰わなきゃダメ…ですか?」

涙目になりつつ、上目遣いでオレを見つめて来る。

残念だったな、フェイト。

何時も通りのオレならそれで一発KOだが、今のオレは違うのだよ。

「ダ~メ」

フェイトの頭を撫でながら優しく言ってあげる。

「……ぅぅ、智哉さんのいじわるぅぅ…」

今回ばかりは頭を撫でられて何時も通り心地良く感じてしまう自分に、恥ずかしさと悔しさを滲ませるのだった。

暫くの間、観念したフェイトは色々携帯を見たり開いたり、いじってみたりしたが、表情が険しくなる一方。

フェイトのテンパッていく表情を見兼ねて、どうしたの?と聞いてみると、

「……使い方が全然分かりません…。」

先程とはまた違った意味で涙目になって、終いにはオレに抱き付いて来るフェイト。

困り果てたフェイトの姿を見て苦笑しながら、

「そうだな~」

何か良い案は無いだろうかと思って考える。

う~んと唸っていると、

「……ぁの、智哉さん」

今にも消え入りそうな声で抱き付いたままのフェイトが話し掛けて来た。

「ん?」

「……その……一つだけ、…私でも使えそうなのが……あるんですけど…」

恐る恐ると言った感じで話すフェイト。

「どれだい?」

フェイトをこれ以上困らせないためにも、サラッと返事を返す。

「……ぇと…その……。…笑わないでくださいね?」

抱き付いているため、自然と上目遣いになる。

そんなフェイトがとても愛おしくて、抱き止めていた片手を頬に手をやり、優しく擦って、

「大丈夫、笑わないよ?」

そう答えると、

「……智哉さんのと同じのです。」

オレのと同じ………

ああ、そっか。

なのは達の携帯は使わせて貰ったりしてないけど、オレのは何度かいじった事があるからな。

オレはポケットから自分の携帯を取り出し、店員にこれと同じ種類のは無いか?と聞いてみる。

少々お待ちくださいと言われて、周りを見渡して直ぐ、なのはを一人にしてしまった事に気付き、

「なのは、付き合わせちゃったのに一人にしてゴメンな。こっちおいで?」

「え?……ぁ、あのぉ、……そのぉ…わ、私はd」

目をキョロキョロさせ慌てて断ろうとしているが、ここは強引に手を引いてやろう。

オレはなのはの手を捕まえて引っ張り、正面から抱き付いていたフェイトを右側に、なのはを左側に抱き寄せて離れられないように両腕に力を入れた。

「フェイトの携帯買い終わったら何か奢ってあげるからね。それまでは離さないからな~?」

抱き寄せられた事でなのはは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているが、フェイトはなのはとは逆に、頬を摺り寄せている。

「……お待たせしました、色はこちらで全部になっていますね。」

「フェイト、好きな色を選ぶと良い。」

オレの言葉に頷き、少しの間う~んと唸って考える。

「……じゃあ」

そう言って手に取ったのは外側がオレのと同じ黒を基調にカメラの部分の淵が黄色で、中が白を基調に画面の淵が黄色の携帯。

「それじゃこれを。それと、色々使わせたいのでパケット使い放題、ミニSDもお願いします。」

オレはもう片方のポケットから財布を取り出し、カード一枚を店員に渡し、一回でと頼む。

フェイトとなのははオレのやり取りの手際の良さに唖然としていたのだが、それに気付かず

「…ん?二人とも、どうした?ボーっとしてるぞ?ま、オレ的にそれはそれで可愛いから良いんだが。」

と言った刹那、二人揃って顔から湯気が出たかと思う程にボッと紅くなって俯いてしまった。

暫くして、店員が携帯が入っている袋を持って来た。

「……はい、どうぞ。お兄さんからのプレゼントでしょ。大事にしなくちゃね?」

そう言いながら店員はフェイトに渡す。

「良かったね、フェイトちゃん。」

「…うん。ありがとうございます、智哉さん。」

感謝の気持ちと満面の笑みを受け取ったオレは二人を連れてエスカレーターに向かって歩き出すと同時に、

「…あ、そうそう。この子はオレの妹じゃなく恋人です。んでもって、近い将来、嫁にするんで。」

店員に話し掛け、エスカレーターを目指す。

オレの話が聞こえていたであろう二人は、特にフェイトは恥ずかしさで死んでしまうのではないかと思えてしまう程に顔が紅く染まっていた。

店員も何をオレが言ったのかようやっと理解ようで、エスカレーターに乗って直ぐに、絶叫がフロア中に響き渡ったのだった……。












~後書き~

いきなりですが、申し訳ないです
m(_ _)m

テスト勉強で更新遅れてしまいました。
(>▽<)ゞペチッ (テストなのに余り、っつーか全然してないのは内緒ww)

10話漸く終わりです~w

来週?今週?までテストあるんで、それまではこんなトロトロなペースかもです…。
サーセン。
m(_ _)m

2008年1月19日土曜日

<第9話 もう一つの戦い>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』












<第9話 もう一つの戦い>








翌日。

智哉さんは友達同士で野球に参加。

現在、グラウンドで準備体操をした後、軽くキャッチボールをしています。

昨日聞いた話だと、智哉さんはピッチャーをやるとの事です。

キャッチボールの相手はキャッチャーさんでしょう。

智哉さんの持っているグローブよりも大きいのをつけている為です。

暫く続いたキャッチボールを終えて、キャッチャーさんに寄って行き、何かを話し合っています。

「母さん、智哉さんは何をしているんですか?」

「あれは多分、サインの交換でしょうね。」

なるほど。

グローブを口元に当てて、周りに聞こえないようにしている様子から見ても、間違いは無さそうでした。

会話を終えた智哉さんは、私の方にわざわざ駆け寄って来てくれて、

「これから試合が始まるから、行って来るね。」

そう言ってくれました。

だから私も、

「はい!智哉さん、頑張ってくださいね!」

たったの二言でしたが、智哉さんにエールを送りました。

「プレイボール!」

審判さんでしょう。

片手を大きく掲げながら大声で試合開始の合図をします。

智哉さんがマウンドに立っている所を見ると、後攻のようです。

左足を軽く後ろへひいた後、両腕を大きく振りかぶって、グローブを頭上へ通過させ、呼吸を整える智哉さん。

全体重を振り上げた左足に乗せて、一気に地面を踏み付けます。

下半身に踏ん張りを利かせた状態を保ち、上半身を添えるかの様な違和感の無い動き。

最後の腕の振りは圧巻でした。

それこそ、ブンッと音が鳴っても不思議では無い程の右腕の撓りとスピードだったのです。

その一連の動きから放たれた白球はキャッチャーさんのミットに寸分の狂いも無く、まるで吸い込まれるように収まりました。

ズドオオオォォォォォオオオン!!!

と言う轟音と共に、グラウンドに居た者全ての声を奪い去るのでした。

「………と……智哉さん……す、凄いです!!」

「……私、知り合いであんな球を投げる人が存在するとは思ってなかった………」

「え……えっと…………智哉さんって………プロ野球選手だったっけ??」

「正直言って、直接人が投げた生の剛速球を見れるなんて思わなかったよ!」

私は勿論、エイミィもなのはもユーノも驚きを隠せません。

「………」

アルフに至っては開いた口が塞がらないみたい。

皆揃って自分達の顔を見合わせていると、遠くから轟音が何回も響き渡り、気が付けば智哉さんはベンチへ下がっていました。

「智哉、絶好調だな!」

「この調子で頼むぜ!」

「神崎、優勝狙って行こうぜ!!」

チームメイト全員が智哉さんを囃し立てています。

でもそこはやっぱり智哉さん。

幾ら囃し立てられても図に乗らず、緊張感のある顔付きを保ったままでした。

智哉さんのチームの攻撃に移りました。

初めのバッターは、慎重に相手のピッチャーさんを見極めつつ、ヒットを放ち、2番バッターさんは堅実なバントを決めて、3番の智哉さんに回します。

「智哉さん、ホームラン打ってくださあぁぁあい!!」

ついつい大きな声で叫んでしまいました。

私の声の大きさに智哉さんはこちらを一瞬向いてくれましたが、苦笑いしていたみたいです。

智哉さんだけでなく、チームメイトの皆さんも私の方に顔を向けてきたのに気付いて、恥ずかしくなり俯いてしまいました。

智哉さんはピッチャーさんの方に向き直り、キリッとした表情に早変わり。

第一投目を見送ってボール、第二投目は振りかけたバットを止めましたがストライクコール、第三投目をまた見送りストライクコール。

相手ピッチャーさんの様子を窺っている智哉さん。

その目は宛ら戦闘中、相手の実力を窺っている時の目でした。

来たる四球目。

智哉さんのバットは迷い等微塵も無くボールに真っ向から衝突したのです。

その見事な振り抜きは、ラグナロクを真横に振り抜く様を見ているかのようでした。

バットに当たったボールは一直線にフェンスを越えたのです。

盛大な歓声と共に、グラウンドのダイヤモンドを駆ける智哉さん。

ホームを踏むと同時に、審判さんの声が高々と響きます。

「ゲームセット!!」

そう、この球技大会のルールは準決勝戦、決勝戦以外は一回からのサヨナラ形式だったんです。

その瞬間、智哉さんのチームは二回戦への進出が決定しました。









その後、智哉さんが所属するチームは、順当に駒を進め、遂に決勝戦。

准決勝戦は四回まで、決勝戦は五回までで、それぞれ延長に入るとサヨナラ方式となっています。

「…今まであっさり勝って来たんだから、今回も余裕なんじゃないのかい?」

アルフはどうでも良さそうに言います。

「アルフ、そんな事言わないの。」

アルフの態度に少し叱責。

私に叱られた当人は、しょぼんとして俯いてしまいますが、仕方ありませんよね。

そうこうしている内に、試合が始まりました。

どうやら先攻は智哉さんのチームみたいです。

先頭バッターさんは相手ピッチャーさんの球に掠るのが精一杯で三振となってしまいました。

次のバッターさんも引っ掛けてしまい内野ゴロに。

智哉さんに打順が回って来ました。

相手ピッチャーさんも決勝に上ってくるだけあってか、智哉さんのチームメイトも攻めあぐねている様子。

智哉さんはこの打席、粘って粘って最後は見逃し三振でした。

けれど、三振と引き換えに相手ピッチャーの何かを少しでも掴んだみたいで、ベンチへ戻ってからチームメイトと会話をしています。

今度は智哉さんがマウンドへ。

相手バッターは智哉さんの球に対して、空を切るだけ。

あっと言う間に攻撃を終わらせてしまいました。

そんな攻防が続き、現在五回表。

両チームヒットは愚か、ランナーも出ておらず、均衡状態でした。

この回、智哉さんのチームは四番から。

一点でも取れれば智哉さんが抑えてくれるでしょう。

チームメイトからの声援や応援席からの声援の甲斐があったのでしょう、ツーベースヒットを放ったのです。

それを切っ掛けに、バント、犠牲フライと続いて待望の一点が入ったのです。

その裏、智哉さんはきっちり打ち取って試合終了。

私はその場を駆け出し、智哉さんの下へ、チームメイトさん達が見ているのにもかかわらず、

「智哉さん!優勝おめでとうございます!!」

そう言いながら思わず胸に飛び付いてしまいました。

「…こ、こらフェイト。…ハハ、ありがとう。」

智哉さんは周りを見渡し、多少困った顔をしながらも普段通りに私の頭を優しく撫でてくれたんです。

「…えへへ。ん~、智哉さんの汗の匂いだぁぁ。」

頭を撫でられる心地良い感覚に浸りながら、胸に顔を押し当てて匂いを嗅ぐ私。

そんな私の行動を見てからかは判りませんが、

「……おい、智哉。誰だよ、この金髪でツインテールの少女は。しかも小学生じゃないのか!?」

「…お前にこんな可愛い妹が居たか?お前の家に何回も行ってるが一度も会った事無いんだがな!?」

「どういう事か説明して貰おうか、『ロリコン』。」

智哉さんが質問攻めに遭っています。

「分かった、分かった。話すからもう少し待てって。これから来る本命との試合が残ってるんだ。変な雑念が入っていたら勝てないだろ。」

周りを制する一言。

あれ?

これからが本命って?

