名も無き世界へようこそ。 ここには主に日常の日記、野球関連の事柄、アニメの感想を載せています。 また、最近二次創作SSも書き始めました。 良かったら読んでいってくださいw 読んだらコメント書いてくれるとメチャ嬉しいですw 宜しくお願いしますwm(_ _)m

2008年5月31日土曜日

<第29話 運命の悪戯>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』
































<第29話 運命の悪戯>

























数時間前。

クロノへ攻撃を加えようとしていた仮面の女をオレは間一髪で拘束することに成功する。

放ったバインドはクロノのストラグル・バインドと同系統。

強化魔法等、自身に掛けるタイプの魔法を無力化する。

その効果で仮面の女も姿が解けかけたその時。

一瞬拘束が途絶えてしまった。

先程ビルへ吹き飛ばされた時のダメージが予想以上に重かった為。

そしてその隙を仮面の女が逃す筈も無く。

バインドを破り、オレに攻撃を仕掛けて来た。

「ダメージがまだ身体に残ってるみたいね。今の拘束の分、きっちり受けて貰おうかし………なっ?!」

オレが手を前に翳し、もう一度バインドを掛けようとした瞬間だった。

仮面の女は白銀のバインドに拘束されたのだ。

「……ビルに激突した程度のダメージでバインドを解かれるなど、騎士にあってはならない事だと俺は思うのだがな」

バインドから発せられている白銀の色、魔力反応。

そしてこの声。

オレの中で思い当たる人物は一人しかいない。

「……悪かったな、和麻。オレが吹き飛ばされる事なんて滅多に無いもんだから。」

「下らない事を話す暇があったら、向こうで戦ってるなのは達をさっさと援護しに行け。……後の処理は俺とクロノでやる。」

和麻はオレを見ず、仮面の女『だった』老人と仮面の男『だった』二人を見ながら話した。

オレは和麻の言葉に対し一言。

「後は任せた」

「…早く行け」

ビルの屋上から今フェイト達が戦っている場所へと飛翔していった……。


















現在、堕天使となってしまったはやてとライトニングフォームで交戦している私。

その隙を見て、ユーノとアルフがバインドを掛ける。

一瞬動きが止まった堕天使だけど、闇の書の力で強引にバインドを無効化、破壊してしまう。

≪Plasma smasher.≫

「ファイヤー!!」

≪Divine buster, extension.≫

「シュート!!」

その一瞬でも砲撃を放つには十分だった。

私達の砲撃は互いに反対方向から放たれたもの。

どちらかを防御しても、もう片方の砲撃は直撃する。

でも、現実は違った。

≪Panzerschild.≫

堕天使はなんと両腕を私たちの方へ向けて、両方にシールド魔法を展開してきた。

その姿はまるで智哉さんを真似しているかのよう。





























フェイト達が戦闘している頃、時空管理局本部では……

「爺さん」

「何だね、和麻?」

「爺さんは、闇の書の全ての機能を知っているか?」

「全ての機能?それはどういう事だね?」

「これはあくまで俺の予想と言うか、目測の範囲でしか無いんだが…………いや、何でも無い、悪いな」

闇の書にはまだ誰にも知られていない機能が存在する。

和麻とクロノは知る事が出来た事実。

二人はそれを知った時、驚愕した。

その事実を確証にするため、グレアムに聞いた和麻。

だがグレアムでも、今まで闇の書に関して調べて続けて来たグレアムでさえも知らない、……いや知る事が出来なかった機能。

しかし、和麻には確証が過去の資料のほんの一部にしか存在していなかったにも関わらず、何故かその事実は現実にあると確信していた。

……いや、正確にはこれから起こるだろうと言う事がそう想像出来た。

出来てしまった。

「ちょっと待った、二人共!」

クロノが部屋から出ようとした時、ロッテが呼び止める。

何なんだ、とでも言いたげな顔でロッテの方に振り向くクロノ。

「何だ?僕はもう現場に行……」

全てを言い切ろうとしたが、空気が許さなかった。

まるで空気が今からロッテが言う事を真剣に聞けと言っているかのように。

ロッテの顔が何時もらしからぬ、とても真剣な顔だったから。

「……この際だから言うけどさ」

「……早くしてくれ」

クロノが急かす。

自身も早急にフェイト達の援護に向かわねばならなかったからだ。

すると、ロッテの口から妙な言葉が紡がれた。

「あのトモヤって人さ……、一体何者?」

「……ロッテ、何が言いたい?」

和麻が口を割る。

無理も無い。

今、しかもこの場で何故彼の話が出てくる?

どうして今、彼の話をする必要がある?

クロノは訳が解らなかった。

それこそ、理解不能と言う言葉が相応しい位に。

和麻もクロノも険しい表情の中、ロッテは話を続ける。

「初めて会った時からさ、クロスケやカズマみたいな人の匂いって言うか………兎に角!二人とは全く違う感じがしたんだ!」

「その意見にはあたしも同意。ロッテと同じで言葉では上手く表せないけど、絶対に何かおかしいって言うのだけは言える。」

「………話が抽象的過ぎる」

クロノが呻く。

ロッテとアリアの言いたい事が上手く掴みきれていない様子。

和麻は腕を組んでずっと黙っているだけ。

「………智哉君に関して、アリアとロッテの話は正直驚いている。私もそんな話は初めて聞いたからね。私も実際に彼と出会い、戦ってみてそんな事は考えもしなかった訳だから。彼は優秀な魔導師……いや、優秀な騎士だとしかね。…けれど、もし仮にロッテやアリアの感じた何かが当たっているとすれば……………彼は、『今戦場で戦っている彼』は人間ではないのかも知れない。………例えば、誰かの使い魔、とかね。」

これ以上考えても何も浮かんで来なさそうな雰囲気になった時。

グレアムが助け舟のような、独り言を呟いた。

静まった部屋の中。

その紡がれた言葉は全員の耳に入るには十分過ぎた。

そして、その場に居合わせた全員の中に燻る『何か』を確信へと導いたその言葉……いや、文章…………

【彼は、『今戦場で戦っている彼』は人間ではないのかも知れない。】

【例えば、誰かの使い魔とかね。】

その言葉にクロノも和麻も、そしてアリアとロッテまでもが否定出来ずにいた。

いや、寧ろそれが一番しっくり来た、来てしまった『答え』だった事に全員が驚いている。

本来であれば、人間が使い魔になる事などあり得ない。

筈なのに…………。


























「……くぅ!」

「……うぅ!」

唸る私達。

「刃を以て、血に染めよ。穿て、ブラッディ・ダガー」

≪Blutiger Dolch.≫

刹那、赤く染まるクナイのような魔力刃が堕天使の身体の周辺にかなりの数が展開される。

そして、放たれた刃はスピードを維持しつつ、曲線を描きながらフェイト達を直撃。

フェイト達はしっかりした防御を取る暇も無く、魔力刃が大爆発し飲み込まれた。

煙の中から何とか姿を現したフェイト達。

だが、堕天使は攻撃の手を緩める筈も無かった。

「……咎人達に、滅びの光を」

右手を目の前に掲げ、目を瞑る。

桜色の魔法陣が展開され、その中心部へ空気中に拡散している魔力が魔法陣の中心へ収束していく。

「まさか………」

「あれは……!」

アルフとユーノは驚愕の表情。

「……星よ集え、……全てを撃ち抜く光となれ」

収束され続ける魔力の塊は止まることを知らない。

「スターライト……ブレイカー?」

「アルフ!ユーノ!」

「うん!」

「あいよ!」

フェイトの声で全員その場から即座に後退。

逃げでもしなければならない程の魔力が既に堕天使の右手へ集まっていた。

しかし、ここ周辺の領域は魔力封鎖され、外まで逃げる事が出来ない。

それでも出来るだけ目一杯後退して、砲撃の効果を少しでも軽減しようと考えたフェイト。

「……貫け、閃光」

「なのはの魔法を使うなんて………!」

「なのはは一度蒐集されかけたところを智哉さんに助けて貰った筈だけど……」

「多分、智哉がリンカーコアを握った際に、吸収されて残った魔力の中の情報がコピーされたんだ!」

「ちょ……フェイトちゃん!こんなに離れなくても……」

「至近距離で喰らったら、防御の上からでも落とされる!回避距離を少しでも取らなきゃ!!」

≪Sir, there are noncombatants on the left at three hundred yards.≫

「「え?!」」

バルディッシュからの突然の知らせ。

それは予期せぬ事態へと繋がる…………。





















バルディッシュがフェイトに結界内に閉じ込められている一般市民を確認し、それを伝えた頃。

横断歩道の中心にポツリと立っている、紫色をした長髪の少女。

「ダメだわ……、誰も居ない。私達以外急に人がいなくなってしまったみたい。」

「…はぁはぁ、こっちにも誰も居ませんでした」

その少女の傍へ駆け寄って来た、濃い茶色い長髪の女性と金髪の少女。

「困ったわね……、辺りは突然暗くなるし、光る球体のような物が宙に浮いて見えてるし……。」

桜色の球体を見上げながら、たなびく風によって耳にかかった髪を掻き分ける女性。

その姿は闇夜でも美しく見えていた。

少なくとも、その場に居た少女二人には。

だが、その姿を目にしても、目の前の現実からは目を背ける事は出来る筈も無く。

「……もう、一体何が起きているの?!」

「う~ん……」

「とりあえず、ここに居ても良い事は無さそうだから、何処かへ行きましょう、なるべく遠くへ。」

「「わかりました」」

女性の言葉に従い、桜色に光る球体とは反対の方向へ走り出したのだった……。



















≪Distance: seventy...≫

≪Sixty...≫

なのはを抱えながら、バルディッシュの示す方向へ飛行中の私。

堕天使が何時スターライト・ブレイカーを放つか判らない以上、急がなければ一般市民を死なせてしまう!

≪Fifty...≫

「なのは、この辺を」

「うん」

なのはを離す。

するとフライアーフィンを使い、上手く着地した。

なのはには地上を任せて、私は上空から探すことに。

一刻を争う状況なんだ。

手数は大いに越したことは無いから。

近くの信号の上に一旦私も着地。

≪Twenty.≫

辺りを見渡す。

が、誰も居ない。

≪Eighteen.≫

「え!?」

(一般市民との距離が縮まった!?)

