二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』
<第30話 覚醒の刻>
スターライト・ブレイカーの爆風は永遠と思われる程、その場に残り続けた。
爆風が漸く消えた時、智哉さんは片膝を地面に着き、肩で息をしてる。
「智哉さん?!大丈夫ですか!?」
見るからに辛そうなその姿を見た瞬間、考えるよりも口が、身体が先に動いていた。
「……はぁはぁ。……だ、大丈夫……だよ。」
笑おうとするけれど、その顔も無理をしているのがバレバレな程に表へ出てしまっている。
「そんなに辛そうな顔をして、大丈夫な訳ないじゃないですか!!」
「……大……丈夫だって」
そう言って智哉さんはその場に立とうとした。
でも、身体は正直。
立った瞬間、崩れ落ちるかのように倒れそうに。
それでも智哉さんの精神力が身体を支え、先程の状態に戻った。
智哉さんの強さの象徴なのではないか、と考えても不思議ではない程の精神力。
「……フェイト、その場から動くな」
「……え?」
「良いから!!!!!!!なのはもアリサもすずかも比呂美も全員!!!!!!!」
智哉さんの怒鳴り声。
いきなりだった。
私が何かをしたのだろうか?
いや、それだけだったら怒られるのは私だけの筈。
じゃあ一体何が?!
そう思った時。
辺りが急に光で照らされている事に気付いた。
光の差す方へ顔を向ける私。
目に映ったもの。
それは……………
「アイーシア、セカンドリミッター解除だ!それと同時に詠唱無しでフォースフィールドを展開!!」
≪ダメです、智哉様!展開が間に合いません!!≫
「だったフェイト達の周りだけで良い!!!」
≪ですが…!≫
「良いと言ってるだろ!!オレは騎士道魔法で乗り切る!!!!」
≪……分かりました。セカンドリミッター解除、フォースフィールド展開。≫
「フェイト、なのはと一緒に比呂美達の傍に行くんだ」
「…でも智哉さん、身体が…」
「良いね?」
有無を言わせないようなオーラが出ていた。
自分でもはっきり判る程。
だが、それだけ切羽詰っていた。
目の前には白く光り輝く『壁』が迫っていたのだから。
≪ヴェルミングシルト≫
『壁』がオレの張ったシールドに衝突。
それ以外にカバーし切れなかった部分が地面に突き刺さった。
刹那、そこから大爆発。
広域範囲攻撃が加えられた結果だ。
背後から爆風が襲い掛かる。
フェイト達は爆風に飲み込まれそうになる。
だが、ギリギリフォースフィールドの展開が間に合ったためそこは心配していない。
寧ろ危ないのはオレの方。
受け止めているだけでもかなり負荷がかかっている状態なのに、背後にも防御魔法を展開しなければならなくなる。
そうなれば、正直持ち堪えられる確証など微塵も無い。
仮にも放たれたのはオレの魔法。
威力は勿論だが、何より十二分なチャージ時間を与えているのだ。
その破壊力はオレが一番良く知っている。
先程のスターライト・ブレイカーでさえも正直危なかった。
リミッターを一段しか解除していない状態で只の防御魔法では良くて相殺。
だからこそ、召喚魔法まで使った。
守るべき者がそこに居るから。
もう片方の腕を伸ばし、シールドを張った。
爆風は遠慮無しに激突してきた。
「……くっ!」
双方からの攻撃がオレの身体に疲労を蓄積させて行く。
それも今までより何倍も早く。
≪智哉様!!≫
アイーシアが叫ぶ。
何事かと思った。
しかし、そんな事も考えている余裕などある訳も無く。
返事すら返せない状態だったのだから。
返事が返って来ないからだろう、アイーシアが続きを話した。
≪砲撃を受けているシールドに罅が入って来ています!良く見てください!!≫
「……こりゃあ……不味いな」
≪このままでは智哉様が押し潰されてしまいます!!≫
「…………だな」
そろそろ腕に限界が来ていた。
只両腕を伸ばし、只シールド魔法を展開しているだけなのに。
腕には………いや、腕だけではない。
筋肉が、全身の筋肉が休ませろと一斉に抗議している。
大量の乳酸が行き渡っているのが判った。
判ってしまう程に全身が疲労、疲弊しているのだ。
その状態のまま、最早精神力だけで保っているようなものだった。
現に、後から張ったシールドにも罅が入り始めているのだ。
「……くそっ!」
先に罅が入った方のシールドはもう既に限界。
何時割れてもおかしくない状態だった。
(……まさか、自分の砲撃を喰らう羽目になるとはな。…幸いなのは、この砲撃魔法まで『しか』使わなかった事か。)
それでも。
もう腕に感覚は無い。
シールドも端から徐々に壊れ、砕け、消えていく。
オレを倒すには……いや、『消す』には十分だった。
(……ふぅ、ここで終わるのか。所詮はオレもそれまでだったって訳だ。)
中心のみ残った部分も、遂に消し飛んだ。
光の『壁』がオレを押し潰そうと目の前まで迫る。
瞬間だった。
ここで終わっても良いのかと。
こんな所で終わって良いのかと。
オレが消えたらこの事件は……
オレが消えたらこの場所は……
オレが消えたらこの世界は……
オレが消えたらこの星は……
オレが消えたら愛する人は……
そんな事が頭を過った。
しかし時間は止まらない。
オレは『壁』に押し潰され、飲み込まれてしまった……。
光の中。
オレは思う。
オレが死ねばどうなる?