「智哉さん、優勝して終わりじゃないんですか?」

智哉さんからは離れず、くっ付いたまま疑問を投げ掛けると、

「…そう。今から出てくるのがオレ達の戦いたかった相手さ。……ほら、来た。」

遠くを鋭い目で睨み付けながら話してくれました。

その時、ギイィィイイと音を立てて大きな扉が開くと、そこにはユニフォームを着た人達が。

「…あの人達……もしかして、野球部員ですか?」

こくんと頷き、

「彼らと戦うためにここまで来たんだ。夏の大会ではボロボロにされてね。今日再び、リベンジってわけさ。ちなみに、今野球に出場してる者は多分全員元野球部って言っても過言じゃないね。そこから選ばれた連中が今あそこに立ってる訳さ。この大学の野球部は相当強いんだ。入部するのに試験もあるみたいだしね。…まあ、オレは受けなかったんだけど。」

ハハ、と笑いながら語る智哉さん。

「そうだ。フェイト、折角マウンドまで来てくれたんだから、ベンチに居ると良いよ。フェイトが間近で応援してくれたらもの凄く嬉しいんだけどな。」

たった今思いついたといった具合に、智哉さんは突然話をコロリと変えて続けます。

「…ぇと、その、智哉さんが宜しければ。…あ、でも、チームの皆さんの許可も必要なんじゃ……。」

智哉さんの提案に頷くのにはかなりの勇気が必要だったため、頷いた時の私の顔は多分真っ赤に染まっていたと思えるくらい恥ずかしかったんです。

ですが、智哉さんが良くても他の皆さんもベンチに座る訳ですから、そこはキチンと了解を貰っておかないといけません。

「…だとさ、別段構わないだろ?」

ニコニコしながらチームの方々に了解を得ようとする智哉さんでした。

けれど、私にはチームメイトさん達の様子が何か変に感じられたんですが、気のせいでしょうか。

智哉さんからは特に変わったところは感じられず、何時もの様子みたいでしたし…。

そんな事を考えている内に、

「……あ、ああ!わ、分かった、全然俺達は構わないよ!な!?」

チームメイトさんのお一人から皆さんに確認を取ると、その場に居た全員が頷いてくれたので、オーケーを貰う事が出来ました。

でも、何だか同意を求めた方の声が上擦ってたような……。

それに、周りの方々も何か反論や異議を言う事を拒絶するかのようにブンブンと首を縦に何回も振っていたような気がするんです。

(……まぁ、良いかな。兎に角、これでまた智哉さんと一緒に居られるんだ。それに、すぐ傍で応援する事も出来るし。)

こうして、私は球技大会の最後の試合を間近で観戦と、智哉さんへの応援をする事が可能になりました。








「……おやおや、誰かと思えば野球部『だった』洋平君じゃないか。」

反対側のベンチに戻った筈の野球部の一人がオレ達に気付き、こちらに近づきながら話し掛けて来た。

「……てめぇ、一体何しに来やがった?」

そう話した洋平は、怒りを無理矢理押し込めようと堪えている時の低く震えるような声だった。

「何しに来やがったとは物騒な物言いだな。むしろそれは僕の台詞なのだが。何故君が、いや、君達が聖地とも呼ばれるマウンドに足を踏み入れているんだい?…ああ、もしや今季の優勝チームが君達だからだね?」

なるほど、とでも言いたげな表情でオレ達を見下しているかのような目つきだった。

「ああ、そうさ!!オレ達はてめぇら糞野球部を敢えててめぇらの有利な野球で完膚無きまでにブッ潰すため、ここまで来たんだよ!!!」

オレやフェイト、チームメイト達の傍で、今にも殴り掛かってもおかしくない状態の洋平は、思いっ切り叫んだ。

洋平の傍にいたチームメイトは両手で耳を塞ぎ、フェイトに至っては、目の前で繰り広げられている光景を目の当たりにし怯えてしまったようで、オレの後ろに隠れてユニフォームを掴んで離れなかった。

「……もう良い、洋平、落ち着け。……試合中は手加減など必要無い、とだけ忠告させて貰おう。」

それだけ伝えてオレはフェイトの肩を抱き寄せマウンドからベンチに戻ろうとした。

「それよりも何よりも神崎君。先程からずっと君のユニフォームを掴んで離れようとしないそこの可愛らしい少女は誰だい?君の妹か?」

ベンチの方に歩き出したその時、洋平が怒りを露にしていた相手、朝倉悠一がオレに声を掛けて来た。

「………」

だが、オレには何も答える義務は無いのでスルーする。

「…いや、妹にしては似て無さ過ぎるな。…なら、血は繋がってないとか?」

オレがスルーした事で質問の答えはノーと捉えたのか、自ら答えを導き出そうとし始め、また問い掛けて来たのだ。

「……」

「…おいおい、それならもう少し離しておかないと色々と面倒な事になるのだよ?」

その問い掛けにも別段答える必要も無かったために、オレはもう一度スルーすると、それもノーと捉えたのだろう、何を想像しているのかが検討づくような事を話す。

「…」

「………今ふと思ってしまったのだが、まさか君達は恋人関係か?」

オレがずっと黙って様子を窺っていると、オレとフェイトが恋人同士であるという正解に一人で辿り着いてしまった。

「……それがどうした?構わないよ、『ロリコン』と呼んで貰ってもオレは。その『ロリコン』にお前達『現役』野球部は敗北するのだからな。」

だがオレはそんな事は気にせず、勝ち誇ったような笑みで言いながらベンチへと戻る。

それを見たチームメイトも洋平を引っ張って戻って来た。

「………よくも僕を、野球部一年にしてエースであるこの僕を『ロリコン』な屑の分際で侮辱したなぁぁぁあああ!!!」

オレ達のチームがベンチに戻り、一人マウンドで雄叫びを上げているエース。

「……良いだろう。我々が力の差を思い知らせてやろう。後で手加減してくれと泣き喚いても遅いからな…。」

熱が冷めたのかは判らないが(まあ、全く冷めていないだろう)、声の質を下げて威圧してくる。

「……智哉さん」

「ん?どうした、フェイト?」

フェイトをオレの隣に座らせて朝倉の雄叫びを聞いていると、フェイトは暗い顔でオレに離し掛けて来た。

「……その、本当に良かったんですか?私と付き合ったりなんかして。智哉さんが私の所為で悪く言われるのいy…きゃっ!」

フェイトには悪いがその先は未来永劫言わせるつもりは無いので、ヒョイと持ち上げてオレの膝の上に座らせ、背中から両腕を回して思いっ切り抱き締めた。

ついでと言ってはあれだが、昨日のように頭に顔を埋めて匂いを嗅いでやった。

「んん~、フェイトの匂いは何時嗅いでも良い匂いだね~。」

「…んぁあ、と…智哉さ……んぅぅ、ああぁ…。」

ビクビクしてるのが抱き締めてるから丸分かりだった。

「二度と今みたいな事を言っちゃダメだ。オレの気持ちまで否定されてるみたいでそれこそオレは嫌だ。次、いや、今後だな、フェイトがそんな事言うようだったらお仕置きだからな~。」

フェイトの耳元で囁くと、フェイトはオレの腕の中で全身の力が抜け切ったように頭をオレの胸に預け、だらんとなった。

「……ヤツだけは、……朝倉悠一だけは絶対ブッ潰す!!」

少し離れたところで、拳をギリギリと音が鳴りそうな程に強く握り締めながら洋平は呟く。

「試合で完膚無きまでに叩きのめすんだろ?お前は忍耐力ってもんが足りてない、もう少し待て。……あ~、あとな、乱闘やら故意だと判断されるような妨害や行動をした時には、オレが直々に手を下すからな。お前一人でも抜けられると人数が八人になって試合がパーになり兼ねない。その辺を理解した上で殺るなら殺れ。」

怒りをベンチでも溢れさせている洋平をオレは物静かに、だがハッキリ耳に残るような声で忠告した。









「両チーム整列!」

主審の掛け声と共にオレ達は並んだ。

「礼!!」

「「お願いしまああぁぁぁぁああす!!!」」

さすがは野球部と言った所か。

主審の礼と言う合図でもの凄い大声がオレ達の耳に、そしてグラウンド中に響き渡った。

誰一人として手を抜かない所は、やはり強豪校と言った所だろう。

コイントスの結果、先攻は向こう。

オレ達は直ぐに試合開始と言うことなので、そのままグラウンドへ。

軽く投げ終わり、主審の声が掛かる。

「プレイボール!!!」

「…ふん、ピッチャーは神聖なマウンドで幼女とイチャついていた貴様か。」

「……何とでも、言え。」

大きく振りかぶり、全体重を左足に乗せ踏ん張りを利かせた下半身を使って上半身を捻る。

その捻りから生まれた力全てを右腕に溜め、鞭のように撓らせる。

最後に手首を捻り指先に掛かるボールに全身で生み出した力、エネルギーを乗せて放つ。

スウウウゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ………

放たれたボールは弾丸の如き回転をしながらキャッチャーの構えるミットに一直線、そして……

ズドオオオォォォォォオオオン!!!

「………な!?」

「ストラアアァァァァイク!」

轟音がマウンドに鳴り響いた。

今放ったボールは今までとは明らかに何かが違った。

力が篭る。
想いが伝わる。

そして、それら全てがボールに注がれる。

「……く、くっそおおぉぉおお!」

ブン、ブンと空を切る。

次の打者のバットも同じように空を切った。

「……なるほどな。僕達を倒そうなんて馬鹿な事を考えるような理由としては十分か。うちの1,2番が呆気無く三振する所は久し振りに見た気がするしな。」

そうオレに言いながら、朝倉がバッターボックスに入った。

「まあ、気にするな。まだ試合は始まったばかりだ。」

オレは振りかぶり第一投目。

ズドオオオォォォォォオオオン!!!

朝倉は様子見なのか、踏み込む事無く見逃した。

(…ふむ、初球は慎重になるタイプなのか?)

そんな事を考えながら第二投目、少々インコースよりの低めに投げるが、やはり手を出さない。

勿論、主審のコールはストライク。

オレは余り長い間を置くのを好むタイプでは無いため、テンポ良く第三投目を今度はインコース高めに抛る。

最後までこの打席は手を出さなかった。

アウトのコールと共にチェンジのコールが掛かったので、オレ達はベンチへ戻った。

「智哉さん、お疲れ様です。はい、タオルです。」

「…お?準備が良いね、フェイト。ありがとう、使わせて貰うよ。」

フェイトからタオルを受け取って顔を拭く。

「……ところで聖。朝倉だが、お前はどう思う?」

タオルを首に提げて、キャッチャーである二ノ宮聖の考えを尋ねた。

「…今の打席だけではやはり、判断出来ないだろう。だが、少なからず今の調子を保てれば、奴らもバットに当てるだけで二、三打席は必要だろうな。」

オレと聖でマウンドで軽くピッチングをしている朝倉を見ながら意図を模索していると、洋平が朝倉を初回から叩きのめすと叫んで、バッターボックスへ向かって行った。

朝倉の投じた二球を見送り、カウントはワンストライクワンボール。

そこから二球続けてバットに当てただけのファールの後、最後はファールチップで三振となった。

ヘルメットを地面に叩きつけてベンチにドカッと座った洋平に、

「朝倉の球筋はどうだった?」

「あぁ!?……ぁ、あぁ。最初に投げられた球は別段普通のストレートと変化球だった。けど、、バットに当てた時の球は確かにストレートの筈だったんだが、何故か芯から外れてるんだ。それも結構な。」

オレが睨んだからか、態度を一変させて質問に答える洋平。

その洋平の感想に対してオレは一つの答えを導き出す。

「……多分ファストボール系だな。少なくとも朝倉はファストボールをストレートや変化球と混ぜて投げてくるピッチャーだって事は判った。」

「…?智哉さん、どういう事ですか?」

頭に?マークを沢山浮かべているフェイトがオレに質問してくる。

「そうだね、簡単に言おうか。ストレートはどういう球かは分かるよね?」

「…智哉さん、私をb…」

フェイトがムーッと頬を膨らませて猛抗議しようとしたために、オレはゴメンゴメンとフェイトの頭を撫でながら話を続ける。

「洋平が言ってたよね?ストレートを打った筈なのに、打球が強く前に飛ぶどころか後ろに行ってしまったって。朝倉が投げた球はバットに当たる前までは洋平の思った通りのストレートだったんだけど、実は変化球だったんだ。バットに当たる直前で変化したから洋平は前に打てなかったって訳なんだ。」

フェイトはなるほど、と言った顔して納得したみたいだ。

「…でも、それじゃ打つのは難しいんじゃ……?」

フェイトが心配そうに聞いてくるので、オレは別段そこまで気にする必要は無いと言って、安心させた。
バッターボックスに入っていた聖が戻って来た。

「……どうだった?」

「十球程度粘って変化球を色々投げさせたが、まだやはり決め球らしきものは温存している様子だったな。」

「…まあ、まだ一回が終わったばかりだからな、オレも最初の打席は様子見で行く予定だ。それよりもこの回も三人で終わらせる事が重要だ。……よし、フェイト、行って来るね。」

フェイトの頑張ってくださいと言う可愛い声援を背に受けてオレはマウンドへ。

(四番からか。どう出てくる?)