相棒である、バルディッシュが示したのだ。

この子は嘘はつかない。

だったらどうして!?

いや、今はそんな事を悠長に考えている暇は無いんだ。

なのはも歩き、辺りを探し回り始めたみたいだし。

私も更に注意深く辺りを見渡すことにした。

その時。














「あの!すみません!危ないですから、そこでじっとしててください!!」

角から曲がって走って行く三人の姿を見たなのはは、大声で話し掛けた。

「……え?!」

「今の声って……」

「どうしたの、二人とも?」

なのはを包む煙が晴れ、双方がはっきり視覚出来る状態に。

「……なのは?」

「フェイト……ちゃん?」

「二人とも、知ってるの?」

フェイトとなのは、金髪の少女アリサと紫色をした長髪の少女すずかは互いを見合ったまま固まっていた……。


























≪智哉様≫

(ん?どうしたんだ?)

≪フェイトさんとなのはさんが一般市民と思われる三人を発見したようです≫

(何だって!?今、二人は何をしてる!?)

≪今は特に二人の魔力反応は感じられません。恐らく格好が格好なだけに、下手に魔法を使っては不味いと思っているのかも知れません。≫

オレはふと堕天使の方へ顔を向けた。

すると、そこには堕天使の姿は無く……いや、正確にはいるのだが目の前でチャージしている桜色の魔力球体が大き過ぎて隠れてしまっている状態だった。

(……おいおい、そろそろチャージも完了したんじゃないか!?)

≪智哉様、急ぎましょう≫

(そうだな!)

一刻を争う状況。

オレは速度を更に上げ、フェイトの下へ向かった。























「二人とも、早く何か対策をしないと『あれ』が来るぞ!」

フェイト達の傍へ来たオレ。

しかし、来たは良いが肝心の二人は固まったままだった。

「フェイト!なのは!どうした?」

何故固まる必要があるのか判らなかったオレは、とりあえず道路に着地し、二人の名前を叫ぶ。

「……え?!あ、と、智哉さん!」

「と、智哉さん!来てくれたんですね!」

それで漸くオレに気付いたのか、フェイトもなのはも返事を返して来た。

「相手が相手だからな、それに何よr……」

「……智哉君?」

誰かがオレの名を呼んだ。

それはとてもとても澄んだ声だった。

小さくても透き通った声。

何処までも響き渡るような声。

心に安らぎを与える声。

そして何より懐かしい声。

懐かしくありつつも、何時も耳にしていたような声。

そう。

オレはこの声を聞いたことがある。

……いや、この声を知っている。

違うな。

この声を覚えている。

オレの名が聞こえた方へ、その方向へ振り向いた。

すると……………

「智哉君……なんでしょう?」

目をその柔らかく揺れる濃い茶色の、長く伸ばしたサラサラのストレートヘアに。

目をその何処までも透き通った瑠璃色の瞳に。

そして最後に女性の………『彼女』の姿全体に、その綺麗で美しい姿全体に目をやりながら一言。

「……比呂美か」

比呂美の姿は今置かれている状況すら忘れさせてしまってもおかしくない程に美しかった…………。
























右腕をゆっくりフェイト達の方角へ降ろした堕天使。

そして、ゆっくり口を紡ぐ。

「……スターライト・ブレイカー」

言葉と共に、予め顔の横へ持ってきておいた右腕を桜色の巨大な魔力球体へ勢い良く押し出した。

刹那。

球体は眩い光を発した瞬間、魔力が一瞬にして一点に収束され、そこから桜色をした極太の奔流が放たれた。

そして堕天使はなんと極太の奔流である、スターライト・ブレイカーを放ちつつ、今度は左腕を空高く掲げて無色の魔法陣を展開。

辺りに拡散した魔力を魔法陣の中心にまた集め出した。

























奔流が放たれた時の爆音がオレ達のいる場所まで届いた。

極太のそれは、道路に突き刺さった。

瞬間、大爆発が巻き起こる。

同時にその衝撃波や爆風といった広域へ広がる副産物とでも言おう、それがオレ達に襲い掛かって来た。

「「あぁ……」」

アリサとすずかは身体が震えている。

無理も無いだろう。

『魔法』と言うものを、現実世界で目撃しているのだから。

「フェイト、三人を頼む!なのははフェイト達を覆うようにしてくれ!後はオレがやる!!」

「「はい!」」

「智哉k……」

「死にたくなかったらオレが良いって言うまでその場から動くな!良いな!?」

今のオレの顔は鬼気迫っているに違いない。

比呂美に昔見せてしまった記憶がある。

だが、今の状況は『あの時』とはまた違った感じを与えているだろう。

けれどそんな事を一々気にしている余裕は勿論無い。

フェイトもなのはもカートリッジを二発ずつロードした。

「三人ともそこでじっとして!」

≪Defenser plus.≫

「「うわ!」」

フェイトはすかさず展開したフィールドの目の前に降り立ち、右腕を翳してシールド魔法を展開。

「これが、魔法……」

アリサとすずかはいきなり現れた黄色く光る壁のようなものに驚く。

が、比呂美は流石と言ったところか。

冷静に物を見ている。

「レイジングハート!」

≪Wide area protection.≫

迫り来る、桜色の爆風と全く同じ色の広域フィールドを展開。

「…準備は出来たみたいだな。アイーシア、いくぞ!!」

≪フェニクス・ウォール≫

全員を包み込む巨大な魔法陣を展開。

中心より召喚したフェニクス。

伝説の不死鳥であり、神話の世界のみの話である筈のこの不死鳥を今までで見た者は居ない。

恐らくこの場に居る者が初めてだろう。

勿論、オレの後ろにいる彼女達も全員本物の不死鳥など見たことは無いだろうが。

驚いている所に水を差すようで悪いんだが、現実に戻って貰わねば。

「来るぞ!頼んだぜ!!『ゴッド・フェニックス』!!!!」

そう叫んだ瞬間、フェニクスの身体が黄金の炎に包まれ、オレ達を羽で覆った。

刹那、桜色の爆風が不死鳥と激突した。

激突しているところ意外は、一瞬にして爆風に飲み込まれてしまった。

「く……そっ……!」

フェニクスを召喚し、維持し続けるだけでも相当な魔力を消費する上に、フェニクスの必殺技である筈の『ゴッド・フェニクス』を防御に使っている為、毎秒使う魔力は半端じゃない。

だが、オレの後ろには死んでも逸らす訳にはいかない。

オレにとって、この世に存在し得る全ての物よりも大切な人が今、直ぐ後ろに居るから。

「後ろには絶対に通さない!!!!!!!!!!」

守るべき人がいる。

オレは誓った。

守るべき『もの』を守る、と。

そのために得た、『力』なのだから………。




















~後書き~


第29話でしたw

今回は結構スラスラ進みましたww

何とか1週間以内で更新出来ましたよ~wwww

次もこのくらいで更新出来ると良いな~、と思う今日この頃w

2008年5月27日火曜日

<第28話 過去(むかし)の過ち、現在(いま)の過ち>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』



































<第28話 過去(むかし)の過ち、現在(いま)の過ち>







































(……くそっ!やはりリミッターを解除しなければならなかったのか!?)

そうこうしているうちに、遂にフェイトもバインドで拘束されてしまった。

時既に遅し。

正にその言葉が相応しかった。

「あらあら、貴方の可愛い幼妻が捕まったみたいねぇ」

目の前にいる仮面の女は只ひたすらオレの攻撃を避け続けていた。

しかし、オレが痺れを切らしてフェイトの傍へ駆け寄ろうとするところは見逃さず、その時だけ自分から攻撃を仕掛けて来る。

これ以上質の悪い戦い方をするヤツは見たこと無い。

自分達の目的を果たす為ならば、どんな卑怯な手を使っても、と言う考え方がぴったり当て嵌まる。

この現状を打破するには一段階でもリミッターを解除する必要があった。

しかし、後々起こるであろうアイーシアの「目的」を果たす為に残存魔力、体力は出来る限り多く残しておいた方が良いに決まっている。

フェイトもバインドで拘束された以上、これ以上この女の相手もする必要が無くなった為、フェイトのバインドを解除しに動く。

が、それも阻まれてしまった。

目の前の仮面の女がオレに言う。

「貴方にはまだ私の相手をして貰おうかしら。少なくとも闇の書の覚醒まではね…。」

(スピードも完全に劣っているこの状態ではやはり振り切れない……。くそっ!)

思考回路をフルに回転させる。

だが一向に一つの答えしか導き出せずにいる。

そんな中、フェイトの攻撃を受けた仮面の男がなんとシグナム達ヴォルケンリッターまでもバインドで拘束したのだった。

(何!?一体何をするつもりだ!?)

「……この人数だと、幾ら私でも敵と戦いながらバインドと通信防御の両立はそう長く持たないわ。だから、早くしなさい!!」

「「はっ!!」」

返事をした仮面の男達。

無傷の方が手元に何かを呼び出した。

……なんとそれは、闇の書だった。

「……な!?何時の間に!?」

シャマルが何時の間にか盗られてしまっていたことに驚く。

男は闇の書に向かって腕を伸ばす。

すると闇の書は光り始めた。

「うぁ……う……うあああぁぁぁぁああああ?!」

その瞬間、ヴィータの叫びが辺り一面に木霊する。

木霊した声からは苦しさが窺えた。

それもその筈。

ヴィータの胸の前には何時の間にかリンカーコアが抽出されていたのだ。

オレはその痛みなのだと直ぐに判った。

(……だが、何故ヴィータのリンカーコアを取り出す必要がある!?)

疑問はそこにあった。

その間にもシグナムのリンカーコアもシャマルのリンカーコアも抽出されていく。

(ヴィータだけでなく、シグナムやシャマルまで!?どうする気だ!?)

確かにまだページは全て埋まっていない。

だがヴォルケンリッターは闇の書を守護する者。

彼等のリンカーコアでさえ蒐集出来ると言うのだろうか?