オレの傍には誰が居た?
飲み込まれる瞬間、最後に過った言葉が頭に蘇る。
自然と。
『オレの愛する人』
そうだ……。
オレには……オレの傍には……オレの直ぐ後ろには『愛する人』が居た。
その人を守るため、オレは『そこ』に居た。
守るためにいた筈だ。
ならば、今オレが消えたらどうなる?
守る者がいなくなれば、自ずと守られる者は危険に晒される。
簡単な事だ。
要するに死ぬ。
彼女達に、この光の『壁』を防ぐ力は無い。
仮にも一段階のみとは言え、リミッターを解除した状態でミッドとベルカの合成魔法である、騎士道魔法を使ったのだ。
確かに両腕でシールド魔法を使いながら、広域範囲防御魔法を展開させて彼女達を守っていた。
百歩譲ってそれでシールドへの魔力が少なかったとしよう。
それでもリミッターを解除した状態で騎士道魔法を使えば劣る事は無いと断言出来る。
だから…………
だからこそ……………
オレはここで死ぬ訳にはいかない!!!!!!!!!
【汝に眠りし闇の真髄、今此処に開け。契約の下、精霊王たる我の力、汝に与えん。】
刹那、オレの中で何かが弾けた。
全身の感覚が戻っていく。
疲労も魔力も全て回復していく。
「契約者の名の下に集え、闇の光。破滅へ導く滅びの光を打ち砕け。」
真っ白い光は次第にその輝きを失い、闇へ飲み込まれていく。
それと同時に、オレの意識も闇の中へ引き込まれて行った………。
後ろからの爆風に飲み込まれてしまった私達。
でも、智哉さんの広域範囲防御魔法である、フォースフィールドのお陰で何とも無かった。
智哉さんの姿も爆風で見えなくなってしまったけれど。
その爆風が私達を飲み込んでから時間が経過する度、徐々にフォースフィールドが薄くなって来ている事に気付いてしまった。
(これってまさか………智哉さんの身に何かあったんじゃ!?)
智哉さんは私達を、誰かを守る為に使った防御魔法に魔力を惜しまない。
自分の命よりも他人の命を優先してしまう。
智哉さんはそういう人。
今のような状況になったとすれば、智哉さんの魔力が極端に使われた時。
……何らかが原因で、智哉さんの身が危険に瀕している時。
………最後は、これだけは出来る限り考えたくは無い、無いけれど。
智哉さんが力尽きてしまった時。
……残酷な言い方に変えると、死んでしまった時。
少なくとも、一番最初の可能性であって欲しい。
無意識にそう思ってしまうのは仕方ない。
私は智哉さんの恋人なのだから。
私は智哉さんの『妻』となるのだから。
だから私は願った。
(神様……お願いします……智哉さんを……死なせないで……!)
両手を合わせ、握って祈る。
目を閉じて。
「な、何、この黒い光?!」
なのはの声がした。
目を開けて、辺りを見渡す。
すると、先程の白く輝く光や爆風が消えていた。
その代わりに、辺りは黒い光で包まれている。
「何だろう……この光」
黒い光。
これは何?
闇?