頭で色々考えたが、雑念が入れば投球に影響が出るため、オレは無にして第一投目を投げた。

(……低いな。)

しかし、オレの投じたボールは浮き上がったかのように少し上に構えていたキャッチャーミットに吸い込まれた。

主審のコールはストライク。

(……な!?…チッ、相当伸びてくるな、この球。)

相手打者の顔が引き攣ったのが見えた。

第二投目はアウトコース高めへ。

相手打者はボールの下を思いっ切り空振りした。

(スイングスピードは流石四番と言ったところか。あれに当たったら球が軽いと芯を外してもスタンドじゃないか?)

「……ま、当たらなければ全く問題は無いんだが!!!」

ズドオオオォォォォォオオオン!!!

第三投目はど真ん中に投げ、予想外だったのか相手は手が出なかった。

後ろの五番、六番もスイングは豪快で見ていて気持ち良かったが、まるで当たらず三振に仕留めてベンチへ戻った。

「とりあえず、様子見で行って来る。まあ、もし打てそうだったらヒットじゃなくホームランだな。ヒットで出塁してもまだ朝倉のピッチングを生で見ていない後ろがいきなり打てる保障は無いからな。」

そう言いながらバットをケースから持ち上げ、ヘルメットをかぶる。

オレは打席に立ち、

「…さぁて、いきますか~。」

打つ気は余り無いんで、という意思をやる気が感じられない声で朝倉の方を向いて言った。

オレの言葉に対して、朝倉は無反応で一球目を投げて来た。

(ストレートか?まあ、取り敢えず……)

カンッとバットに擦らせてファール。

手元で変化した今の球はカットボールだろう。

だが、オレは元からヒットを打つ気は全く無いため、気にする必要は無かった。

ただ単にオレ自身、朝倉の持ち球を、球種を確認したいだけのカットだ。

フォーク、スローカーブ、シンカーと二球目、三球目、四球目は続き、オレはカットを続ける。

五球目は外角低めのカットボールで空振りを誘われ、一応バットを出す素振りを見せつつ見送った。

六球目からは左右に曲がる変化球を左右に投げ分けられながらも何とかカットを続けた結果、カウントはツーストライクスリーボールで十二球。

一進一退の攻防が続き、痺れを切らしたのは朝倉だった。

「ピッチャーでありながら四番も打てるヤツと戦うのは久々だ。それに、自分の体力を削ってまでカットを『わざと』続け、僕の持ち球を全て見ようとするその心意気を称えて、見せてやろう。現代の魔球の数々をな!!」

朝倉が振りかぶって放った球は、何故か止まって見えた。

(………おいおい、止まって見える球なんて在り得ないだろ!?)

確かに朝倉の腕は振り抜かれ、ボールが手から離れた。

だが、無情にも今オレが、オレの目が認識しているのは空中を漂っている、いや、本当に宙に浮いて止まっているようにしか見えない球だったのだ。

(……幻術を掛けられた訳でもない。なら、一体どうして!?)

頭が混乱していると、その時は訪れた。

先程まで宙に浮いて止まっていたボールが落下し始めたのだ。

(……何!?くそ、間に合え!)

バットを振るも時既に遅く、振られたバットは空しく空を切るだけだった……。

「……ふぅ、完全にやられたよ。」

ベンチに戻って誰かに向いた訳ではなく、その場に居た全員に話し掛ける。

「どうだった?朝倉は現代の魔球を見せるとか言ってたが。」

代表して聖が聞いて来た。

「……ああ、正直言って見事だったよ。ボールが宙に浮いて、止まっているように見えた。んで、落下し始めた頃にバットを振ったら見事に空振りだった。」

オレの言葉に、その場に居た全員が驚いていた。

無理も無いだろう。

何せ、ボールが止まって見えたと言うのだ。

それも宙に浮いて。

そんな状況を目の当たりにしたらと全員が想像したのだろう。

そんな中、オレの後ろのバッターも当てるので精一杯のようで、最後は三振。

だが、朝倉はオレ以外にはまだ本気は出さない様子だった。

そんな事を考えていても仕方ないのでオレはさっさとマウンドに上がる事にした。

「さあ、三回表だ。しっかり抑えよう!」

オレは全員に喝を入れ、自分も気合を入れ直した。

その後も両チーム全くヒットが出ずに回が進んで行き、七回表ツーアウト。

「……良くやったよ、君は。只一つのストレートで、いや、正確に言えば『ジャイロボール』只一つで僕達をこの回それもツーアウトまでパーフェクトに抑えるなんてね。それにこの僕に本気を出させたんだ。正直言って、君達全員に本気を出す事になるなど思ってもいなかったからね、賞賛に値するよ。誇ってくれて構わない。……だが遊びは、君達の優勝という夢物語はここまでだ。」

朝倉の目が変わったのが判る。

今までの人を見下した目ではなく、オレ達の実力を認めて全力でぶつかって来る事を決意した瞳だった。

「……ようやっと本気か。全く、ここまで粘られるとは思わなかった、さすが現役だ。……んじゃ、こっちも本気で行くからそのつもりで。」

オレも朝倉の決意に恥じぬよう、グラブを胸に当て、マウンドで精神統一。

いくぞ、という瞳を朝倉に向けると、朝倉も同じ瞳で来い、と返して来る。

オレはいつも以上に大きく振りかぶって全身を奮い立たせる。

今日の中で一番気合が、魂が篭った一投が放たれた。

「だから言っただろ!もうジャイロは通用しないと!!終わりだああぁぁぁあああ!!!」

雄叫びを上げながら、オレのボールに向かってバットを振り抜く朝倉。

それはオレの球を計算に入れた上での完璧なスイングだった。

朝倉は思っただろう、狂いは微塵も無いと、バットに当たれば確実にバックスクリーンへと一直線に飛んで行くだろうと。

そう、それが、オレの投じた球が『ただの』ジャイロボールだったならば。

ズドオオオオォォォォォォォォオオオオオン!!!!!

だが結果は無情にも朝倉のバットは空を切った。

「……ば、馬鹿な!?コース、高低さも完璧に読み、君のジャイロの軌道をも寸分の狂い無く合わせた筈なのに…!!」

「…悪いな。オレはジャイロを二種類分けて投げられるんだ。さっきまで投げていたのは、普通のジャイロ、『フォーシームジャイロ』と呼ばれるジャイロボールだ。そして、たった今放った球は『ツーシームジャイロ』と呼ばれるジャイロボールさ。フォーシームの時とはまた違った味が出て良いだろ?」

オレは今最高に気分が乗っている。

ここまで乗った球を抛ったのは何時以来だろうか?

自分の抛った球に、そして何より自分自身に酔いしれるとはこの事なのだろう、そう感じる事が出来る程に今のオレは違った。

「…このテンションが何時まで持つか判らないからな、さっさと行くz……」

「…すまんが、タイム。」

コテッという音が聞こえて来そうなこけ方だった。

「……お前なぁ~。…ってベンチまで戻るのかよ!」

思わず体が突っ込みのポーズを取ってしまった。

オレを無視してベンチに下がった朝倉の方を見ると、何やらバットケースらしき物を弄っていた。

暫くして、朝倉が今まで使っていた金属のバットでは無く、恐らく自分専用のバットなのだろう、木バットを抱えて戻って来た。

そしてバッターボックスに入る前に十回程素振りをし、主審にすみませんでした、と一言言ってから打席に立った。

「……これ以上の本気は無い。待たせて悪かったな。投球練習しても構わないし、何なら一球位くれてやっても構わないぞ?」

挑発している瞳には微塵も思えなかった。

そう、素で言わせているのだろう、実力が伴わなければあり得ない台詞だ。

「…いや、結構だよ。テンションが下がるどころかまだまだ上昇しそうで恐いくらいだ。……さて、無駄話もこれくらいにして、行くぜ!!」

テンションもあってか、先程のスピードよりも更に早く投げられたような気がした。

が………

カアアアァァァァァアアアアン!!!!

木のバットの独特な乾いた音、それは真芯に当てた時にしか鳴らないのだ、がグラウンドに木霊した。
「ファール!!」

レフトスタンド横ポールギリギリを白球は一直線に抜けて行った。

「……たった一球見ただけであそこまで持って行かれるとは思ってもいなかったぜ。流石一年でありながらエースの上にクリーンアップを担っているだけあるな。」

そう言いながら、今度はオレは振りかぶった後、上半身を限界まで後ろに捻った。

「…喰らえ!」

上半身の捻りを戻す力を生かして溜めた力を指先のボールに伝えて投げ放つ。

球の威力、スピード、伸び、全てにおいて今までとは次元が違った。

しかしその球は朝倉の胸元を一直線に目掛けて放たれてしまう。

「…な!?」

オレの限界に近いスピードだったため、咄嗟の動きでギリギリ回避するも、無情にもボールはバットの根元に当たって高くキャッチャーの真上に舞い上がってしまった。

「…良し、これでこの回は終わりd…」

落下点でミットを構え、万全な補給体制で待つ聖に、オレは、

「取るなあああぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

「……?!」

聖はオレのグラウンドに木霊する声に反応して、オレの方を反射的に向いた。

その結果、落下して来た白球はミットに収まる事無く地面に落ちた。

主審から新しいボールを受け取り、オレに寄って来る聖。

「……あれ程までに叫んでおいて決められなかった場合は、それなりの責任を取って貰うからな。」

オレにそれだけ伝え、ボールを渡すと黙って戻って行った。

「…ああ。」

短く、聞こえたかは判らなかったが、聖の想いにオレは感謝した。

「……済まなかったな、今のは久々にトルネードで投げたから感覚が戻りきっていなかった。」

「気にする必要は無い。久々なのなら尚更だ。だが、今のを取らせなかった事を後悔する事になるがな!!」

朝倉に暴投した事を謝るが、本当に気にしていないのがこちらを真っ直ぐ見ている瞳で容易に判る。

朝倉のその言葉に対してオレは、

「………喰らえええぇぇぇぇえええ!!!これがオレの全力全快だあああぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」

全身を、一つ一つの細胞の限界を搾り出すかのように指の先に掛かるボールへと全ての力を注ぎ込んで放った。

ゴオオオォォォォォォォォオオオオオ……………

「ウオオオォォォォオオオ!!!!!!」

朝倉も負けじと声を発しながら踏み込んだ足に力を注ぎ、全身でボールに向かって来た。

フォォォォオオオン!!

カッ!!!

バキィィィィィィイイイイ!!!!

ドゴオオオオォォォォォォォォオオオオオン!!!!!

もの凄い音と共に何かがオレの耳元を抜けて行った。

オレは振り返る。

なんと、飛んで行ったのはバットの上部だったのだ。

センター手前まで、それもノーバウンドでヤツは、朝倉は飛ばしたのだ。

聖は聖でミットから受ける凄まじい反動に耐え切れず、後ろに転んでしまっていたが、流石はキャッチャー、ボールだけは決して離すものかといった具合にしっかりと収まっていた。

「ス、ストライイイィィィイイイク!!バッターアウトオオオォォォォオオオ!!!!」

高々と主審が叫び、七回表が終わった。

それから八回裏。

オレの打席から始まるこの回が勝負。

(……やっとここまで来たんだ、絶対に負けるわけにはいかない!)

もう朝倉には打席は回って来ない。

表のクリーンアップもピシャリと三人で抑えた。

一点、一点だけで良いんだ。

(…チーム全員がオレを四番として選んでくれたんだ。ここで期待に応えなくて何時応える!?……ここで、この回で、オレが決めるしかない!!)