三人のリンカーコアより魔力が闇の書に吸収されていく。

「……最後のページは不要となった守護者自ら差し出す。……これまでも幾度か……そうであった筈だ。」

今までにもそういう事例があったとは。

……シャマルが……シグナムが消えていく。

「………あんなもので誰も救える筈なんて無いのよ」

消えて行くヴォルケンリッターを見ながら仮面の女が何かを呟いた。

「何なんだ!?何なんだよ、テメーらああぁぁぁああ!!!」

怒りを籠めたヴィータの叫びも束の間。

リンカーコアが光り、姿を保てなくなったヴィータは消えていくだけ。

直ぐ傍にいたフェイトやなのはは只黙って消えていくヴォルケンリッターを見つめる事しか出来なかった。

「いぇぇぇええええええやあああぁぁぁああああっっ!!!!」

そこへ凄まじい勢いで飛行してくる最後の守護騎士、ザフィーラ。

「だああああぁぁぁぁああああああああああ!!!!」

仲間を助けようとスピードを殺すこと無く渾身のストレート。

仮面の男は後ろも見ずにバリアを展開する。

ドガアアアアアァァァァァアアアアアアアアン!!!

刹那凄まじい程の音と共に火花が散る。

暫くその状態が続いた。

しかしそれも長くは続かず。

ザフィーラの拳から血が吹き出てしまったのだ。

拳の骨が砕けてしまったのかも知れない。

その拳が仮面の男のバリアの硬度を物語る。

「そうか……もう一匹いたな」

上を見上げる。

すると、ザフィーラの胸からも同じようにリンカーコアが取り出されていた。

「うぅ……ぐっ……ぐ……ぐああああぁぁぁぁああああ!!!」

「奪え……」

≪Sammlung.≫

「でやあああああぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」

砕けた拳を握り締め、蒐集から逃れようと今放てる渾身の一撃を繰り出したザフィーラ。

だがそれも叶わず。

そして、守護騎士達が蒐集されている頃、はやてに異変が起きていた。

「あの二人は……、なのはとフェイトの二人は大丈夫か?」

「四重のバインドにクリスタルケージだ。抜け出すのに数分は掛かる。」

「十分だ。闇の書の主の………目覚めの時だな」

「いや……因縁の……終焉の時だ」

そう言って仮面の男達はなんとフェイトとなのはの姿になったのだった。

そして変装した二人の目の前に魔法陣が現れる。

その中心から現れたのは、他でもないはやてだった。

「何!?お前等は二人の姿で何を………ってまさか!?」

「ウフフ、お察しの通りみたいね。そうなの、彼女の目の前で守護騎士達を消し去ることで、完全に覚醒させるのよ。」

「ふざけるな!!!お前等は………貴様等はそのためだけに…!」

「ふざけてなどいないわ。闇の書は葬らなければならないの……。あの子には悪いけど、闇の書と一緒に消えて貰うわ。」



























「なのは……ちゃん、フェイト……ちゃん?……何なん?……何なんこれ?」

「君は病気なんだよ。『闇の書の呪い』って病気。」

「もうね……治らないんだ」

はやては二人の言葉に戸惑い、そして何より不安を露にしていた。

「闇の書が完成しても、助からない」

「君が救われる事は無いんだ」

二人ははやての不安を更に煽るように話す。

……いや、これはもう強制的に聞かせていると言っても過言では無い。

はやての心はどんどん堕ちていく。

遠くからでも目に見えて。

「……そんなん……ええねん。……ヴィータを離して。……ザフィーラに何したん?」

「この子達ね、もう壊れちゃってるの。私達がこうする前から。」

「とっくの昔に壊された闇の書の機能をまだ使えると思い込んで、無駄な努力を続けてた」

はやての必死な問いすら、只二人は残酷な答えを淡々と述べるだけ。

「『無駄』って何や?!シグナムは?!シャマルは?!」

この場で一体何が起きたのか検討もつかないはやては只問いただす事しか出来ない。

だが、その問いには残酷な回答しか返ってこない事に気付けるような心の余裕など、今のはやてにある筈も無く。

二人の答えが純粋過ぎるはやての心をひたすら冥い波動で染めていくだけだった。

「壊れた機械は役に立たないよね」

「だから、壊しちゃおう」

「いや!ダメ!!止めてぇぇぇええええ!!!!」

「止めて欲しかったら……」

「力尽くで、どうぞ?」

はやてを見ながら不敵に言葉を紡ぐ偽者達。

「何で?!何でやねん?!何でこんなん!!」

「ねぇ、はやてちゃん……」

「運命って残酷なんだよ」

「ダメ!!止めて!!!!止めてぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!」

叫ぶはやて。

その声は辺り一面に響き渡ったことだろう。













「はやて!!!!!」

遂にリミッターを一段解除し、はやての下へ。

はやては泣きながら、しかしオレの方へ顔を向けた。

「……と……とも……や……さん」

(まだだ!!まだ大丈夫だ!!!奴等の思い通りにさせてたまるか!!!!)

「気をしっかり保つんだ!!まだ方法はある!!!!はやてが心を閉ざさなければま…」

最後まで言い切ろうとした瞬間だった。

「貴方はもう用済みよ」

背中に凄まじい衝撃が走った。

何時ものオレであれば、リミッターを解除している状態であれば後ろをとられる事など今まで片手で数えられる程しか無かった。

それ以外にあるとすれば今回のようなケース。

自身の周囲の気配を疎かにしなければならない様な事態が稀にある。

そう。

はやてに気を集中していたため、後ろから来る仮面の女の一撃を回避は愚か喰らうまで気付く事も叶わなかったのだ。

背中に受けた一撃は凄まじく、オレはそのまま慣性に任せて鉄柵を突き破り、隣のビルに思いっ切り激突。

その衝撃でビルが崩れ落ちてしまった。

「………そ……んな……う…そ………と、とも……や……さ……」

瞬間。

はやてを中心に、白色のベルカ式魔法陣が展開された。

そしてはやての目の前に闇の書が突然現れる。

≪Guten Morgen, Meister.≫

闇の書の音声と共に、展開されていた白い魔法陣の色が冥い波動に染まっていく。

「……うぅ……ううう……うううぅぅぅううううああああああああぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!!!!」