何か違う。
確かに闇なのかも知れない。
けれど、只の闇じゃない。
何処が違うのかと言われれば言葉に出来ない。
でも……うん……そうだ……
温かい。
言い表すならば、この言葉が一番ピッタリだと思う。
普通の闇であれば、恐怖とか、そう言ったマイナスの感情を受ける。
けれど、この闇にそんな負の力は微塵も感じない。
ふと張られているフィールドを見上げる。
「ぁ…」
無意識の内に声が漏れていた。
祈りが届いたと思った。
気付けば、瞳から涙が自然と流れて来ていた。
嬉しいのに止まらない。
泣いているのに泣けない。
声が出ない。
その間にも闇の光は収束して消えていく。
何時もと雰囲気が違った『彼』の下へ。
浮遊していた『大好きな人』の姿をずっと見つめていた………。
意識が戻った時には宙に浮いていた。
自分の身の確認よりもしなければならない事がある。
辺りを見渡した。
『それ』は『その場』にしっかりと存在していた。
そして何より『彼女』の存在も。
心の中でホッと胸を撫で下ろした。
だが、良く見れば『彼女』は涙を流しているではないか。
(……ハハ、また心配を掛けてしまったな)
とりあえず覚悟は決めておこう。
何言われるか分からないから。
フォースフィールドの中へ入り、愛しの少女の目の前に降り立つ。
「心配掛けたね、フェイト」
人差し指で涙を拭いながら一言。
「……ぅうあああぁぁぁぁああああああん!!!!」
「……ハハ」
フェイトは勢い良く胸に飛び込んで来た。
そして、思いっ切り泣いてしまった。
無理も無い。
心配掛けたのだから。
この位、受け止めてあげなければバチが当たる。
「智哉君……」
比呂美の声。
比呂美の方に顔を向ける。
「今直ぐアリサやすずかと一緒に、安全な場所へ避難させるから。行こうか、二人共。」
なのはとフェイトが頷いたのを確認。
フォースフィールドを解除した。
同時に思念通話を送る。
(エイミィ、三人を頼む)
「智哉君!」
比呂美はオレを追い掛けて来ようとした。
が、エイミィによって新たに展開された魔法陣の壁に阻まれる。
比呂美はドンドンと壁を叩くが、勿論ビクともしない。
「フェイト、すまないけどなのはと一緒に先に行っててくれないか?」
「……ぐすっ……はぃ」
「ゴメンね、直ぐ行くから」
瞳に溜まった涙を指で拭ってあげると、フェイトは名残惜しそうにオレから離れ、堕天使の下へ行った。
「………して」
比呂美はその場に崩れながら何かを口にした。
けれど、小さ過ぎて聞き取れなかった。
「……どうして……どうして『何時も』……突然居なくなるの?幼稚園の時も……高校生の時も……そして、今も……。」
比呂美の声は震えている。
下を向いているから顔を見る事は出来ない。
けれど、きっと泣きながらでも、必死に話そうとしているのだろう。
オレは今まで比呂美に沢山迷惑を掛けて来た。
その自覚は十二分にある。
今でも。
だからこそ、せめてこの短い時間だけでも話を聞こうと、話をしようと思った。
「君を……お前を巻き込まれないようにする為だ。オレが傍に居れば何かしらの問題が起きてしまう。その度にお前に迷惑を掛けてしまっているから……」
「私は!………私は、迷惑だなんて思ってない。……傍に居てくれるだけで……一緒に居てくれるだけで幸せだから。……他には何も要らないし、何も望まない。だから……」
比呂美の必死の想いがオレの心に響く。
あの時の想いが蘇って来る。
比呂美へ懐いていたあの想いが。
……だが、その想いに答える事は出来ない。
その想いに正直になる事は出来ない。
正直になってはいけないのだ。
………オレの人生はもう直ぐ幕を下ろすから。
それ故、自然と口から真なる事実を話していたのかも知れない。
「……地震が、いや違うな……次元断層が起こるんだ」
「次元……断層……?」
「…そう。それも宇宙規模の途轍も無く大きな断層が。もしもそれが起これば地球は愚か、付近の惑星は全て消滅する。この意味、お前なら解るな?」
「……それと智哉君に、どんな関係があるの?」
比呂美は言葉を慎重に選ぶ。
オレが、オレの口からどの様な真実が紡がれるのか不安なのだろう。
「オレはその次元断層を防ぐと言う使命を背負っている」
「………え?」
比呂美は固まってしまった。
今の言葉でこの状態ならば……
オレが死ぬ運命にあるという事を口にした時、どうなってしまうのだろうか?