全精神を集中させて打席に入る。

目を瞑ったまま、深呼吸の後ゆっくりと目を開き朝倉を見て、目線で準備は出来たと伝える。

「……ここで打たれるわけにはいかない!現役の意地として!!エースの意地として!!!」

振りかぶって放たれた球はまた宙に浮いたまま止まって見えるあの球だった。

「…………………………ここ!!」

オレはブンと勢い良くバットを振り切った。

が、結果は鈍い金属音と共にゆっくり後ろに転がって行くだけだった。

「……ちぃ、まだタイミングが早いって言うのか?」

(……当てただと!?この球を試合中に当てられたなんて僕の記憶の中にはに無いぞ!?)

バットを構え直し、精神を持続させるために負けられないという気持ちを確かめ、バットを見た。

朝倉も自身の力を信じるためか、ボールを見ていた。

そして、第二投目。

(……今度はストレート系か!?どっちに曲がる!?)

ギイイィィィィイイイン!!

結果は引っ張り過ぎのファール。

「…内角に食い込んで来たか。」

沈んだり、逃げたりとファストボール系の球を駆使しつつ、止まって見える球やナックルで三振を取ろうとしてくるが、ギリギリのところで必死に食らいつく。

(……くそ!本当に現代の魔球ばかりを抛ってきやがる!!)

気が付けば十五球目がファールになっていた。

「「……はぁはぁ」」

互いにもう息も絶え絶えで限界に近かった。

「……はぁはぁ、これで…いい加減…三振に…してやるよ…。」

「……はぁはぁ、さ…三振だけは…どんな事があっても…しねーよ…。」

朝倉が力一杯に第十六球目を放つ。

両足に踏み込む力が無い。

(……くそ、ここで終わりか!?)

その時だった。

「智哉さん!!打ってください!!!!」

オレの中にある何かが覚醒した。

「うおおおぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

カキイイイイィィィィィィイイイイイイン!!!!

……オレは無意識の内にダイヤモンドを回っていた。

捕球音が聞こえなかった。

もしや外野を抜けたのか?

ならば、タッチアウトになったのか?

だがオレの体にタッチされた感覚が無い。

そのままホームベースに倒れ込むと同時に、主審の声が僅かに聞こえた、ホームインと。

それからオレがフェイトに起こされたのは少し後、九回最後のマウンドに上がらなければならない時だった。

だが、この時は実はオレの意思で起きたのでは無いと言う事が後に判った。

「……あれ、試合は?」

意識が戻った事に気付いたオレは率直な疑問を何故か目の前で着替えているチームメイト達に投げ掛けた。

するとどうだろう?

全員声を揃えて、はぁ?大丈夫か、お前?と言って来るのだ。

大丈夫な訳ないだろう、先程漸く意識が回復したのだから。

そんな事を全員に呆れながら言うと、皆が皆顔を合わせだし、もの凄い?マークを浮かべているではないか。

そんな中、聖が代表して、

「……お前、まさか意識が無い状態で九回を投げていたのか!?」

そんな事を聞いて来る。

「お前を少しでも休ませるために、五番、六番が粘りに粘ってたんだ。そして、チェンジのコールが掛かっても一向に目を覚まさないから、フェイトちゃんが必死に叫び続けて漸く起きたんだぞ!?……本当に覚えていないのか?」

「……あぁ、何となくフェイトの声が聞こえていただけでオレは、オレの意識はそのままだった。」

そうか、フェイトには凄く心配をかけてしまった。

後で埋め合わせをしてあげないと、と考える事が出来るまでに意識が回復していた。

学校の昇降口を出ると、校門の前にはフェイトが待っていた。

「……あ、智哉さん。試合、お疲れ様でした。」

そう言いながら駆け寄って来る。

「ただいま、フェイト。試合の応援ありがとう。フェイトが居なかったら多分負けてたよ。」

微笑みながらフェイトの頭を優しく撫でる。

「……智哉さんったら、九回に替わっても全然起きてくれなかったから、凄く心配したんですよ?」

頭を撫でられているフェイトは、普段は笑顔なのだが、今回ばかりは暗いままだった。

少々心配を掛け過ぎてしまったようだ。

「…ハハ、ごめんごめん。今度ちゃんと埋め合わせしてあげるから、許してくれるかい?」

「……もぅ、直ぐそうやってご機嫌取ろうとするんですからぁ。今回だけですからぁ。」

そう言って抱き付いて来るフェイト。

そんな可愛らしいオレの恋人をヒョイと持ち上げ、お姫様抱っこをした。

「ひゃあ!……もう、智哉さんったらぁ。」

夕日を浴びているからか、何時もよりも更に顔を紅く綺麗に染めるフェイトを抱えながら歩き出し帰宅したのだった。














~後書き~

は~い、やっと第9話書き終わりました~w

長かった、いや本当にw

只それに尽きます、はい。

次からは漸く本編に戻れる、かな?w

2008年1月14日月曜日

<第8話 一時の会話>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』










<第8話 一時の会話>










「フェイト、ちょっと良いかい?」

オレは少し痺れて来た足を解す為に、フェイトに少々隣に移って貰おうと声を掛けた。

「………」

が、返事は返って来なかった。

「フェイト、どうし…」

「………すぅ、すぅ………」

顔を覗き込んでみると、フェイトはスヤスヤと眠っていた。

(…何時の間に寝ていたんだろう?……まあ、フェイトの可愛い寝顔を見ていられるから良しとしようか。)

≪ふふ。ラッキーですね、智哉様。≫

思念通話、念話で離し掛けて来るアイーシア。

(そうだね。これはラッキーだ。少々足がキテるけど。)

≪女の子の寝顔を見ることが出来ると言うのは、やはり恋人同士の特権でしょうね。≫

フェイトの寝顔を拝見出来るのは嬉しかった。

けれど、足の痺れは段々大きくなる一方。

折角気持ち良さそうに寝ているフェイトを起こさないように細心の注意を払いながら、自分の足をマッサージする。

しかし、フェイトを抱えた状態でのマッサージは中々辛いものがあった。

そんな時、ガチャッと言う音とただいま~、と言う声が玄関の方から聞こえて来た。

リビングのドアを開けて入って来たのは、リンディ、クロノ、エイミィの三人だった。

「ただいm……」

再度言いかけたところを、オレはシーッと人差し口に当てながら指を立てて、リンディの言葉を制した。

クロノは不思議な顔を、エイミィはオレの方を見てきてニヤッとしたが、二人はそのまま台所に手を洗いに行った。

「…あらあら、お邪魔だったかしら?」

オレの近くに来て、そう小声でからかって来た。

「いえいえ、お構い無く。」

オレもリンディさんのからかいにノッて答えてみた。

「そうそう、今さっきフェイトさんのバルディッシュとなのはさんのレイジングハートを修理に出して来たの。模擬戦終わった後に、点検も兼ねて。だから、今また彼らが襲撃して来ると二人に対処する力が無いのよ。」

オレのノリを無視したのかは判らないが、リンディさんは話を切り替えた。

「はい、それで?」

オレもリンディさんの話す内容に耳を傾ける。

「そこで、智哉さんが宜しければなんですけど、フェイトさんとなのはさんのデバイスが戻って来るまで二人の護衛をして貰いたいんです。この前のように、リンカーコアを狙っていきなり襲われないためにも。お願い出来ますか?」

オレより少しばかり背が低い事を利用して、瞳をうるうるさせながらの上目遣いで、両手を重ねて猛烈にアタックしてくる。

「それは一向に構わないんですが、一応僕も18歳の大学生な訳で、普段は学校に通わないと不味いんですよ。行きは送って行く事は全然可能なんですが、問題は帰りの方で。小学校と大学では終わる時間が全く違うた…」

リンディさんの必死なお願いに対して、サラッと返すが少々の問題を語ろうとしていたところを表情を一変させて、満面の笑みを浮かべたリンディさんが遮る。

「それなら問題無いわ!私から直接学校に事情を話しておきます。」

「……いや、その程度で学校側が納得する筈は……」

「兎に角!智哉さんはフェイトさんとなのはさんの護衛を引き受けて下さるんですよね!?」

顔をズイッとオレに近づけて、反論は許しませんよ、と言った風な口調で話す。

「…それは僕にとっても光栄な事ですし、何よりフェイトと一緒に居られますしね。…本当にそんな事が可能だったらの話ですが。」

「ふふ。では、智哉さん、明日からお願いしますね。大学の件は心配は要りませんので。」

どうやって話を通すのかは判らないが、例え学長に話をする機会を設けても、たった一人の生徒だけを優遇する訳にいかない事等明らかだろうと思ったオレ。

だが、リンディさんは任せておきなさい、とでも言いたげな表情でオレに了解の確認を取る。

「はい、分かりm………」

そこまで言われたオレは、承認しようとした所で携帯が鳴り響いた。

その音で今の今までスヤスヤと寝ていたフェイトが目を覚ます。

ちなみに、今までの会話はフェイトを起こさない程度の音量で話していたから起きなかったのだ。

「……んんぅぅううん、…智哉…さん…?」

オレの腕の中で伸びをするフェイト。

「ゴメンね、フェイト。ちょっと電話に出て来るから、隣に座って待ってて。」

そう言って、フェイトを隣の椅子に下ろし、オレは廊下に出た。

「…はい、なんだ、洋平か。どうした。……ん?何、明日から球技大会?…ああ、そう言われればそうだったな。分かってるって、心配すんな、しっかり出るさ。んじゃ……」

洋平こと、古河洋平が携帯に電話を掛けてきた。

用件は明日についてで、今日オレは学校に居なかった為、連絡を伝えるためだった。

オレの通う大学では、大学内だけで使われる連絡用のメールアドレスから転送設定を使ってその場に居なくても携帯等、別のメールアドレスがあればそちらに自動的に転送させる事が出来るシステムがある。

そのシステムを使えば、一々連絡を貰わなくとも済む話なのだ。

しかし、オレはとある理由で転送設定をしていない。

その理由とは、自分にとって全く関係の無い連絡事項や注意事項、更には授業で教師に送った課題等までもが転送されて来る事だ。

授業で提出した課題等はとんでもない量が同時に転送されて来るのだが、そこはまだ自分に必要な連絡を受け取れるのだから仕方無い事だと、目を瞑れる。

しかし、その転送が夜中の1時過ぎ、しかも自分が寝ている時に来たらどうだろうか。

ハッキリ言って、安眠妨害もいい所ではないだろうか?

最初は勿論そのような目に遭うとは思ってもいないだろうし、便利な設定だと寧ろ嬉しくもなる。
だが使ってみてこの様だ。

もう二度と利用するもんか、とその被害に遭ってから誓ったのだ。

「智哉さん、……あの、電話中の所なんですけど、ちょっと良いですか?」

そこへフェイトが申し訳無さそうに訊ねて来る。

『おい、智哉!今の可愛い声誰だよ!?まさかお前、彼女か!?そうなのか!?』

洋平にフェイトの声が聞こえたのか、電話越しに誰だと叫んでいる。

「煩い、お前は黙ってろ。……ん?フェイト、どうしたの?」

オレは電話を離しても聞こえて来る大声を発している洋平を一喝し、フェイトに向く。

「…あの、母さんから話は簡単に聞きました。母さんはああ言ってますが、……智哉さんだって学校あるのに、迷惑じゃないですか?」

オレが心から愛する少女は見ただけで判る、すごく心配なんです、という表情をしつつ両手をモジモジさせている。

「ハハ、心配性だな、フェイトは。大丈夫だから引き受けたんじゃないか。」

そう言って、暗い表情をしているフェイトを安心させるため、何時も通り優しく頭を撫でてあげた。

「そうだ。明日から球技大会なんだけど、フェイト、良かったら見に来るかい?………あ、でも普通通り授業があるから無理……か。」

良い案を思いついたので言ってみるが、顎に右手を当てて良く考えたら普通通り学校がある事を思い出し、後半の部分は独り言のようになってしまった。

「え?良いんですか?…その、智哉さんが迷惑じゃないんでしたら、是非行きたいです!」

オレの後半の話は聞こえてなかったのだろう、フェイトは先程までの表情を一変させ、満面の笑みを浮かべて言った。

「オレは問題無いんだけどね、フェイトは学校があるんじゃないのかい?」

「…あ……そうでした……。」

もの凄い落ち込み様のフェイトを目の前にしたオレは、どうしたものかと悩む。

「二人とも、何時までもそんな場所でイチャついていたら風邪引きますよ?」

そこへ何時までも廊下から戻って来ないオレ達を心配したのか、ドアを開けたリンディさんが声を掛けて来た。

「あの、実は……」

リンディさんに今までの経緯を説明するオレ。

「なるほど~。それじゃ、明日は皆で応援に行きましょうか!ね、フェイトさん?」

……えーと、皆でとは一体?