叫びが響き渡り、天に向かって魔法陣から禍々しい波動が突き抜ける。

はやての身体はそれに飲まれてしまった。

「あらあら、結果的には覚醒の最後の引き金になったみたいねぇ」

仮面の女は不敵に笑う。

「……我は闇の書の主也。この手に力を。……封印、開放。」

≪Freilassung.≫

刹那。

子供だった筈のはやての身体が見る見るうちに大人の身体へと変化していく。

茶色いショートヘアだった髪は銀髪のロングヘアに。

体中に赤い線。

そして、背中からは2対の黒い羽。

まるでその姿は堕天使そのもの。

拘束から漸く逃れた本物のフェイトとなのはは目の前で起きている現状に何も出来ず、只じっと見ているだけだった。


















「……また、全てが終わってしまった。一体幾度こんな悲しみを繰り返せば良いのだろう?」

「はやてちゃん!」

「はやて……」

「我は闇の書。……我が力の全ては」

そう言ってはやて……いや、最早はやてではない、堕天使が右腕を高く上げる。

≪Diabolic emission.≫

闇の書が光る。

高く上げられた手に、魔力が収束していく。

そしてそれは一瞬にして巨大な球体へ。

「……主の願いを、そのままに」





























「対象区域の通信妨害、消滅!」

「映像、来ます!!」

リンディはその映像を見る。

「……!クロノは?」

「既に、現地へ飛んでいます」

その現状を見つめるリンディ。























「結界は無事張れました」

「デュランダルの準備は?」

「出来ています」

仮面の三人も動き出そうとしていた。


















「…デアボリック・エミッション」

そう堕天使が口ずさむと、掲げていた魔力の球体が急速に小さくなっていく。

「……!」

「空間攻撃!」

「闇に染まれ……」

瞬間。

完全に何処かへ消えた魔力が大爆発。

その爆風……いや、その放出された魔力は、徐々に全てを飲み込んでいく。

≪Round shield.≫

その空間攻撃から身を守るため、なのはは防御魔法を発動させる。

今のフェイトでは防御が無いに等しいため、少しでも掠れば大ダメージは避けられない。

なのははフェイトを庇うように展開したシールドを広げる。

























「保てますかね、あの二人………」

「責めて、暴走開始の瞬間までは持って欲しいわねぇ」

仮面の三人は遠く離れたビルの屋上からフェイトとなのはの様子を窺っていた。

だがその高みの見物も、直ぐ終わる事に気付く訳も無く。

「「「………!?」」」

辺りが光出す。

三人は何が起こっているのか分からず、戸惑っている。

そして………

「ぐぁ?!」

「ぐぅ!」

「なっ!?」

仮面の三人を一瞬にして拘束した。

足掻こうとするが、そのバインドは特別硬かった。

「……ストラグル・バインド」

「「…な!?」」

仮面の男二人は、声の主の方へ顔を上げた。

声の主、クロノ・ハラオウンは上空より現れる。

「相手を拘束しつつ、強化魔法を無効化する!…余り使いどころの無い魔法だけれど、こういう時には役に立つ。」

右手で握るデバイスを回転させながら床に足を下ろす。

それはまるで罪人を裁くために現れた死神のようだった。

「変身魔法も強制的に解除するからね」

「そうみたいね。でも貴方を倒せばその問題も無くなるわよ?」

「…な」

クロノが後ろに振り向こうとした瞬間。

拳が顔面に飛んで来た。

飛んで来た。

………のだが、文字通り目と鼻の先で『それ』は止まっていた。

それも黒い……いや、この色は最早黒以上に黒い色、漆黒とでも言うべき色をしたバインドによって、止められている。

そのバインドをクロノは辿る。

辿った先、仮面の女は全身漆黒のバインドで覆われているかの如く、雁字搦めにされているではないか。

「……さぁ…て、……そろそろ…姿を見せて……貰おうか」

何処からともなく声がする。

それと同時に。

「「「ぐああああぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」」」

三人の苦しむ叫び声が木霊した。

「……クロノ!このぉ!!」

「こんな魔法……教えてなかったんだがな」

「一人でも精進しろと教えたのは君達だろ……アリア、ロッテ?」

「あんた等の思い描くストーリーも残念ながらここまでだ」

「………」


























「なのは、ごめん……。ありがとう、大丈夫?」

右手を痛そうにしているなのは。

私には何も出来なかった。

なのはに守って貰うしかなかった。

だから、せめて労いの言葉だけでもと思った。

「…うん、大丈夫」

強がってみせるなのは。

けれどその右手は押さえたまま。

それでもなのはが大丈夫と言う限り、私が見ても酷いと思わない限り、今までそのまま行動して来た。

だから私は今やらなければならない事を口にする。

「あの子、広域攻撃型だね。……避けるのは難しいかな?バルディッシュ。」

≪Yes, sir. Barrier jacket, Lightning form.≫

ソニックフォームは防御を極限まで削ぎ落とした、今の私の最速形態。

最速である代償に、攻撃を掠るだけで多大なダメージを受けてしまう諸刃の力。

幾らスピードを上げても回避出来なければ意味が無い。

それに、相手が広域範囲を得意としているならば尚更勝ち目は薄い。

バルディッシュも私の考えに賛同してくれた様子。

元のフォームに戻した。

「はい」

なのはにレイジングハートを手渡す。

「はやてちゃん………」

「なのは!」

「フェイト!」

後方から声。

それも二人。

両方とも良く聞く声。

「ユーノ君!アルフさん!」

その時だった。

凄まじい波動が私達を包み込んでいく。

「何?!」

「前と同じ、閉じ込める結界だ!」

「やっぱり……私達を狙ってるんだ」

「今、クロノが解決法を探してる。和麻さん達援護組も向かっているんだけど、まだ時間が……。」

「それまで、私達で何とかするしかないか?」

「…うん」

頷く私達。

けれど、なのはだけはずっと別な方向を向いていた。

それは闇の書に取り込まれてしまったはやてがいる方向。

「……なのは」

「……!…大丈夫!」

その顔はとても寂しそうだった。

けれどそれも一瞬にして真剣な顔付きに。

なのははやっぱり心が強いんだ。

改めてそう思った。



















「スレイプニール、羽ばたいて」

≪Sleipnir.≫

闇の書が光る。

そして、堕天使の背中に生えていた羽が、一層大きくなる。

大きくなった羽で闇に染まった空へと飛翔するのだった。































時空管理局本部。

そのとある部屋に『彼等』は居た。

「リーゼ達の行動を指示し、そして自身も二人の行動に生涯となる、或いはなり得るものを排除していたのは………貴方ですね、グレアム提督?」

「違う、クロノ!」

「あたし達の独断だ!父様には関係無い!!」

「そんな言葉、子供にも通用せんぞ?」

「和麻、あんた!!」

「ロッテ、アリア。良いんだよ。クロノや和麻はもう、粗方の事は既に掴んでいる。違うかい?」

「流石は爺さんだな、話が早い」

「11年前の闇の書事件以降……、提督は独自に闇の書の転生先を探していましたね?」

「そして、発見した。闇の書の在処と、現在の主である八神はやてを。」

「…しかし、完成前の闇の書と主を抑えても……余り意味が無い。主を捕らえようと、闇の書を破壊しようと、直ぐに転生してしまうから。だから、監視をしながら闇の書の完成を待った。」

「そして見つけたんだな?闇の書の永久封印の方法を。」

暫しの沈黙。

その後、ゆっくり口を割るグレアム。

「……両親に死なれ、身体を悪くしていたあの子を見て、心は痛んだ。………だが、運命だとも思った。孤独な子であれば、それだけ悲しむ人は少なくなる。」

「あの子の父の友人を語って生活の援助をしていたのも……、提督ですね?」

そう言ってクロノは写真をグレアムの前に出した。

「永遠の眠りに付く前くらいせめて……、幸せにしてやりたかった……。……偽善だな。」

自分を責めるグレアム。

だが、和麻はそんな事は気にせず話す。

「封印の方法は……、闇の書を主ごと凍結させて、次元の狭間か氷結世界に閉じ込める。…そんなところだろ?」

「そう……。それならば、闇の書の転生機能は働かない。」

和麻の言葉にグレアムは只ゆっくりと頷き、そう付け加えた。

「これまでの闇の書の主だって、アルカンシェルで蒸発させたりしてるんだ!それと何にも変わんない!」

「クロノ、和麻!今からでも遅くない、あたし達を解放して!凍結がかけられるのは、暴走が始まる瞬間の数分だけなんだ!」

アリアもロッテも興奮している。

何処までも冷めた反応しか示さない和麻とクロノに、苛立ちを募らせているから。

過去に悲惨な思い出がある彼女達だから、仕方ない事ではあるのかも知れない。

「その時点ではまだ闇の書の主は……、永久凍結をされるような犯罪者じゃない。…違法だ。」

「その所為で!……その決まりの所為で悲劇が繰り返されてるんだ。……クライド君だって、あんたの父さんだってそれで……!」

ロッテの怒りは爆発寸前。

「ロッテ」

だが、その一言で……他でもない主人である、グレアムの声でロッテは止まる。

が、同時に俯いてしまった。

クロノはその場を立ち上がり、部屋から立ち去ろうとする。

「法以外にも提督のプランには問題があります。まず、凍結の解除はそれ程難しく無い筈です。何処に隠そうと、どんなに守ろうと……何時かは誰かが手にして使おうとする。怒りや悲しみ……、欲望や切望……、その願いが導いてしまう。……封じられた力へと。……現場が心配なので……すみません、一旦失礼します。」