だが、ここまで喋ってしまった以上、今の話を無かった事にはしてくれないだろう。
比呂美はそういう面ではとても頑固だから。
「次元断層を防ぐ為、食い止める為に今のオレは『生きている』」
一言を、ほんの少しだけ強調して言ってみた。
だが、比呂美には十分過ぎる程伝わった。
「……死んで……しまうの?」
「……ああ」
ゆっくり、しかし確実にオレは首を縦に動かした。
比呂美の言葉を噛み締めるかのように。
涙を流しながら、必死に紡ぎ出した言葉に。
「……そんなの無いよ。……どうして……どうして智哉君ばかり……そんな辛い思いをしなきゃ……いけないの?」
「……心配ばかり掛けてすまないな。…だが、誰が何を言おうと、どんな事をしようと……オレは止まらない。これだけは譲れないんだ。フェイトが……比呂美、お前がいるこの世界を……この星を守らないとな。」
優しく微笑みながら、比呂美を納得させようと話をする。
「……不公平だよ」
「…それでも、オレは幸せな人生を歩む事が出来た」
「……そんなの……本当の幸せじゃないよ」
「…そうかも知れないな」
比呂美が泣いている。
昔なら、フェイトが泣いている時のように比呂美の涙を拭いに傍へ寄り添った。
だが、今それをする事が出来なかった。
……違うか。
それをする訳にはいかないのか。
何故って?
比呂美が好きだから。
比呂美の傍にいると、決心が揺らいでしまいそうになるから。
(智哉さん、もう限界です!)
(……分かった)
エイミィから時間一杯である事を告げられた。
「……もう時間だ、比呂美」
「智哉君!!」
比呂美の身体が魔法の力で消えていく。
徐々に徐々に。
比呂美は必死で逃れようと抵抗している。
だが、それも空しく。
ここまで来る事は比呂美には出来ない。
だから。
一言。
「生まれ変われたら、お前と……君と共に歩む人生である事を願うよ……」
「……こんな別れって……無いよ」
比呂美の涙が止まらない。
女を泣かせる男は最低だ、とか。
碌な奴がいない、とか。
そんな言葉を良く耳にする。
本当にその通りだと思った。
自分がそうだから。
そういう男を好きになってしまった女性は苦労する。
そんな言葉も全くその通りだと思う。
そういう男は身勝手な奴が多い。
これも完璧に当て嵌まる。
皮肉なもんだ。
身勝手な言葉だと解っていても。
やはり、好きな女性には……愛する女性には笑っていて欲しいと思うのが男。
せめて最後の別れくらい。
「比呂美……愛してる」
言わせて欲しい。
フェイトの顔が過る。
けれど、今だけは許して欲しい。
初めて恋をした相手だから。
そして、もう二度と叶わない恋だから……。
心の中で呟いた。
(さようなら、比呂美)
と………。
≪智哉様……宜しかったのですか?≫
「ん?何がだい?」
≪比呂美さん、でしたね。あのような別れ方をしてしまって。≫
「これで良いんだ……、大丈夫。迷ったりはしないから。」
≪……そうですか。でしたらもう、何も言いません。≫
「そうしてくれると助かる。……そろそろ二人を助けに行かないと不味い頃合いだろう。行こうか、アイーシア。」
≪はい≫
そしてオレ達は二人の下へ向かった…………。
「この……駄々っ子おおおぉぉぉぉおおおお!!!!!!!」
私は我慢の限界に来た。
その歪んだ心を、皮肉れた心を真っ直ぐ正してやる!!!!
≪Sonic drive...≫
「言う事を……」
≪Ignition.≫
「聞けええええぇぇぇぇええええええ!!!!!!!」
一直線に駆けて行く。
超加速であっと言う間に距離を縮めた。
「……お前も、我が内で眠ると良い」
「はあああぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」
渾身の一振りだった。
スピードを載せた一撃。
けれど、それは無情にも張られたベルカのシールドに防がれてしまう。
「……くっ!……ぁ?!」
シールドに弾かれ、体勢を崩す。
刹那、同時に身体から急激に力が抜けてしまった。
良く見れば全身が淡い光に包まれている。
「……あ……ぁ……」
もう、感覚が無い。
慣性に従って宙にフワフワと身体を浮かせている。
その状態でしかいられなかった。
身体に力が入らないのだ。
「フェイトおおおぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
……何処からか聞こえて来る。
私の一番好きな声。
私が一番安心出来る声。
……そう、大好きな人の声。
「……と………や………さ……」
言い切る前に、私の意識は闇の中へと消えたのだった………。
~後書き~
第30話いかがだったでしょうかね?w
気が付けばA’s編も既に30話。
本編では現在10話が終わった辺りでしょうか。
遅い………orz
遅過ぎる………orz
40話位で終わらせたいところですが、このままでは終わらない~wwww
何だか、後書きも愚痴ばかりな気がするなぁ………orz
名も無き世界へようこそ。 ここには主に日常の日記、野球関連の事柄、アニメの感想を載せています。 また、最近二次創作SSも書き始めました。 良かったら読んでいってくださいw 読んだらコメント書いてくれるとメチャ嬉しいですw 宜しくお願いしますwm(_ _)m
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