「フェイトさんもなのはさんを誘ってみたらどうかしら?ああ、学校には私から連絡しておくから心配はしなくても大丈夫よ。」

その言葉を聞いて、本当ですか!?と、フェイトの顔は満面の笑みへと早変わり。

(……ま、フェイトが喜んでるならそれで良いか。)

そんなこんなで、明日の球技大会にフェイトが観戦に来る事が決まったのだった。

















~後書き~

第8話終わりでしw

実を言うと、まだまだ長かったんです。

が、書いている内に

『これでは1週間経ってしまうではないか!?』

と思ったので、区切りの良いところでひと段落ww

残りは第9話か……w

長く………なりそうだなw

2008年1月12日土曜日

色々とw

昨日(正確には一昨日放送)のロザリオとバンパイアはやってくれましたな~w

ドラゴノーツがおぱーいアニメ、ロザリオとバンパイアがパンチラアニメと言われてますがね。

正直、ドラゴノーツの株を奪う勢いですよ!?ww

あのサキュバスは中々の強敵でしょうなw(誰に対してだww)

ま、オレは正直言って、水樹奈々がいればおk!(>▽<)b

水樹奈々最高ですよ!w

あの声はもうね、オレの心を安らかに、清らかにしてくれますよw

そして何よりOPとED!

格好良過ぎ!!

特にED!

最後の最後まで高いテンションを保たせてくれますよ!w

もう言う事無しッス!







そして、昨日は遂にテイルズオブイノセンス購入w

購入後直ぐに、早速プレイ中w(日記書いてる今もww)

FFTAのような要素も含んであって、尚且つTOAのグルグル回れるシステムのリニアモーションバトルシステムだっけな?と、PS2版TODの空中コンボシステムの統合のお陰で、オレ的にはもう大満足ですよww

そして進める事現在7時間。

今恐らく定期イベントでしょう、とあるキャラに出くわした訳ですよ。








ちょwwww

若○じゃないですかwwww

何故、バルバ○スがここに!?ww

皆さん、これは買いでしょうww

心配御無用!!

どっかのDSソフトのテン何とかを買って損した~!

みたいな事は起こりませんw

・・・・・・まあ保証はしませんがねw

2008年1月9日水曜日

<第7話 束の間の一時>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』












<第7話 束の間の一時>










模擬戦が終わって、私はアースラ経由で家に帰って来ました。

母さんやクロノ、エイミィはまだ残っている仕事があるから、私に先に帰っているようにと言ったので、お言葉に甘えてしまいました。

その際に智哉さんが、

「折角だし、送って行くよ、フェイト。女の子一人で帰宅させるのは今の時代危ないし、何より可愛い彼女を送らないのは男としてどうかと思うしね。」

そう言ってくれたんです。

母さんも智哉さんの発言に賛同してくれたお陰で、私は恥ずかしいながらも凄く嬉しかった。

智哉さんには、送って貰ったお礼に少し家に上がって貰いました。

そして今に至ります。

(ど、どうしよう…。頭の中が真っ白で、何を話せば良いのか思いつかないよ。)

そうなんです。

智哉さんに家に上がって貰ったまでは良いんです。

けれど、今、テーブルにて目の前に智哉さんが座っているのですが全くと言っても良い程に会話がありません。

智哉さんは微笑みながらさっきからずっと私の顔を見ています。

(うぅ、ジッと見られてると恥ずかしいよ。)

「……と、とりあえず、お茶淹れますね。それまでテレビでも見ていてください。」

本当にとりあえずのその場凌ぎ。

テーブルについていて貰っておきながら、お茶の一つも出していない事に今更気付いたのもありました。

「あぁ、分かったよ。」

軽く返事を返してくれた智哉さん。

私はお茶を淹れに台所へ。

ポチッとテレビの電源が入る音が聞こえました。

智哉さんがテレビを見ている事で少し冷静さを取り戻す事が出来ました。

でも、智哉さんはテレビを本当に点けただけで、台所に居る私をずっと微笑みながら見つめているのに気付くのは、その後少しした時なのでした。











その頃、アースラの管制室には、和麻、煉、刹那、クロノ、エイミィ、そしてリンディの姿があった。

全員、エイミィの出す映像を黙って真剣な眼差しで見ていた。

その沈黙を破ったのは煉だった。

「ここ。このデバイス、ラグナロクだったかな、に埋め込まれている無色透明な宝玉。僕達のデバイスの中心に埋め込まれている宝玉と恐らく同じだ。」

煉はエイミィに映像を停止するよう言って、宝玉らしき物を指して見解を述べる。

「……だろうな。模擬戦の時、魔方陣はミッド式だったとは言え、あの詠唱は間違い無く俺達が使うのと同じ、グランスペルだったからな。」

煉に続いて刹那が口を割る。

「あの~、グランスペルって一体……?」

エイミィがミッド式にそのような詠唱方法がある事は知らないようで、刹那に質問した。

「グランスペルと言うのは、『GRAND SPELL』と無限書庫にある書物に表されている。『GRAND』は『Great of Remote Age Natural Develop』の頭文字を取った物だ。簡単に訳すと『生まれながらに発達し得た古代の偉大なる魔法』。俺達が持つデバイスも実を言うと、管理局が作った訳では無いのだ。このデバイスを俺も煉も握らされてな。管理局では、俺達が今持つデバイスの主を捜し求めていたらしい。それが偶々俺達にデバイス達が反応したから今ここに存在する。」

自分達の過去も少し明かしながら説明する刹那。

「和麻のデバイスにも僕達のと同じ宝玉が付いてるから、恐らくそれも古代に生み出されたデバイスだろうね。古代で、このデバイスを扱っていた者達を『ハイメルリッター』と呼ばれていたんだ。直訳すると、『天空騎士団』って意味になるんだよ。」

煉の話に、ふん、と軽く返事を返しながらも真剣に聞いている和麻。

そして、その場に居合わせているクロノ達も同じように聞いていた。

「兎に角、彼の戦闘データは勿論、このデバイスについても調べる必要がありますね。万が一、管理局から持ち出された物ならば、犯罪行為になりますから。入手経路も後に聞かなければ。」

クロノは冷静に今後の智哉について話をまとめて、解散となった。

「僕はもう少し智哉の家族に関して深く調べてみる事にするよ。」

煉はクロノやエイミィ、リンディと別れた後、刹那と和麻にそう言った。

「……俺も手伝おう。我ら、『ハイメルリッター』が集いしその日を待ち望みながらな。そして、あいつの様な暗い過去を背負った者が二度と現れないようにする、と誓いを立てて。」

刹那は煉の話を聞いた後、目を瞑って神に誓いを立てるように、自らに言い聞かせるように話す。

「……ふん、好きにしろ。前線に出る機会が圧倒的に多い上に、指揮もしなければならない俺は忙しい身だからな、そんな悠長な事をしている暇は無い。この事件を解決させる事の方を優先させて貰う。」

そう和麻は言い放ち、二人を残して先に何処かへ行ってしまったのだった。

「……全く、和麻はどうしてこうも智哉を嫌うのかな~。」

ふぅ、と大きな溜め息を吐きながら話す煉。

「……同感だ。昔から犬猿の仲だったが、今もまるで変わっていないとは。正直言って驚きだ。…まあ、和麻が毎回智哉に突っ掛かって行っているだけで、一番悪いのは和麻なのは明白だ。智哉から突っ掛かったのはまだ一度も無いからな。…だが、智哉も和麻に突っ掛かられたら突っ掛かられたで、悪乗りして挑発するから毎回喧嘩になるんだが。」

こちらも話しながら、はぁ、と煉に負けない程の大きな溜め息を吐く刹那。

しかし互いが互いの顔を見合うと、表情は呆れ顔から苦笑した顔に。





暫くして、

「……また昔のように四人で頑張れると良いね、刹那。」

「…ああ。ま、次に俺達が集った時は、悪戯では無く仕事を行う事になるだろうがな。」

そうだね、と苦笑しながら笑顔で答える煉。

ゆっくりながらも大きく確実に頷く刹那。

二人はまた歩き出す。

簡単に言ってしまえば、今は準備期間なのだ。

その準備に取り掛かろうと意気込む二人。

来たるべき未来、四人がまた一堂に会す日、に希望を抱きながら。











台所に居る私を智哉さんはずっと見ている事に気付いた私。

その目線に私が気付いてゆっくり振り向くと、智哉さんは微笑みながらも目線を逸らそうとはしません。

ジッと見つめ交わされ合う視線。

暫くその状態が続きましたが、お湯が沸いた時に鳴るあの音にビックリして、慌てて火を止めました。

急須に茶葉を入れ、お湯を注ぎ、数回緩やかに円を描くように急須を揺らしてから湯のみに注ぎます。

こうする事で、茶葉からより多く色や香りを抽出出来るとか出来ないとか。

注がれた湯のみをお盆に二つ載せて、智哉さんの待つテーブルへ。

「はい、智哉さん。少しお出しするのが遅くなってしまいました、ごめんなさい。」

湯のみを智哉さんの前に出しながらも、少し俯いてしまう。

「ハハ、そんな事ないよ、フェイト。一生懸命だったじゃないか。嬉しいよ、ありがとう。」

そんな私に対して、智哉さんは微笑んだ顔はそのままにお礼の言葉と共に湯のみを快く受け取ってくれました。

私はそんな智哉さんの何気ない優しさにとても嬉しく思いました。

そして、突然智哉さんからとんでもない一言が。

「フェイト、おいで?」

いきなり言われたために、どう反応したら良いか判らず、困ってしまいました。

「……ぇ、えぇと……智哉さん。隣に、ですか?」

少しの間が開いた後、私はそんな事を聞きました。

多分、その時私の顔は赤く染まっていたに違いないでしょう。

ですが、智哉さんはもっと凄い事を涼しい顔をしながら答えるんです。

「あれ、オレが指した指見えなかったかな?膝の上を指したつもりだったんだけど。」

その言葉を聞いた瞬間、私の顔からボッと音が鳴ったかもしれません。

「ええぇぇええ!!あああ、あの、えぇと、その……」

赤かった顔が更に紅くなり、私は上手く言葉を話す事が出来ずにいました。

とても動揺している私に対して智哉さんは、

「おいで、フェイト?」

と、私の戸惑う気持ちを和らげてしまう、いえ、静めてしまう程の優しくて安らかな笑みと声で言います。

「…………ぇと…………じゃぁ……………お言葉に…………甘えちゃい………ます。」

消え入りそうな声で言いながら、私は智哉さんの膝の上にちょこんと座り、背中を智哉さんの胸に預けてしまいました。

智哉さんは多分私の声をしっかり聞いていたでしょう。

だって、私が膝の上に座らせてもらった時、クスクスと苦笑していたんですから。

うぅ~、智哉さんの意地悪。

もう知りませんから。

座って背中を預けながらもプイッとソッポを向いて抵抗してみました。

少しでも抵抗しておかないと、智哉さんは悪ノリして、もっと意地悪な事をしてくるからなんです。

ソッポを向くと、智哉さんは両腕を私に絡めて優しいながらもそれでいてしっかりと抱き締めてくれました。

(……どうしてこんなに落ち着くんだろう。…そっか。簡単な事なんだ。智哉さんがこんなにも近くに居てくれるからなんだ。……これからもこうやってずっと一緒に居たいな。智哉さんは居てくれるかな。)

「…智哉さん」

「ん?どうした?」

私が呼び掛けると、軽く返事を返してくれました。

私が続きを話すまで待ってくれています。

「ぇと……これからも、……こうしてずっと一緒に………居てくれますか?」

「ハハ、当たり前だろ?オレはフェイトの恋人、フェイトの彼氏、なんだよ?」

そう言って、いきなり私の頭に顔を埋めてスーッと匂いを嗅いで来ました。

「…ぁあ……んぁあ……と……智哉さぁああん……んん…」

何だろう、この感覚は。

凄くゾクゾクした。

今まで感じた事の無い、とても不思議な感覚でした。

智哉さんが顔を離してくれて、

「フェイトの頭、とても良い匂いがしたよ。」

私の耳元でそう感想を漏らしたのです。

「…………」

私は未だに残るあの不思議な感覚に包まれてボーっとしていたために、智哉さんに何も答える事が出来ずにいたのです。

「フェイトには、まだ少しその感覚を味わうのは早かったかな?」

智哉さんは私の頭を何時ものように優しく撫でながらそう呟くのでした。













~後書き~

漸く7話終わりましたな~w

今回はかなり文章考えるの大変でした。

8話、9話辺りは少々の日常パートかな?