独り言のように話すだけ話してからグレアムに一礼して、今度こそ部屋を出ようとするクロノ。

そのクロノをグレアムが呼び止める。

振り向くクロノにグレアムが何かを手渡した。

それは……………

一枚のカード。

「私達にもうチャンスは無い。持っていても役には立たないからね。どう使うかは君に任せる。……氷結の杖、『デュランダル』だ。」

クロノはグレアムを見上げる。

瞳と瞳が交錯する。

自分を見るその瞳は、まるで……いや、確実に自分を試している瞳だった………。
































~後書き~


第28話の終わりですw

また1週間過ぎてしまった……orz

「内容が本編と殆ど変わってないんじゃね?」

とか思った方。

仕様です。

………

……



orz

2008年5月18日日曜日

<第27話 動き始めた運命>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』






























<第27話 動き始めた運命>



























四者それぞれの声を掛けて来る。

その中でもなのはとフェイトの二人は声の質が違った。

オレとシグナムは少々睨みを利かす。

シャマルはどうしようと言った困惑の表情。

はやては入って来た四人と、シグナムとシャマル、それに何時も笑顔でいたオレの顔を交互に見ながら少々混乱している様子。

そこへ絶妙なタイミングでアリサの一言が。

「あ、すみません。お邪魔でした?」

「…あ、いえ。」

「…いらっしゃい、皆さん」

その言葉でシグナムは冷静さを取り戻したようだ。

シャマルも必死に冷静に努めようとしている。

「なんだぁ、良かったぁ」

ホッと胸を撫で下ろし、心底安心した様子のすずか。

シャマルやシグナムの表情を見たからだろう。

アリサやすずかを笑顔から申し訳無さそうな顔にさせてしまった二人は慌てたに違いない。

はやての友達だから。

オレはというと、二人よりワザと少し遅らせて挨拶をした。

「やあ、『二人とも』。久々だね、元気にしてたかい?」

「「はい、元気です!」」

「うんうん、元気で何よりだ」

アリサとすずかは元気良く返事を返してくれる。

オレが挨拶を遅れてした事など気にも留めていないのは、その表情から判る。

一方のフェイトやなのははというと…………

後ろの方で固まっていた。

というよりは、ボーッとしている。

「ところで、今日はみんなどないしたん?」

はやてが突然の来訪の訳を聞き出そうとする。

すると、すずかとアリサは互いに満面の笑みを浮かべたではないか。

その言葉待ってました、とでも言いたげに。

いや、既に顔に書いてあると言っても過言では無いか。

二人は息を合わせ、ジャンバーで隠し持っていたプレゼントの箱を披露した。

相手は勿論目の前にいるはやて。

「「サプライズプレゼント!」」

先程の笑みよりも2割り増しの笑顔でそう言った。

「今日はイブだから、はやてちゃんにクリスマスプレゼント!皆で選んで来たんだよ。」

「わぁ~!ほんまか!?ありがとうなぁ!」

「後で開けて見てね」

すずかとアリサがそう付け加えて。

「うん!」

はやてはもの凄く嬉しそう。

オレがあげた時より嬉しさが5割り増し位だった気がする。

だからオレはちょっと意地悪な事を言ってみた。

「そうか、はやてはオレのプレゼントよりすずか達から貰った方が嬉しいのか。……そうだよな、こんな小父さんから貰うより友達から貰う方が嬉しいに決まってるよな。」

窓の外を見つめながら折角喜んで貰おうと思ったのに、という雰囲気を出しつつ。

そんな事をすれば、心が素直で純粋なはやてはオレを気遣う訳で。

「え!?あ、ち…違うんよ?!ととと、智哉さんから貰えたのだって勿論同じ位嬉しいんよ!?だ、だから、えと……その……」

はやての慌てっぷりは相当だった。

オレの予想をある意味超えていたのだから。

その凄まじい慌てっぷりに思わず笑いが堪えられなくなり、吹き出してしまった。

それはもう豪快に。

それを見たはやては一瞬ボーッとしてたが、どうやらオレがからかったことが分かったようで。

「と、智哉さ~ん!?今までのは全部演技だったんやなぁ~!?」

「アハハハハハ……ゴメンゴメン。いやぁ~、オレがプレゼントあげた時とすずか達があげた時の喜びようが全然違ったからさ。」

そして、『オレ達は』笑い合った。

その時のヴィータはなのはを睨んでいた。

あくまではやての傍は離れず。

ヴィータに睨まれ続けているなのはは、ここに自分が居るべきではないのかもと思っているような顔に。

「なのはちゃん、フェイトちゃん……どないしたん?」

そこへ、なのはの表情が沈んでいくのを見たはやては、二人に声を掛ける。

「あ…ううん、なんでも」

「ちょっとご挨拶を……ですよね?」

なのはは歯切れが悪いながらも大丈夫と言い、苦笑い。

フェイトはなのはをフォローするように言いつつ、オレ達に話を振って来た。

「はい……」

「あ~、皆…コート預かるわ」

「「は~い!」」

シグナムは返事をするも、表情が冴えない。

シャマルも居心地が悪くなったのか、全員のコートを部屋のハンガーに掛けに行った。

ここでもオレは無言だった。

まるで二人の言葉を無視するかのように。

別段、二人を嫌っている訳ではないが、傍から見ればそのように見えてもおかしくは無いだろう。

気付けばシグナムもシャマルの手伝いをしていた。

そしてフェイトはクローゼットの近くでシグナムと何やら会話をしている。

周りに聞こえないよう小声で。

「…念話が使えない。通信妨害を?」

「シャマルはバックアップのエキスパートだからな。この程度の距離など造作も無い。」

一方のなのはは、相変わらずヴィータに睨まれ続けていた。

それもガン見。

流石のなのはも気疲れを起こしているようだ。

「あの……えと……そんなに睨まないで……」

「睨んでねーです!こういう目つきなんです!」

明らかに威嚇の言葉。

少しはヴィータも成長しろよ、と突っ込みを入れたかったが、睨みの矛先が向かって来るのは勘弁だったので、それはしない。

なのはの気がどんどん沈んでいくのが判る。

その時だ。

「ヴィータ!嘘はあかん!悪い子はこーやで!」

そう言ってはやてはヴィータの鼻を摘み、お説教。

鼻を摘まれ、うーうー唸る事しか出来ずにいるヴィータ。

そんな二人をフェイトはクローゼットの傍から見ていた。

そして、一言。

あくまで丁寧に。

「…お見舞い…しても、良いですか?」

「ああ…」

視線を落としつつも肯定の返事をするシグナム。

オレは終始最低限の言葉しか喋らずにいた………。
























夜。

「「さようなら~!」」

すずかとアリサは手を大きく振って別れの挨拶。

シャマルも笑顔で手を振りながら『二人を』見送る。

その頃。

「どないしたん、ヴィータ?」

「何でも……ないよ」

はやての問いに、短く一言だけ返し、はやてにしがみ付く。

悲しそうにしているヴィータの頭を撫でるはやて。

「今夜は雪になるかな………」

窓の外を見ながら呟いたのだった………。


















「はやてちゃんが、闇の書の主…」

「悲願は後僅かで叶う」

「邪魔をするなら……、はやてちゃんのお友達でも………!」

「待って!ちょっと待って!話を聞いてください!ダメなんです、闇の書が完成したらはやてちゃんは……!」

最後まで言い切る前に、なのはは直感で後ろに身体を向ける。

が、一手ヴィータの方が早かった。

「きゃああああぁぁぁぁぁああああ!!」

防御が一瞬間に合わなかった為、勢い良く反対側の鉄柵に吹き飛ばされてしまったなのは。

「なのは!」

「うおおおおぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

野生の獣のような叫び声でフェイトに切り掛かるシグナム。

しかし、フェイトは寸前でその攻撃を回避した。

回避した事でデバイスが地面に。

地面は割れていた。

その衝撃を、威力を物語っている。

「管理局に……我等が主の事を伝えられては……困るんだ」

「……私の通信妨害範囲から逃がすわけにはいかない!」

シグナムは最早冷静さなど失っていた。

自分達の目指すべきゴールを目の前にして、『敵』が立ち塞がっているのだから。

倒さなければ。

倒さなければ辿り着かない。

辿り着けない。

命を捨ててでも辿り着かなければならないのだ。

全てははやてとの幸せの為に。

普段は温厚なシャマルも今日だけは違った。

ゴールへ辿り着く為ならば、どんな事でもするという目をしている。

そう。

どんな事でも。

「ヴィータ…ちゃん…」

なのはの目の前に来て、騎士甲冑に身を包むヴィータ。

その顔は、表情はシグナム達と同じ。

「邪魔……すんなよ…。もう、あとちょっとで助けられるんだ!はやては元気になって……あたし達のところへ帰って来るんだ!!」

目から涙が溢れて来ている。

「……必死に頑張って来たんだ!」

握るデバイスが震える。

「もうあとちょっとなんだから……」

涙が頬を伝う。

「邪魔すんなあああああぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

声と同時にデバイスを思いっ切り振り上げた。

カートリッジをロードして。

力に任せて振り下ろすヴィータ。

瞬間、地面に突き刺さり大爆発が起こった。

その影響で炎が立ち込める。

はぁはぁ、と肩で息をしているヴィータ。

巻き上がる炎の中からツカツカと音を立てて歩いて出てきたなのは。

その姿を見たヴィータは瞳に涙を溜めながら、こう口ずさむ。

「悪魔め……」

「悪魔で……良いよ」

「悪魔らしいやり方で、話を聞いて貰うから!」

それが、その言葉が後々永遠に管理局で伝えられて行く事になるのだが、今は置いておこう。

なのははレイジングハートを待機状態からアクセルモードに切り替え、遂に戦闘態勢に入る。










「シャマル、お前は離れて通信妨害に集中していろ」

「…うん」

「…闇の書は、悪意ある改変を受けて壊れてしまっている。今の状態で完成させたら、はやては……」

「我々はある意味で闇の書の一部だ」

そう言って、上空を見上げるシグナム。










上空で火花を散らせるなのはとヴィータ。

「だから当たり前だ!あたし達が一番闇の書の事を知ってんだ!!」

「じゃあ…、どうして!」

≪Accel shooter.≫

「どうして『闇の書』なんて呼ぶの?!」

「え…?」

「何で本当の名前で呼ばないの?」

「ホントの……名前……?」

ヴィータはなのはの言葉によって、自分の中で何かがつっかえた。

以前もそうだった。

だが、今回はそれとは比にならなかった。

どうして?

それは『闇の書』と言う名前が本当の名前だから。

……本当の。

………本当………の………?

ヴィータは自らの意思で、絶対の自信を以って『闇の書』こそが本当の名前だ!

………とは言えなかった。

では何故言えなかったのだろう?

そう思考回路がグルグルループする。









≪Barrier jacket. Sonic form.≫

バルディッシュから発せられた音声によって、私は何処にでもいる小学生から魔導師へと姿を変えた。

それも今までの姿とは少し違う。

今回は最初から全力でぶつかろうと決めていた。

相手はヴォルケンリッターを束ねるシグナムだから。

今までの繰り返した戦闘の中でシグナムに勝てているのは素早さだけ。

攻撃力、防御力、反応速度、対応能力、どれを比べても私の方が劣っているのは目に見えていた。

私がシグナム相手に勝てるとすれば、素早さを生かした攻撃を何度も加える様な方法しかない。

只でさえなのはよりも格段に防御が低い私のバリアジャケット。

半端な防御力を備えて長所を生かせ切れないのであれば、それを捨ててしまえと思った。

そう、今私が纏ったバリアジャケットは両手に篭手、そして極限の薄さを実現したダイビングスーツのようなものだけだ。

防御力はほぼゼロに等しい。

その代償として私は最速を手にした。

手にした最速でシグナムを翻弄し、スピードの乗った攻撃を与える。

防御など考える必要はもう無い。

要は攻撃を受けなければ良いのだから。

全てを避け続け、こちらの攻撃を全て当てられれば勝てる!

≪Haken.≫

カートリッジを一発ロードして、シグナムと対峙する。

「薄い装甲を更に薄くしたか」

「その分、早く動けます」

「緩い攻撃でも、当たれば死ぬぞ。正気か、テスタロッサ?」

「貴方に勝つ為です。強い貴方に立ち向かうには、これしかないと思ったから!」

「……智哉が悲しむ事は気にならないのか?」

「…貴方に勝てば智哉さんは悲しみませんから」

「………死んではしまってからでは遅いんだぞ?」

「…それでも、これだけは譲れません。……それに、智哉さんも私の立場だったらこうするでしょうから。」

「………」

何かを思っているのだろうか。

シグナムは俯いてしまった。

上を向いた。

それと同時にシグナムを中心に、周りから紫色の、シグナムの放つ炎である『紫炎』が立ち込めた。

炎はシグナムを包み、ジャケットとなり、篭手となり、鎧となって装甲を形作る。

「……こんな出会いをしていなければ、……私とお前は一体どれ程の友になれただろうか?」

「まだ……間に合います!」

「……智哉とも、あんな形でなければもっと自然に友となれた筈なんだがな。……お前も智哉も私も、この様な形でしか、戦いの中でしか出会わせてくれないように運命付けられているのかも知れん。……仕方の無いのかもな、我々は運命には逆らえないのだから。」

「運命は絶対じゃない!変えられる!変えることが出来るんです!だから、シグナム……!」

必死で叫んだ。

智哉さんに教えられたことを。

私を救ってくれた言葉を。

今度は私がシグナムの為に。

…だって!

まだ、やり直すことが出来るから!

「止まれ……」

シグナムの顔から涙が零れ落ちた。

もう、止める事は出来ないのだろう。

デバイスを握り締め、ベルカの魔法陣を展開した。

「我等守護騎士、主の笑顔の為ならば騎士の誇りさえ捨てると決めた。……もう、止まれんのだ!」

目に涙を溜めて言い放った。

溜まった涙は頬を伝って零れ落ちていた。

「…止めます!私と、バルディッシュが!」

≪Yes, sir.≫

止めるんだ。

私が!