そして、最後らへんで危うくとんでもない脱線をするところにwwww

そういう方向に走る時は注意書きを加えておくんで悪しからずww

2008年1月4日金曜日

<第6話 戦場の中で>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』








<第6話 戦場の中で>









私は今、成り行きで模擬戦に参加しています。

それにしても、この模擬戦のレベルの高さは凄い。

皆さんの実力を肌で直に感じる事が出来てしまうんです。

クロノや和麻さんの実力は私も模擬戦を二人と行った事があるので知っているのですが、模擬戦に参戦したお二人も和麻さんと同等の実力の持ち主なんでしょう。

何せ、智哉さんが360度全方向から休む暇無く攻撃を受け続けて、回避行動を強いられているんですから。

「……ちぃ!」

智哉さんの反射神経の良さであってもギリギリの回避。

(私も智哉さんの足を引っ張らないようにしないと!)

その時でした。

智哉さんは背後から迫る魔法弾に気付いていなかったのです。

それもその筈。

智哉さんは刹那さんが放った太陽の如き光と熱を放出している和麻さんの招雷弾と同等かそれ以上の一撃を防いでいる最中だから。

(……ここは私が行くしか!)

スピードには自身がある。

今からでも十分智哉さんの背後を守ってあげる事は可能だ。

何時も守って貰って、甘えてばかりの私。

でも、そんな私でも智哉さんを守ってあげられるんだ。

私は智哉さんの下へ高速で移動した。

あの程度の魔法弾なら、多少数があっても平気。

見た感じ、私のフォトンランサーより威力が高いだけで、なのはのディバインシューターに比べても誘導性は全然無さそうだ。

(これなら打ち落とせる!)

私は確信して、複数の魔法弾の先頭を叩き切る。

けれど、その時分かりました。

これは罠だと。

この魔法弾は破壊されることによって起爆スイッチが作動するタイプの攻撃誘導型だと。

目の前で真っ二つに切られた魔法弾の破片が光輝き、私を中心に包み込む。

(しまっ……!)

目を瞑りました。

バルディッシュを前に咄嗟に構えるも、バリアを張る程余裕は無かったのです。

しかし、何時まで経っても体にダメージを受ける感じがありません。

その感じと引き換えに、私には温かい何かに包まれる感覚がありました。

(………これは?)

目を恐る恐る開く。

………と、そこには先程まで攻撃を耐えていた筈の智哉さんの姿があったのです。

多数あった筈の魔法弾も全て無くなっていました。

目を開けた私に気付いたのか、智哉さんはボロボロになりながらも笑顔を作って、

「………フェ…イト、……大丈夫かい?」

そう言うのです。

無理して作った笑顔は恐らく残り全ての魔法弾の爆発によって受けた痛みを必死で耐えているからでしょう、引き攣っています。

「……は、はい。」

私は驚きを隠せずいたことで返事が遅れてしまったために、慌てて返します。

「………そ……そう……か。……それは………良かっ………」

良かったと言いかけてよろめき、力無く私の方に倒れ込んで来たので慌てて支えました。

「智哉さん!!」

私は大声で叫びます。

耳元でしたが気にしている余裕がありませんでした。

「………ハハ、ゴメン…よ。……フェイト……に余計……な心配……かけ…ちゃったな。」

決して笑顔を崩すまいとしている智哉さんは、私に寄り掛かりながらも優しい声で言いながら頭を撫でてくれた。

そして直ぐに智哉さんは私の傍から離れました。

「智哉さん!……あの!」

私は心配で智哉さんに話し掛けます。

すると智哉さんは凛とした表情を取り戻したみたいです。

(フェイト。オレも正直言ってそろそろ限界だ。……だから、ここからは本気で行くよ!準備は良いかい?)

私に向かってそう思念通話を交わしてくれた姿は、まるでオレについて来いって言ってるみたい。

(……智哉さん)

そんな姿に見惚れてしまっている私。

何て言ったら良いのだろう?

今の私には言葉で上手く表す事が出来ない。

私の返事が無い事に気付いた智哉さんは、

「……フェイト?」

どうしたの?と言った顔で問い掛けて来ました。

「え!?ななな、何でもないです!!」

返事に戸惑う私に対して、頭に?マークを浮かべている様子。

そんな智哉さんを見て、私はついクスクスと笑ってしまいました。

「……ま、何にせ…」

言い終わる前に智哉さんの背後から刹那さんが槍型のデバイスで突きを繰り出しました。

ガキイイイィィィィィィィイイイン!!

「……おいおい、人の愛の語らいを邪魔をするなよ。」

「それは済まない事をした。だが、模擬戦とは言え今は戦闘中。この状況下では些か場違いではないか?」

智哉さんと刹那さんはギリギリと力を拮抗させながら会話をしています。

二人の顔は凄く楽しそうだった。

智哉さんは刹那さんを振り切り、

「さあ!全力で行こう!!アイーシア!!!」

≪了解しました。バスタードモード承認。イグニッション!!≫

「刹那!煉!これが今オレの持つ本気だ!!」

瞬間、智哉さんの体からこの訓練場全体を包む光が放たれました。

光は私にも回復の効果を与えてくれたのです。

光が消えると、智哉さんは私が以前見た、灰色の騎士甲冑を纏っています。

その姿を見た刹那さんと煉さんは、

「それがお前の本気か。お前と模擬戦を行った甲斐があって良かった。」

「凄いね、智哉!魔力が漏れ出してるじゃない!」

とても嬉しそうに話します。

「天上にて見守る神々よ。汝らの嘆きは嵐となり、裁きは稲妻となり、怒りは劫火と化す。我この地に刻み、今解き放つ!」

智哉さんはこの訓練場の広さと同等の巨大な魔方陣展開し、詠唱を始めました。

展開された魔方陣から三種の光の球体が現れました。

それらは智哉さんの周りをグルグル回り出し、次第にそれぞれの色の球体が混じり合って、一つの真っ白な光の輪となりました。

「まずいよ!刹那!!あの詠唱は!!!」

「ああ、間違いない!あれはグランスペル!!」

「グランスペルだと!?馬鹿な!?」

煉さん、刹那さん、和麻さんが揃って驚いていました。

「……グランスペル?」

私は何故管理局のトップレベルの皆さんがあれ程動揺しているのか解りませんでした。

「クロノ、ギブアップしろ!お前の防御じゃあれは防げない!俺達の中でもずば抜けて高い防御力を誇る煉でもあればかりはどうにもならないんだ!!」

和麻さんが慌てた顔付きでクロノに話し掛けます。

あんな和麻さんの顔を見たこと無い。

「和麻総部隊長!?しかし!!」

すかさず、クロノは和麻さんに抗議します。

しかし、

「グズグズするな!フェイトさんを連れて早くここから逃げるんだ!!」

智哉さんのお友達の中でも一番温厚そうな煉さんが、抗議するクロノに有無を言わさないといった迫力で黙らせました。

「煉、和麻!全力で止めに入るぞ!!幾ら非殺傷設定しているからと言ってもあれはここを崩壊させかねん!!!」

冷静な刹那さんも今はとても慌てています。

智哉さんのあの魔法はそれ程までに凄いのでしょう。

「「了解!!」」

でも、全力って一体……

「カラドボルグ、パラディンモード開放。」

「行こうか、エクスカリバー。バーストモード開放!」

「ブリューナク、クリムゾンモード開放!」

(え!?皆さんも別モードがあるんですか!?)

和麻さんは白銀の鎧から変化した青白色の全身鎧に身を包まれ、カラドボルグは二刀に分かれ、それらを繋げてスピア状の形状に。

煉さんは蒼穹の色をした騎士甲冑から更に防御力を追求したような黄金の騎士甲冑へと変化して、エクスカリバーは輝きを更に増して、刀身が伸びました。

刹那さんは智哉さんと同じ様な余分な部分を削り取った最低限ありながらも見た目とは程遠い高い防御力を誇るでしょう、深紅の鎧を纏っていて、槍状のデバイスであるブリューナクはその長さが縮まり、刃が元々の2倍、いえ、3倍の長さとなって、先程までの長さから2倍の長さとなったのです。

「いくぞ、煉!刹那!!」

「「ああ!!」」

三人とも今までの動きとは比べ物にならない程のスピードで智哉さんに攻撃を加えようと近づきます。

私は只呆然と見ているだけでした。

それはクロノも同じようで、三人は眼中に無いみたいです。

「遅い!受けよ、我が光の波動を!!虚無の神聖、セイクリッド・アイネイン!!!」

和麻さん、煉さん、刹那さんが辿り着き、攻撃を加える一歩前に智哉さんは魔法を発動。

「ぐっ……!」

「遅かっ……!」

「くそ……!」

「こ、これは……!?」

「きゃっ……!」

刹那、智哉さんの周りを包んでいた光が訓練場を一瞬で包み込みました。








暫くして智哉から放たれた光が消えた。

そこにはとんでもない光景が。

和麻、煉、刹那がそれぞれ訓練場の壁にまるで埋め込まれたかのようになっている。

光の波動によって吹き飛ばされたのだろう。

彼等管理局トップレベルの魔力を誇るその防御壁であっても壁に叩き付けられる様だ。

また、空中に浮かんでいる智哉の真下はクレーターの如き大穴が開いていた。

その衝撃の強さや魔力の高さを物語っている。

ところで、同じく光に包まれたフェイトとクロノはと言うと、その場に佇んでいた。

また、審判も二人と同様だった。

審判は和麻、煉、刹那を探し、全員壁に埋め込まれ、戦闘不能とみなしたようだ。

「……ふぅ。クロノ君はどうする?一応君にはダメージが無いように制御したが。」

クロノの背後から声を掛ける智哉。

今まであれだけの魔力を放出させ続けていた智哉だ。

クロノはまだ若干14歳ながらも執務官という、超エリート。

智哉の魔力を感知出来ない筈は無い。

しかし、そこは智哉の方が一枚上手だった。

「ああ、そうそう。制御こそしたが、君の魔力を感知する力を少々狂わせておいた。悪いがな。心配無い、直ぐに回復する程度だから。」

そう、智哉はあの光の波動にそういう効果を付加していたのだ。

「……今度も完敗だ。ギブアップするよ。」

打つ手無しと言った顔で両手を挙げて審判にアピールするクロノ。

そして、審判の口から試合終了の合図が。

「フェイト、怪我は……無さそうだね、良かった。」

微笑んでフェイトに話し掛ける智哉。

フェイトも智哉に笑顔で返すが、ついでに一言。

「智哉さん、一人で皆さんを一気に倒しちゃいましたね。私、正直言って、模擬戦に出た意味無いんじゃ…。」

笑顔から、苦笑に変わるのだった。

その頃、観戦室では、

「智哉さんってば、管理局でも最強って噂されるくらい強いあの三人相手に勝っちゃったよ……。」

「………アイツ、本当は化け物で人間の姿してるだけじゃないのかい?」

エイミィの反応は相変わらず。

アルフも最早智哉を化け物扱い。

「…ハハ、アルフ、それ言い過ぎだって。って言うか、智哉さんを目の仇にし過ぎじゃない?」

ユーノはアルフにもう少し考えを改めるように言い聞かせるが、アルフはそれを受け入れようとはしない。

「にゃはは……」

なのははユーノとアルフのやりとりを見て苦笑する。

「はいはい。それじゃ、アースラクルーは皆戻りましょうね。」

両手でパンパンと鳴らして、注意を向けさせるリンディ。

これにて模擬戦は終結となった。














~後書き~

はい、第6話これにて終わりッスw

始めに言っておきます。
今回の話、正直フェイト放置プレイでした。
サーセン。
m(_ _)m

タイトル今回は悩みました。
そのまま話の内容通りに『模擬戦』で行こうかとも思ったのですが、何かあんまりじゃね?と思って色々考えましたww
(実は、余り考えてないってのは内緒ww)