魔法陣を展開させて決意した。












「本当の名前が、あったでしょ?」

「闇の書の……本当の名前……」

悩むヴィータ。

頭で色々考える。

何度も考えた。

だが、自分の記憶からは出てこなかった。

その時。

なのはとヴィータの間に突然現れた青い輪。

一つ、二つ、三つと現れる。

そしてなのはは気付く。

が、遅かった。

三つの青い魔力輪はなのはを拘束した。

「バ、バインド?!また?!」

ヴィータは驚く。

がしかし、目の前で起きた事が理解出来ずにいた。











「なのは!」

バインドの気配に気付いた私。

シグナムと交戦中だったが、一旦退いて後ろに下がる。

≪Plasma lancer.≫

一つを目の前に出す。

辺りにはプラズマランサーから放たれるバチバチという音が響き渡る。

シグナムは手を出して来ない。

私は心の中でシグナムに感謝しつつ、周りの気配を探った。

そして……

「……っ!そこっ!!」

プラズマランサーを放った。

見た目は何も無い空間。

けれど、プラズマランサーは見事に捉えた。

一瞬。

本当に一瞬だが、空間が歪んだ。

その隙に私は最高速で攻撃を仕掛けに行った。

「はああああぁぁぁぁぁあああああ!!!」

歪んだ空間が見えたところへ三連撃を放ち、少し下がる。

攻撃を受けた『空間』はまた歪み始めた。

今度は一瞬ではなかった。

歪んだ空間は消え、その代わりに仮面の男が現れたのだ。

身体をふらつかせる。

かなりのダメージを負わせられた様子。

「……くっ!」

呻く仮面の男。

「この間みたいには……いかない!!」

カートリッジを一発ロードさせ、更に追撃を仕掛けようとした。

まさにその瞬間だった。

横からもう一人の仮面の男の攻撃を受ける。

………いや、『受ける筈』だった。

何せ、一瞬たりとも私の視界には映っていなかったのだから。

けれど私は結果的に攻撃を受ける事は無かった。

何故だと思う?

答えは、真実は何時も一つ。

「………全く。ホントオレのお嫁さんは命知らずだね…。只でさえ薄い仕様なのに、ボディラインが判る位まで薄くするなんて事、普通はしないと思うんだけどな。」

私は直ぐ近く……自分の隣に立つ、『その人』へゆっくり視線を向ける。

腕を伸ばした先にはシールドが展開されている。

私も良く知る、とても硬い強固な防御。

その強固な防御に何度も助けられた。

視線を上にゆっくり上げていく。

そして、目が合った。

「…智哉…さん」

ゆっくり名前を口にした。

大好きな人の名前を噛み締めるように。

大好きな人の名前を大事にするように。

「ん?」

微笑みながら私を見つめている智哉さん。

私の頭を優しく撫でてくれている智哉さん。

全てが何時も通りだった。

………違う。

全て何時も通りにしてくれているんだ。

それが……それだけで凄く嬉しかった。






















フェイトへ攻撃を加える筈だった仮面の男は、オレに防がれ仲間の方へ後退していた。

「さてさて、これからどうしてやろうか」

「……貴様はあくまで我々の邪魔をするようだな」

「お前達の目的が未だに見えて来ないからな。闇の書を完成させてどうしたいのか、それが明確になるまでは少なくとも妨害させて貰う!」

フェイトに防御強化魔法を掛けつつ、二人に向かって攻撃を仕掛けに行った。

「数多に漂う神秘の水よ!押し潰せ!神水衝迅!!」

もの凄い水圧をデバイスに纏わせ、神速の突きを繰り出した。

繰り出した事によって、纏っていた水が水流となって勢い良く放出される。

それはそのまま衝突した。

ダアアアアァァァァァアアアアアン!!!!!

その音は最早水の音ではない。

重い何かが勢いに任せて、硬い何かにそのまま激突した時に起こるような音と言っても過言ではなかった。

それ程の水圧を誇る水流が放出されたのだ。

普通の人間であれば、形成する全ての物質が押し潰されてしまい、一瞬で命を落とすだけでなく原型すら留めていないだろう。

無論、防御を誤れば魔導師でさえ一撃で葬る事も可能な威力だ。

今の一撃で倒したか?

……いや、恐らく倒せてはいない。

オレはそう思えた。

水流と化した水は勢いを無くし、力無く地面へ吸い込まれていった。

そして……………

その場には『ヤツ』がいた。


















「また会えて嬉しいよ。今度こそ、本当のリベンジが叶いそうだ。」

「………ボーッとしてないで、さっさと準備をしなさい」

「「はい」」

仮面の女の指示に一言返事をした後、後ろの二人は別行動に移った。

「お望み通り、貴方の相手をしてあげる。光栄に思いなさい。」

「そうか、それは嬉しい限りだ。だが、お前達の思い通りになるとは思わない方が良いぞ?」

「あら、それだったら心配御無用よ。だって貴方は私と戦う事で精一杯だろうから。」

「だったらお前のその予測を超えて戦えば良いだけだ!」

一瞬で相手の懐に入り込み、神速の一振り。

だがそれも寸前で回避されてしまった。

「ほ~らほら、そんな攻撃じゃ当たらないわよ?私の予測を超えるんじゃなかったのかしら?」

仮面の下から人を嘲るような笑い声。

相手も相当な身体能力を持っているようだ。

今の一振りもこの状態で繰り出せる最速の一撃に限り無く近かったのだが。

それでも寸前で避けられたのだ。

オレと同等かそれ以上のスピードは持っていると見て間違い無い。

それに、今の避け方はオレの出方を窺った上での回避行動にも見えた。

試されたのだろう。

(やってくれるな……!)

仮面の女と対等に戦うためには少なくとも一段階はリミッターを解除する必要がある。

だが、今ここで解除して後々起こるであろう『あれ』まで体力が持つかどうか。

それが不安定材料だった。

(……どうする?)

刻一刻と迫りつつある運命にオレは頭を悩ませるのだった………。





















~後書き~

第27話終わりです~w

区切れが中々見つからなくてですね、こんなところで終わってしまいましたwwww

このまま一気に行こうかとも思ったのですがねw

早く続きを見せろよ!