2008年1月1日火曜日

<第5話 懐かしの顔>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』









<第5話 懐かしの顔>










グレアム提督の個室から出てきたオレ達は、廊下を歩いていた。

その時和麻が、

「智哉、お前と模擬戦をしようと思う。お前の実力を一度肌で感じてみたいと思っていたのでな。」

と、いきなり言い出した。

和麻のいきなりの提案にオレは、

「……はぁ?」

全くやる気がありません、と言うオーラ全快で答える。

すると、溜め息を吐きながらも和麻は、

「はぁ?じゃない。今ここでお前の実力をはっきりさせておけば、今後の対応もスムーズに行える。今まで出来なかった陣形やチーム等の戦術もこの模擬戦により生まれるかもしれんしな。」

と、模擬戦を受けるように強要してくる。

「オレの実力なら、前に見せてるじゃねーか。それにオレは戦いで人を傷付ける事はしたくない。っつーか、無闇やたらと戦う事は、余程の訳が無い限りしない主義なんでね。」

オレは和麻がこの程度の事で身を退く訳も無いのは百も承知の上で抗議した。

更に口を割るのかと思いきや、和麻は強行策に出てきやがった。

クロノに頼んでおいたのか、クロノが後ろからオレを押し、和麻がオレの腕を引っ張ろうとして来たのだ。

オレはその拘束を難なく解き、フェイトを抱き抱えて逃げようとするが、オレの足を止める一言が他でもないフェイトから放たれた。

「……あの、智哉さん。……その……迷惑かもしれませんけど、………私も智哉さんの模擬戦見てみたいです。……ダメ……ですか?」

フェイトはオレに抱えられていたため、自然と上目遣いになる。

そんな眼差しで見られるとこの前思った事が頭をよぎるじゃないか……。

「……はぁ。」

オレは深い深い溜め息を吐いた。

その溜め息にフェイトはオレが観念したと見て、苦笑している。

そして、オレ達は模擬戦を行うために闘技場並みの広さを誇る管理局の訓練場を訪れた。










「すまない、全員一旦この場を空けて欲しい。今から模擬戦を行う。非殺傷設定にはするつもりだが、局員に怪我をさせるのはお門違いだからな。」

和麻が声を発すると、その場に居た全員が和麻に向き直り敬礼の後、その場を立ち去ろうとする。

その時、

「良い機会だ。この模擬戦を観戦して行くと良い。お前達には良い経験となることだろう。それに、私やクロノの戦いを一度見てみたいと思っていた者も少なからず居るだろうからな。」

ここをいきなりの訪問で使わせてくれる代わりに、と言って準備を行う和麻。






「よし、準備は出来たな。」

「………マジで面倒なんだけど。」

「今更ここまで来て何を言っている。さっさと構えろ。」

和麻がオレのやる気の無い格好を正せと叱責する。

クロノもデバイスを構える。

どうやらオレVS和麻&クロノの1対2のようだ。

しかも、ギャラリーの多い事。

(……おいおい、そんなに楽しみなのか?この二人が戦うのは。オレは見せ物じゃないっての………。)

≪ふふ。仕方ありませんよ。智哉様がフェイト様の仰るお願いに弱いのがいけないんですから。≫

(……はぁ、ホントだな。………もしかしたら尻に敷かれているのか、オレ?)

ドッと大きな溜め息が出るオレに対して、

≪どうなのでしょうね?ですが、私は尻に敷かれているとは言わないと思いますよ。智哉様はご自身でそう感じるのですか?≫

と、アイーシアが聞いてくる。

(……う~ん、今はそんな感じはしないけど……。でもな、この状態がずっと続くと、もしかしたら……。)

おいおい、十歳も年下の子に自分から告白したは良いさ。

けど、このままだったら多分オレ尻に敷かれるぜ?

これってどうよ?

年上の威厳なんてもんは愚か、何処かの変態さんですか、オレは!?

そう思うと、

≪ふふ。ですが、大丈夫でしょう。智哉様が尻に敷かれる事は無いかと思いますよ。今のフェイト様は智哉様の傍にいて愛情を感じたいのだと、甘えたいのだと思います。フェイト様のお願いやお強請りは甘えの一つなのでしょう。何より、生みの親があの様でしたから。≫

(ああ、それは解っている。いや、本当に解っているなら尻に敷かれる事なんて気にしないか。……全く、オレもまだまだだな。)

アイーシアに助言を貰って自分を見つめ直すオレ。

フェイトの願いだから、と自分を奮い立たせる。

そして、和麻の声が響き渡る。

「これより、神崎智哉VS宮沢和麻&クロノ・ハラウオンの模擬戦を行う!武器は非殺傷設定とする。智哉か我々のどちらかがギブアップ又は戦闘不能となった時点で終了とし、時間は無制限!……では、試合開始!!」

こうして、戦いの火蓋が切って落とされた。









そんな中、観戦用の部屋内では人で溢れていた。

フェイトやなのはは勿論、リンディやエイミィ、ユーノやアルフ等のアースラメンバーと、さっきまで訓練していた管理局の魔導師達がこの模擬戦を見ようと集まったのだ。

部屋の中では和麻やクロノの模擬戦の相手である智哉に関する情報を交換し合ったり、滅多に見ることの出来ない和麻やクロノ自らが行う模擬線を楽しみに待つ者達や、模擬戦の解説や実況をしようとする者達が居た。

フェイトやなのはを始めとするアースラ組みは、模擬戦の解説を行おうとしていた。

「智哉さんの戦いを見るのは久々で楽しみ~。」

なのはが早く始まってくれないかな~、と言った感じで嬉しそうに言う。

「そうだね、私も見たい。………でも、智哉さんに悪い事してしまったかもしれない。」

フェイトは嬉しそうな顔を一変させて呟いた。

呟き声を聞いたなのはが、え?と聞き返すと、フェイトは続ける。

「……智哉さん、和麻さんに意味の無い戦いは極力避けたいんだって言ってたんだ。戦う理由が無い限り、オレは人を傷付けたくは無いって。……それでも、私が見たいって言うと、渋々だけど仕方ないなって言ってくれた…。」

「そうなんだ……」

なのははフェイトの言葉に曖昧に返事を返す事しか出来なかった。

二人の様子を黙って見ていたリンディは、

「そうね、でも今回ばかりは仕方ないと私も思うの。この模擬戦によって彼の力量が和麻さんやクロノに直に伝わることで、今後の行動に役に立つでしょうから。」

と、優しくフェイトとなのはに言う。

リンディの言葉を聞くまで暗い顔をしていたフェイトが、決心した顔付きになり、

「……この模擬戦終わったら、ちゃんと謝ろうと思うんだ。我が侭ばかり言って困らせて、辛い思いさせてしまってごめんなさいって。」

そう語ったのだった。









「スティンガースナイプ!」

≪Stinger Snipe≫

クロノの声が響くと同時に青白い光の線が智哉さんを襲います。

智哉さんはクロノの攻撃を横にヒラリと回避しますが、その光線はなんと180度曲がり、再び智哉さんを背後から襲います。

背後に何かを感じ取ったのか、智哉さんはクロノの下へ急加速して突っ込んで行きました。

デバイスを前に構えるクロノですが、智哉さんの意図に気付くのには少々遅かったようです。

クロノの目の前で更に加速して来た智哉さんは、一気に真上に上昇したんです。

直後、スティンガースナイプはクロノに直撃して爆発しました。

私は智哉さんを目で追っていたので、和麻さんに気付きました。

和麻さんは智哉さんが上昇する事を見越していたのか、上空で魔方陣を展開して、

「雷帝の怒りを受けよ!裁きの魔弾、招雷弾!!」

雷を纏った巨大な球体が智哉さんの目の前に。

私もあれを一度目の前で見たことがある。

あの時はもうダメかと思った。

あれ程の魔力が篭った一撃をまともに受けてしまったら、意識が飛ぶどころか、もしかしたら、ううん、確実に全身が蒸発さえするだろうと思います。

何せ和麻さんの魔力ランクは私から見てもSSランクは確実だ。

でも、智哉さんはあの攻撃を一度防いでいるのです、それも片手で。

けれど、あの時は私と一緒に落下しながらだったから出来た事かもしれない。

今回は急加速したままで急上昇した所を目の前で狙われているんです。

いくら智哉さんが強いと言っても、これを避けるのは困難を極めると思いました。

しかし、智哉さんはその強大な魔弾を簡単に回避してしまいました。

「……智哉さん、本当に凄い。」

「……うん。もう、何て言うか、とりあえず凄い!」

私となのはの言葉にエイミィさんが反応して、

「いやぁ、もうあの機動力だけで反則だね。物理法則を無視してるって感じ。」

本音丸出しな解説をします。

それに便乗するように母さんも、

「本当ね~。クロノがあんなに翻弄される所を見れるなんて。」

そう言いながらお茶を啜っています。

瞬間、地面に球体が衝突し大爆発!

訓練場全体に溢れ出す光が眩し過ぎて、暫く目を開ける事が出来ずにいました。

光が消え、目を開けた私達観戦組が見た光景、それは……









「……出来るだけ、速攻で放ったんだがな…!」

剣と剣とがギリギリと音を立てながら、和麻がオレに話し掛けていた所だった。

オレは和麻を振り払い2,3歩後退すると、

「喰らえ!」

≪Blaze Cannon≫

上から叫び声と共に放たれた奔流が向かって来る。

「…ちぃ!」

奔流をギリギリの所で回避したが、体勢を崩した。

その隙を逃さず、和麻がカラドボルグに雷を纏わせ薙ぎ払って、波動を放つ。

波動は横にとても広く、そのまま薙ぎ払われた勢いでオレに向かって来たのだ。

それも猛スピードで。

(……おいおい。避けられるのか、これ!?和麻の奴、本気じゃねーかよ!幾ら非殺傷設定をしてあるとは言え、今までの攻撃もそうだが一般の魔導師なら確実に致命傷になるぞ!?)

≪智哉様、どう致します?あのお二方によるあれ程の攻撃を、それも連続で仕掛けられたら幾ら智哉様であっても、お一人で回避能力をこれ以上上昇させるのは限界かと思うのです。諦めて攻撃に転じるか、私の力を解放させるかされた方が。≫

(………いや、それはダメだ。あいつ等の魔力を出来る限り消耗させて、最小限の一撃で終わらせるんだ。)

アイーシアと思念通話をしながら急降下によってまたもギリギリで回避した。

崩れた体勢の状態で無理矢理回避行動を取った為に、体への反動が重く圧し掛かる。

その一瞬だった。

≪Break Impulse≫

気付いた時には光に包まれ、大爆発。

オレはクロノの放った魔法をもろに受けた。








「智哉さん!!」

クロノの直撃を受けた姿を見た私は観戦室で叫んでしまいました。

「……少しは効いたか?」

「………」

クロノの疑問系の手応えに、和麻さんは何も答えません。

煙が晴れると、そこには無傷の智哉さんがいました。

「えぇ~。今の直撃でノーダメージ?どう考えても絶対にオカシイでしょ!?」

すかさず突っ込みを入れるエイミィさん。

突っ込みたい気持ちも解る気もしますけど、それよりも私は智哉さんが無事で良かった、と言うのが正直なところです。

ふと隣を見ると、なのはも智哉さんの規格外な動きに苦笑いしていました。

「………貴様、何時まで防御や回避を続けるつもりだ?…今のクロノの一撃で漸くデバイスの力も使った様だしな。」

……え?

和麻さん、それって本当なんですか!?

智哉さんが今の今までの回避行動を、デバイスの力を使わず自分一人で!?

「……うそ……でしょ……!?」

「智哉さん……凄過ぎ……」

「ハハ、底が見えないってこういう事を言うんだね……。」

「……アイツ本当に……人間なのかい?」

「うぅ~ん、ますます智哉さんには惚れるわね~wこれはもう本局に推薦するしかないわね!」

エイミィ、なのは、ユーノ、アルフ、母さんがそれぞれの感想を漏らします。

私も正直言葉が見つかりません。

観戦室でそんな感想が飛び交う中、智哉さんが、

「……それは無い。現に今こうして無傷でいられるのもアイーシアのお陰だしな。」

智哉さんが和麻さんの言葉に一瞬戸惑ったように見えたけれど、普段通りに装って話します。

すると、

「…………喰らえ。」

≪Thunder Rage Shining Force Burst≫

和麻さん!?

刹那、智哉さんに無数の雷が降り注ぎました。

智哉さんはその場から高速移動しようとした様ですが、拘束されていたために身動きが取れずにいます。

(魔方陣の展開も無いし、詠唱もしないでいきなり!?……それに、これは……!!)