と言う気持ちに出来るだけ早く答えたいと思っておりますww

2008年5月14日水曜日

<第26話 災厄の前触れ>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』


















<第26話 災厄の前触れ>




















「フェイト、しっかり学校の道具は持ったかい?」

「もう、智哉さんったら酷いです。子ども扱いするんですからぁ。」

ぷぅっと頬を膨らますフェイト。

オレはそんな可愛い仕草をするフェイトを見て笑ってしまった。

すると、お約束のようにフェイトは更に怒る。

「あ、笑ったぁ!……智哉さんなんか、もう知りませんからぁ。」

プイッとソッポを向くフェイト。

朝っぱらからこんな感じの会話をしている。

傍から見れば、とても仲の良い兄妹のように見えるかも知れないが、勘違いしないで欲しい。

オレ達は立派な恋人関係だ。

いや、もうある意味新婚ホヤホヤの夫婦と言っても過言では無い。

昨日だって一緒に布団に入って寝たし。

ま、それは兎も角。

「さてさて。学校までお送り致しますので、お乗り下さい、姫。」

何処ぞの執事のような振る舞いで、姫でもあり、オレの恋人でもあり、オレの未来の妻であるフェイトを車に乗るよう促す。

フェイトは顔を紅くして答える。

「……もう、私はお姫様なんかじゃないですって言ってるじゃないですかぁ」

軽く溜め息を吐いた。

それから車に乗って学校に着くまで、何時もは何だかんだと話し掛けて来る筈なのだが、今日に限っては口数が極端に少なかったフェイトだった。

まあ、学校の中に入れば嫌でもなのはに会う事になるのだから。

教室も同じ。

席も近い。

そう、一旦学校に足を踏み入れれば、逃げる事など出来なくなってしまう。

早退等の裏技を使えば遭わずに済ます事も出来なくは無い。

が、如何せん早退等に出来るような理由がフェイトには一つも無いのだ。

体調は健康そのもの。

ましてや、誰か親戚の者が無くなった訳でもないのだから。

「フェイト」

車から降りようとしたフェイトを呼び止める。

「……ふぇ?」

やはり何処か心ここにあらず、な感じを受けた。

だから、オレは普段通りにフェイトを送り出すことにした。

出来るだけ、精一杯の笑顔で。

悔しいが、今のオレにはそれしか出来なかったから……。

「いってらっしゃい」

「……はい!行って来ます!」

一瞬どう返事を返そうか迷ったのだろう。

だがそれも直ぐに無くなり、フェイトの顔に笑顔が戻った。

そして、元気良く車から降りて学校へ。

オレはフェイトが玄関口に入って行くまでずっと見守っていた。

良かった。

先程の笑顔も、無理矢理搾り出した空元気かも知れない。

だが、それでも。

全く笑顔が見れないよりは遥かに良かったとオレは思う。

それから、暫くの間フェイトの孤独な戦いが始まるのだった………。






















教室に入って。

私より先に来ていたクラスの皆が私に声を掛けて来る。

おはようとかオースって挨拶してくれる皆。

体調とか大丈夫?って心配そうな顔で声を掛けてくれる女の子達。

困った事があったり、何か悩み事があったら言えよって私を気遣ってくれる男子達。

少し学校を休んだだけでこんなにも心配してくれるクラスの皆。

最初は少し戸惑ったけど、それでも私は凄く嬉しかった。

自然と笑顔になっていたから。

智哉さんの車から降りるまでは不安だらけだったのに。

それもこれも、智哉さんが笑顔で送り出してくれたからだって思う。

私を迎えてくれたクラスの皆の間を通る。

「フェイトちゃん、おはよう!」

「おはよう、フェイト」

と、挨拶をしてくれたアリサとすずか。

そして…………

「……おはよう、フェイト…ちゃん」

なのはがいた。

ぎこちない挨拶だった。

声を聞いて顔を見て、改めて身体が緊張したのが判った。

それまでは、なのはを見るまでは何とも無かったのに。

けれど、なのはだってぎこちないなりにも挨拶をしてくれたんだ。

私も返さないとアリサやすずかに変に思われてしまう。

それは絶対に避けなければならなかった。

だから……

「…お、おはようなのは。」

私も人のことは言えなかった。

ぎこちない挨拶に笑顔。

決して親友に向ける筈のものでは無かったのだから。

それでも、アリサとすずかは少し不思議な顔をするだけで、それ程気に留めたようには見えなかったから、一先ずは安心。

残る問題は、なのはへの対応だけ。

うん、後はそれだけ。

それだけなんだ。

智哉さんからも勇気を貰ったんだ。

大丈夫、大丈夫、大丈……

「……ト!……イト!フェイトったら!」

「え?!な、何?」

「……今の話、聞いてた?」

アリサのジト目が突き刺さる。

う……

自分の世界に浸っていたから全く聞いていなかった。

それがアリサにバレてしまったかも。

アリサってかなりそういう事に鋭いから。

「……ごめんアリサ、全然聞いてなかった」

「…はぁ。だと思ったわ。それじゃもう一回説明するから良く聞いてよね?」

そう言って説明を始めたアリサ。

すずかもアリサの説明に細かい部分を付け足してくれたから凄く解り易かった。

簡単に言うと、終業式が終わったら、クリスマスプレゼントを買いに行って、病院に居るはやてをアポ無しで訪問してびっくりさせようっていう計画。

終業式の日が丁度クリスマス・イブの日でもあるから。

でも、そんな事してシグナム達になのはが遭ったら大変な事になるよ、なんて隣になのはがいる状況で口が裂けても言えないよね。

ましてや、すずかはシグナム達の顔を知ってるんだ。

はやてに会った事が無い筈の私がシグナム達の事を知っているなんて、絶対におかしいと思うのは不思議な事じゃない。

とりあえず、帰ったら智哉さんに言わないと。


























それからと言うもの、私はずっとどこかで緊張していた。

何時なのはから何か聞かれても良いように。

でも、なのはは何も聞いて来ようとはしなかった。

授業と授業の間の10分休みの時も、お昼休みの時も。

お昼は皆で何時も通り屋上で食べた私達。

私はなのはとの問題を何とかアリサとすずかにばれない様に凌ぐので精一杯だった。

なのはと喋らないのは絶対に怪しまれるので、ぎこちなさが残りながらも話し掛けたり。

けれど、それはなのはも同じ感じだったようで。

そして遂になのはからは放課後になっても何も無かった。

「…良し、帰ろうかな」

携帯を取り出して智哉さんに連絡しようとした時、手が止まる。

何時も智哉さんに送り迎えして貰ってる私。

もうこれ以上甘えないって決めたのに。

でも、気付けば学校から帰る時には何時も携帯を掛けてしまっている。

だから、今日は歩いて帰ろうと思って教室を出ようとしたその時。

「フェイトちゃん」

名前が呼ばれた。

この声、何時も聞く………いや、今は聞いていた、か。

呼ばれた方向を向く。

そこに居たのは………

親友である、なのはだった。

私を呼んだ理由は一つ。

と言うか、今私が思いつく理由がその一つだけだったのは内緒。

「…なのは」

「…話、聞かせてくれるかな?」

「……言えない事もあると思うけど、それでも良いなら」

「…じゃあ、屋上で待ってるね」

「…わかった」

それだけ言って、なのはは先に教室を出た。

私も少し遅れて教室を後に、屋上へ。






























そろそろフェイトから連絡があってもいい頃なんだが、今日に限って無い。

なのはと何かあったか?

……いや、授業中は勿論、友達の前では流石に無いだろう。

もうこの時間の学校は放課後の筈。

何かあると、あったとすれば今のこの時間帯になる。

≪どうされますか、智哉様?≫

アイーシアがオレの心を察して聞いていた。

「……そうだね。なのはだけであればまだしも、和麻やら煉やら刹那、クロノ達が出てくる事を考えると、フェイト一人では不味いだろう。」

≪急いだ方が良いかも知れませんね≫

「…ああ、慌てず急げってね」

アイーシアはクスクスと笑う。

オレも釣られて笑ってしまった。

さあ、行こうか。

………慎ましくな。





























屋上に着き、なのはの姿を探す。

ぐるりと辺りを見渡した。

そこにはなのは。

「……!!」

そしてその後ろに………

クロノとアルフが。

二人を見た瞬間、私は反射的にその場から逃げ出した。

身体が勝手に動いていた。

今まで感じていた不安が、二人を見た瞬間私を飲み込んでしまう位に膨らんでいたのだ。

「きゃっ!?」

私は転び、捕まってしまった。

バインドによって、走っていた最中に身体が突然縛られてしまった為。

転移魔法を使った訳ではなく、走ってその場から逃げようとしたから。

「……ごめんね、フェイト。こうでもしないとフェイトを連れ戻す事が出来そうに無かったから……。」

アルフが俯き、そう呟く。

片腕を私に向けながら。

クロノもふぅ、と溜め息一つ。

「……うぅ」

バインドから逃れようともがくがそれは叶わない。

それは当たり前だった。

アルフのバインドなのだから。

自分の使い魔の能力は解っている。

迂闊だった。

転移魔法でも何でも使えば良かった。

管理局に居た時の規則を馬鹿正直に守っていた私。

無意識の事だから、今更嘆いても遅いのは分かっている。

それでも……。

「準備は出来たのか?」

突然何処からか声が聞こえて来る。

聞き覚えのある声。

ふとなのは達を見ると、上を見上げていたので私も見上げる。

照り付ける太陽が眩しかった為、目を細めた。

太陽を背にしているから、顔がはっきりとは見えない。

けれど、着ている鎧で判った。

太陽の光を浴びて更に光り輝く白銀の色。

上空からの声の主は………そう、和麻さんだった。

ゆっくりと屋上の床に着地すると、早速私に話し掛けて来る。

「フェイト、一緒に来て貰おう。悪いが君に拒否権は無い。」

その有無を言わさないという威圧感を私に感じさせつつ、言い放った和麻さん。

しかし、今管理局に戻る訳にはいかない。

「そんなに睨まなくても良いだろう?君をどうこうしようという訳では無いのだからな。」

和麻さんに言われて気付く。

どうやら自然と睨んでいたみたい。

「それに、君はハラオウンの名字を継いでいる事を忘れたとは言わせない。……俺が何を言いたいのかは、賢い君ならば解る事だろうが。」

「………」

そうだ。

今の私はテスタロッサじゃない……いや、テスタロッサだけじゃないんだ。

『ハラオウン』

今はクロノやリンディ母さんと同じ姓を名乗っている。

それを私は考えていたのか?

しっかり考えた上での行動だったのか?

………答えはノー。

今だって、局の上層部では私の任務放棄と智哉さんとの逃亡が問題になっているかもしれない。

そして、それが原因でクロノと母さんが迷惑を被ってるかもしれないんだ。

なんて浅はかな事をしたのだろう。

「………」

自然と涙が流れていた。

母さんやクロノは許してくれるかも知れない。

……いや、許してくれるだろう。

二人はそういう優しい心を持った人だから。

だからこそ、二人には本当に申し訳無い事をしてしまった。

その時。

「…おいおい、オレの愛する可愛い嫁を泣かさないでくれよ」


















声の方を向こうとしたけど、バインドで上手く見ることが出来ない。

すると突然、バリンという音と共に急に身体が動くように。

起きようとした私に手を差し伸べてくれた人が目の前に居る。

智哉さんだった。

どうしてここに居るのだろう?

どうして騎士鎧を身に纏った状態なのだろう?

私には何故だか分からなかった。

智哉さんの指が私の目に溜まっていた涙を拭う。

「フェイト、やっぱり君はオレの傍に居るべきじゃない」

私は何を言われたのか理解出来なかった。

いや、正確には理解出来たのだろう。

けれど、頭が、身体が

『オレの傍に居るべきじゃない』

その言葉を拒絶したのだ。

何も口にする事が出来ずにいた。

その間にも話は進んでいく。

「和麻。お前の先程の言葉を信じて良いんだな?フェイトには何もしないと言ったその言葉を。」

「俺の言葉に二言は無い」

「そうか……、お前がそう言うのならばそうなんだろう。」

そして、智哉さんは私の肩を両手で掴んだ。

口で何かを言っているよう。

(フェイト、良く聞くんだ)

「……?!」

でも、それとは別に智哉さんの声が予想外のところから聞こえて来た。

思念通話だった。

他の誰にも聞かれたくない内容なのだろうか?

私は思念通話にびっくりしてしまい、身体も一緒に反応してしまった。

怪しまれてしまったかも。

智哉さんの瞳が落ち着いて聞いて欲しいと言っている。

その瞳を見ていると直ぐに落ち着く事が出来た。

私が落ち着いたのを見計らってまた思念通話で話し出した智哉さん。

(もう二度と会えない訳じゃない。ただ、オレの進む道と局の進む道は少しばかり違うだけなんだ。長年に亘った闇の書の……いや、『夜天の魔導書』の力を封印、もしくは浄化する事。そして、呪縛に苦しんでいるはやてを救う事。目指すべき、辿り着くべき場所は同じだから。)

(…でも!)

(大丈夫、会う時間は出来るだけ作るようにするから。)

(……でも!)

(それにさ、さっきの和麻の話をオレも聞いてたんだ。フェイトはリンディさんやクロノに迷惑を掛けてしまった事を後悔して涙を流したんじゃないかい?フェイトを攫って行こうかとも考えたけど、その涙を見てしまったからには連れて行くことは出来ない。)

(………でも)

(フェイト、余り我が侭を言うものじゃないよ。君の涙を見てしまった以上、オレには自分の気持ちを貫く事は出来ないんだ。解って欲しい。)

(…………)

(分かった、じゃあこうしよう。フェイトが会いたいと思った時には何時でも来てくれて良いから、ね?)