そう、私の魔法『サンダーレイジ』に酷似していました。

けれど、これは私の『サンダーレイジ』とは雷の色や数、威力や範囲など全てが桁違いだったんです。

直後、放たれた雷が智哉さんを直撃してしまいました。

「あの一撃を受ければ、幾ら智哉さんでも堪えるでしょうね~。」

お茶を啜りながら冷静に解説をする母さん。

「艦長、でも今までの回避不可能に近い和麻さんとクロノの連携攻撃も難無く避けて来たんですよ?今回も実は………何て事もあるんじゃないですか?」

と、エイミィは母さんに意見しています。

その時でした。

智哉さんが力無くその場から落下して、そのまま地面へ叩き付けられるところを見てしまったのです。

「智哉さああぁぁぁぁあああああん!!!!!!」

私は窓ガラスに手をつき、思いっ切り叫んでしまいました。

観戦室に居た皆さんの目が私に向けられますが、そんな事を気にしている暇なんてありません。

智哉さんが、あの智哉さんが意識を失って地面に伏しているんです。

しかも、力無く落下までして。

そんな状態の智哉さんなんて初めて見たため、パニックになってしまいました。

私の大好きな智哉さんがピンチ。

それが心配で心配でいてもたってもいられない。

目から思わず涙が零れ落ちてしまった。

「智哉さん!智哉さん!!智哉さん!!!」

私は必死で智哉さんに届くようにと願って叫びます。

(……お願い!智哉さん、起きて……!!)

と、その時でした。

私の願いが天に届いたのかは判りませんが……

「…ふぅ、これで終わりだ。」

不意に智哉さんの声がしました。

(智…哉……さん!?)

私は声がした上のほうを見上げると、

「な!?」

「動かない方が良いぜ?お前も既にオレの罠に掛かってるんだからな。」

和麻さんが動こうとした所を、智哉さんがその行動を止める一言を言いました。

肝心の智哉さんはと言うと、クロノの背後からラグナロクを構えていたんです。

私達観戦室組は、全員智哉さんのとんでもない策略に度肝を抜かれてしまいました。

クロノが参った、降参と言う顔で、

「……ギブアップだ。悔しいが、完敗だ。」

そう言うと試合終了の合図が。

瞬間、観戦室からは訓練場に漏れ聞こえる程の大歓声が沸きました。

「智哉さんは本当に凄いね!」

「ホントだね!カッコイイよ!!」

「何もかもが規格外で、もう凄いとしか言えないね……。」

「これで、管理局の幹部はもう確実ね~w私も鼻が高いわ!」

なのはやユーノは智哉さんを褒め、エイミィは驚きで一杯、母さんは頬が緩みっぱなしです。

かく言う私はと言うと、

「……もぅ、智哉さんったら。……心配させるんですから。」

胸を撫で下ろしながら呟いたのでした。









「………僕達は全力でやった。…けれど、結果は完敗か。」

「……一度たりとも手を抜いた覚えは無い!連携も完璧だった筈!だが結果はこの様だ!俺達の一体何処に敗因があると言うんだ!?」

和麻がオレに怒鳴り散らす。

「……ったく、管理局の魔導師を指揮する人間が、自分の敗因を気付けないってのは、まだまだ甘過ぎる証拠だな。」

オレは呆れながらも和麻に対して言う。

和麻はオレに眼を飛ばしてくるが、気にせず話を続ける。

「あの時、お前がオレに手を抜いたと言ってただろう。その後お前はどうした?いや、恐らくその前からだろうがな。お前は全力で戦ったと言ったが、それは怒りに身を任せた全力であって、お前の澄んだ心で戦った全力では無い。それがお前がオレに勝てなかった理由だ。」

淡々と語ると、和麻はオレに何も言わず自分を見つめ直しているようだった。

(……フ。その辺りは流石総部隊長の地位を任されるだけはあるな。)

≪ふふ。そうですね。ですが智哉様?今日のようなとんでもない無茶は、今後一切いけませんよ?観戦室でフェイト様がまた涙を流されていたのですから。≫

(うっ……!それは言わないでくれよ、アイーシア。あのサンダーレイジを本当に直撃させられたら非殺傷設定であっても意識が飛んでたしな。)

そう、オレは和麻のサンダーレイジを受ける前、二人に気付かれないように幻術魔法を使っていたためにダメージを受けず、且つクロノと和麻にギブアップを言わせることが出来たのだ。

……だが、あの時は正直賭けだった。

和麻もクロノもオレとの会話に集中してくれていたから魔方陣を展開せず、声に出して詠唱せずに放つ事が出来た。

オレとあの場で会話をしていないクロノがもしかしたらと思ったが、何とか誤魔化せたのだった。

敗因を話したところで、オレの勝因を語ろうとした時だった。

「へぇ。幻術魔法も使えるなんてね。流石……と言った方が良いのかな、智哉?」

聞き覚えのある声。

声のする方を振り向くと、そこにはバリアジャケット、いや、あれは騎士甲冑だろう、を着てオレ達の傍まで近寄ってきた二人の魔導師が居たのだ。

「……久々だな、智哉。何年振りだ?」

「はぁ~、刹那は忘れっぽいな~。10年だよ。」

「……あれから最早10年経ったのか。月日はあっと言う間に経つものだな。」

風情に浸っている、明るいオレンジの甲冑を見に纏う青年と、蒼穹の甲冑に身を包む、女性のように澄んだ声で話し掛ける気さくな青年。

「……お前達、まさか、煉と刹那か!?」

「ハハ、覚えてたんだね、智哉。嬉しいな。」

「覚えていて当然だ。あの頃は何時でも何処でも4人で固まって、色々悪さもした仲なんだからな。」

「そうだね、あの頃が懐かしいや。智哉と和麻が毎日のように喧嘩しては僕が止めに入って、刹那が両成敗って感じだったもんね。」

オレの前で嬉しそうに昔話をする煉と刹那。

「あの頃は何も知らず、よく悪戯したな。本当に無邪気だったとオレも思う。」

そう言いながら、オレは過去を振り返る。

過去には余り良い思い出が無いオレにとって、それは数少ない心に残っている良い思い出だった。

「……ところで、何で二人とも騎士甲冑なんて身に着けているんだ?」

オレはふと思った事を口に出した。

すると、煉は答える。

「少しでも多くの人々が幸福に生きられるように、って思ったんだ。僕は、いや僕と刹那は既に魔導騎士となっていた和麻を見てしまってね。偶然だったんだけど、今思えばそれは必然だったのかもね。それが理由でこの世界に身を置く決意をしたんだよ。僕と刹那は魔導師の資質があるから挑戦してみたら?って和麻に言われてね。」

煉の話に刹那も首を縦に振る。

「それにしても智哉、お前も魔導騎士だったとはな。何時から管理局入りした?」

「管理局には正式にはまだ配属されてはいない。今は臨時でアースラ所属の魔導師達の護衛を任されているだけだ。」

刹那がオレに疑問を投げ掛けて来たので、オレは答える。

その時、

「智哉さあああぁぁぁあああん!」

フェイトが走ってオレの体にしがみ付いて来た。

一瞬驚いたが、オレは普段通りにフェイトの頭を優しく撫でた。

胸元で腕を回しているフェイトは、

「……もぅ、すっごく心配したんですからぁ。」

と呟くが、オレにはハッキリ聞こえた。

だからと言っては難だが、

「…ハハ、ゴメンなフェイト。悪かったよ。」

微笑みながら心配性のフェイトを抱き締めた。

オレ達の周りに沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは煉だった。

「…………え~と」

煉は突然オレの胸元へ飛び込んで来たフェイトに戸惑いを隠せないでいた。

それもそうだろうな。

オレとフェイトだけを包み込むように、何者も寄せ付けないバリアの如き別空間があったのだから。

「…………アハハハハ。よからぬ事を聞くけどさ、…………智哉ってロリコンだったっけ?」

グサッ!

オレの心に煉のとある一言が突き刺さった。

「……仕方無いだろ?この子を、フェイトを好きになっちまったもんは。今はフェイトを守る事しか頭に無いんだ。それが今のオレの生き甲斐なんだよ。」

オレは後から冷静に考えると、途轍もなく恥ずかしい事を言っていたのだが、今この時は、何故か平気で口に出す事が出来たのだった。

その言葉に煉は若干引き気味だったのは言うまでも無い。

「……お前が誰を、どんな子を好きになろうが俺には関係無い。それに、煉も二人の関係に口を挟むのはマナー違反だと俺は思うんだが。」

刹那は少し説教気味に煉に言い聞かせる。

煉も苦笑しながらもしっかり刹那の言葉に耳を傾けていた。

(…この二人は、いや、この二人も相変わらずのようだな。)

オレは心の中で呟きながら苦笑いしていると不意に煉が口を開いた。

「……っとそうだった。僕は智哉とフェイトさん……でしたか、二人の関係を茶化しに来た訳では無いんです。」

「……おいおい、茶化しに来たのかよ…。」

オレは溜め息混じりに言うと、煉はいやいやと言いながら話を続ける。

「実は、密かに刹那と一緒に和麻とクロノ君、智哉の模擬戦を拝見していてね。智哉が思っていた以上に強いから僕達も混ぜて貰おうかって話をしようと思って来たんだ。どうだい?」

「……は!?」

(おい、ちょっと待て!今何て言った!?僕らも混ぜて貰おう!?無茶言うなよ!たった今やりたくも無かった模擬戦を漸く終えたばかりなんだぞ!?)

「いや、だから僕と刹那も加えてもう一回戦おうって。智哉も流石に二連戦で辛いだろうから、何なら僕と刹那だけでも良いんだけどね。」

オレが戦う事は既に決定事項ですか。

≪智哉様、どうしましょうか?もうこれ以上戦いたくないのであれば、私からもせめて今回は見送って貰うよう頼んでみますが?≫

今のオレには、本当にアイーシアの言葉はとても有難かった。

けれど目の前に居る煉も刹那も、それに先程の負けを根に持っているのか、和麻とクロノも見なくても感じてしまう程、戦う気満々のようだった。

そんな時、煉がオレにとんでもない提案をして来た。

「だったら、智哉の彼女さんかな、傍にいるフェイトさんも参加してくれて全然僕達は構わないよ?こちらはこのまま話が進むとなると4対1になる訳だし。」

(……オレは無意味な争い自体をやりたくないんだけどな。)

オレは煉の提案に返事をせずにいると、和麻が横から割り込んで来て、口を挟む。

「貴様、勝ち逃げか、あぁ!?随分なご身分だな、おい!?戦いたくないとか言ってデバイスの力も使わず回避ばかりしやがって!今更逃げる気か!?………あぁ、そうかそうか。4対1、いや、4対2にしても勝てる気がしないから逃げるのか、そうか!そうだよな、彼女の目の前でボロボロになるなんて恥ずかしいもんなぁ!?」

ブチッ

その言葉を聞いた瞬間、オレの中で何かが切れた。

「………フェイト、危ないと思ったらオレの傍から離れるなよ?」

「……智哉さん?」

「……いいな?」

「……は、はい。」

さっきまでのオレとは思えない程の豹変した声を聞いたフェイトが胸元で少し怯えていたが、オレの守ると言う意志が伝わったのか、直ぐに強張っていた体の力を抜いたようだ。

「……先に言っておく。フェイトに手を出した奴から葬り去る!!」

「うは、智哉ってば豹変しちゃったよ。……ま、でも戦ってくれるみたいだから良いかw」

テヘッと言った顔で呑気に話す煉。

何処からともなく審判が駆け寄り、

「それでは、これより模擬戦を行います!デバイスは両者非殺傷設定!先にどちらかのチーム全員が戦闘不能、又はギブアップと言った時点で終了、相手チームの勝利とします!………では、始め!!」

「さぁ、いくよ!エクスカリバー!!」

≪了解しました≫

「……今日も一仕事頼むぞ、ブリューナク。」

≪承知≫

こうして、模擬戦、第二回戦が開始された。
















~後書き~

第5話漸くアップ出来ました~w
いや~、文章長いですなw
まあ、気にしてないんですがねww

今回の話をサイドストーリーにしようかとも思ったんですがねw
まあいっか~的なノリで書いてしまいましたww
終わりを見れば分かると思いますが、第6話は5話の続きですw

これで一応本編からの脱線は終わりにしようと思ってますw