そして、立ち上がった智哉さん。

同時に思念通話も切って。

なのは達とは反対の方向へ歩き出そうとして、ゆっくり顔だけ和麻さんの方を向けた。

「もしもフェイトの身に何かあった時は真っ先にお前を殺す。そして本局の存在全てを潰す。……必ずな。」

それだけ言うと、智哉さんは屋上で転移魔法を使った。

智哉さんの姿が消える寸前。

私には智哉さんの口が動いているのが見えた。

ま………た………ね………

口が動いている事しか……いや、それすら本当かどうか分からない。

けれど、私には『またね』と言っていると判る。

確信があった。

証拠があるわけではないけど。

それでも、智哉さんはそう言ったと判る。

今まで全身で、五感全てを使って智哉さんを感じて来たからかも知れない。

私の瞳から流れていた涙は何時の間にか途切れていた。

それに多分、今の私は笑顔なんだと思う。

それもこれも智哉さんのお陰。

また会えると約束してくれたから。

会いたくなったら何時でもおいでと言ってくれたから。

だから私は笑っていられる。

笑顔でいられる。

私は転移魔法で消えた智哉さんの姿を暫くの間、ずっと見つめていた…………。





































それから日が経ち、12月24日午後4時25分。

オレは海鳴大学病院に居た。

はやてにプレゼントを渡すため。

「はやて、ごめんね。余り会いに来れなくて……。」

ヴィータがはやての傍で悲しい顔をしながら話している。

そんなヴィータの頭を撫でながらはやては優しく返事を返す。

「ううん、それよりヴィータは元気やったか?」

「メチャメチャ元気!」

二人のやり取りをオレやシグナム、シャマルは部屋の窓側で見守っていた。

その時だった。

コンコン

部屋をノックする音。

そして、同時に聞き覚えのある声が聞こえて来た。

「こんにちは~」

一同が反応した。

すずかの声。

しかし、嫌な予感が頭を過る。

シグナムやシャマルも表情を一変させた。

ヴィータも扉の方に顔を向けて、不思議そうな顔をする。

だが、一方のはやては突然の訪問にも関わらずに嬉しそうな声で来訪者を中へ招き入れた。

「は~い、どうぞ~!」

「「「「こんにちは~!」」」」

四人の明るい挨拶と共に扉がガラガラと開かれる。

ヴィータは中に入って来た者達を見て、漸く表情を変えた。

コツコツと音を鳴らして床を歩いてこちらへ来る『彼女』達。

「わぁ~、今日は皆さんお揃いですかぁ?」

「こんにちは、初めまして!」

「……ぁ!」

「……ぁ」

中に入って来た四人。

後から考えると、この突然の出会いがこれから起こる災厄への前触れだったのかも知れない………。





























~後書き~

第26話でしたw

中々進みませんねw

26話まで来て、ようやっと本編9話中盤くらいですwwwwwwwwww

第27話は9話終わるくらいまで行きたい、と言うか行けたら良いな~。

と思う今日この頃www

早くStS編に入りたいです…………orz

2008年5月6日火曜日

<第25話 迫り来る何か>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』























<第25話 迫り来る何か>























次の日、私は智哉さんと一緒に着る物を買いに行きました。

智哉さんは歩けはしたんですが、まだフラフラして危ないと思ったので一人で行きますからと言ったんです。

けれど、どんな状態であっても智哉さんはやっぱり智哉さんでした。

大丈夫だから、の一点張りなのです。

確かに一緒に行きたい。

心からそう思います。

でも、私だって智哉さんに無理をさせてまで一緒に行きたいだなんて我が侭は言いません。

そんなこんなで一人で街に行き、着る物や食事の材料を買い終わって真っ直ぐ智哉さんの家に。

家に帰ってからは洗濯や食事の支度、掃除など家事全般をやりました。

この日から2日程は特に管理局との間では重要な事は特にありませんでした。

管理局との間だけはですけど……ね//////































フェイトと少しあったけど、それでも二人で乗り越えてまたこうして一緒に居られるようになった。

≪智哉様、本当に良かったですね≫

「そうだね、本当に良かった……。………オレの命も後僅かって時にあんな事になるとは思ってもいなかった。本当に迂闊だったよ。」

今、オレは自分の部屋に居る。

机に向かって勉強しながらアイーシアと話していた。

残りの時間をどう使うか。

迫り来る刻にどう備えるか。

最も安全にはやてを救うにはどうすべきか。

そして、何より………

ガチャッと部屋のドアノブが開けられて入って来る少女であり、オレの恋人であるフェイト。

「智哉さん、何してるんですかぁ?」

先日色々あってからと言うもの、フェイトは今までの遠慮していた感が無くなった。

そのお陰で、ここ数日はもうオレにベッタリ。

今だってオレの傍まで駆け寄って来て、両腕を右腕に絡ませている状態だ。

まあ、ベッタリなのは全然オレ的には問題無い。

寧ろ嬉しいくらいだ。

なんだが……………………

これだけ一緒に居たら、っつーかくっついていたら何時か飽きると思う。

どうなるのかなど、容易に想像出来る。

そんな事を思いながら苦笑しつつ答える。

「大学の勉強を少し、ね。余りサボると後々大変な目に遭うのは目に見えてるからさ。」

フェイトは机の上に広げてある教科書が気になったのか、少し覗き込むように顔を出した。

少々の沈黙の後。

「……何が書いてあるか、さっぱり解らないです」

思った通りの答えが出てきて、オレは笑ってしまった。

ここで笑うと必ずフェイトが顔を膨らまして怒るのだが、毎回毎回どうにも堪える事が出来ない。

「ああ~、また智哉さん笑いましたぁ!……フンだ、どうせ解りませんよぉ。」

そう言って拗ねてしまったフェイト。

だけど、オレの腕は決して離そうとしない。

そんなギャップもフェイトのとても可愛い一面。

思わず抱き締めたくて、膝の上にフェイトを乗せる。

そして…………

むぎゅうううぅぅぅううう!!!

っと音が鳴るのではないかという位抱き締めた。

そんなに強く抱き締めたら苦しいだろうと思うかも知れない。

しかし、フェイトはその位で丁度良いと言うのだ。

まあ、最初はやはり少々苦しかったようだが。

フェイトの体温を感じながら、オレ達は暫くそうしていた………。



























夕方。

フェイトがそろそろ夕食の支度をするからと、オレの膝の上から下りて一階の台所へ行った。

椅子の背もたれに寄り掛かる。

ボーッとした。

その時頭に思い浮かんだのが先程の心配事だった。

ボーッとしながらも本当に他にはもう無いのかと考える。


………………



……………



…………



………



……


…もう一つあった。

これは正直同じ位…………いや、寧ろこれこそ最も心配するべき事だった。

それは、オレの命の炎が消えた時……正確には、消えようとしている時からだろう。

どうなるのかなど、容易に想像出来る。

その時だった。

≪智哉様、やはり残されてしまうフェイトさんの事が心配……ですか?≫

「……そうだね、心配じゃないって言ったら嘘になるかな。先日の事があってから、フェイトの遠慮していた感が消えた分、オレが死ねば受けてしまうショックも今までとは比べものにならないだろうから。」

≪智哉様、あの……≫

少しの間が空いてから、アイーシアが何かを言おうとして来た。

その先の言葉は何となく、いや殆ど確信を以って判ったから、オレはその言葉を遮るように少し強い口調で話し掛ける。

「アイーシア」

≪……はい≫

沈んだ声。

やはり言わんとしていた事が当たったようだ。

「前にも言った筈だよ?オレの命は君と契約してる間だけのもので、オレが今生きている代わりに君の目的を果たす事。ここまで生きて来れたのも君のお陰、フェイトと出会う事が出来たのも君のお陰なんだ。感謝はされど、我が侭やら何やらを君が言われる筋合いなんて無いんだ。」

前にも同じような事でこんなことを話した。

その時と同じようにオレは微笑みながら話す。

ただ、二つだけその時と違った。

一つは戦場だった事、そしてもう一つは思念通話ではなく、オレがこうして直に話をしている事。

…まあそれ以外に、天上を見つめながらってのもあるにはあるが。

≪…智哉様にとっては、余計な事…でしたね。申し訳ありません。智哉様の決心を揺らがせてしまうような事を言ってしまって。≫

アイーシアは本当に申し訳無さそうに謝罪を言う。

オレは気になどしてないよ、と答えた。

≪ふふふ≫

アイーシアも恐らくオレの返す返事など分かりきっていただろう。

だから笑った。

暗い顔、悲しい顔、寂しい顔、辛い顔。

そんな表情をされるより、笑っている顔の方が絶対に良い。

それはアイーシアにも言える事。

オレは時々彼女の姿を見えることがある。

彼女は何時もデバイスだと言い張るが、オレには決してそうは思えない。

彼女という単語を使っていることから察しが付くだろう。

オレの見る、アイーシアの姿は女性だった。

名前からも女性と思えるのもそうだが。

後ろ姿しか見たことは無いが、長く綺麗に整った髪の束が真っ直ぐ背中に沿っている様は美しいの一言だった。

そして、何よりも澄み渡るような一点の曇りも無い、青空の如き髪の色。

一人思いに耽っていると、下からフェイトの声。

「智哉さぁ~ん。出来ましたよぉ~。」

どうやら夕飯の支度が終わったみたいだ。

オレは椅子から立ち上がり、アイーシアを何時ものように首から提げ、一階に下りて行った。

その後は他愛も無い話をしながらフェイトの愛が沢山籠もった手料理を堪能したりして一日を終えたのだった………。

























突然だが、それは昼過ぎにそれは起こった。

(……何だって!?はやてが倒れた!?)

突然の念話だった。

オレももう歩くのは勿論、走る事も問題無くなった。

魔力もそこそこ回復している。

余りにも暇だったので、闇の書の件やはやてに会いに行く予定を話し合おうかと思っていた矢先の出来事だった。

(……分かった、直ぐ行く!場所は?………了解!)

場所をシグナムに教えて貰い、自分の部屋を飛び出したオレ。

ドタドタと階段を下りて来たオレに対して、フェイトは不思議そうな顔で話し掛けて来た。

「……智哉さん?どうしたんですか?そんなに慌てて。」

「はやての容態とかフェイトの学校の事とかやる事ごっそりあるの忘れてたからさ!今からでも少しやっておこうと思ってね!」

そう言いながら、オレは玄関で靴を履く。

「フェイトはちゃんと家に居るんだよ?夕方までには戻るからさ。じゃあ、行って来る!」

何時もなら、フェイトのいってらっしゃいを聞いてから出掛けるのだが、今はそんな猶予は無い。

そのまま家を出た、と言うか飛び出した。

























「うん、大丈夫みたいね、良かったわぁ」

「はい、ありがとうございますぅ」

「はぁ。ホッとしましたぁ。」

「せやからぁ、ちょお眩暈がして、胸と手が攣っただけやて言うたやん。もぉ、皆して大事にするんやからぁ。」

「でもぉ、頭打ってましたし~……」

「何かあってはからでは大変ですから」

「はやて!良かったぁ。」

「まあ、来て貰ったついでに、ちょっと検査とかしたいからもう少しゆっくりして行ってね。」

「はぁい」

そんな家族の会話がされている時。

「はぁはぁ…は、はやて!!!………はぁ、大丈夫か!?容……態……は……?」

廊下は走らないようにと注意されて。

院内では大声は出さないようにと注意されて。

受付の人には落ち着いて下さいと言われて。

ここに来るまで、かなり恥ずかしい思いもした。

が、それも早くはやての容態を確認したかった為。

だからこそ、我慢出来た。

けれど………

いざはやての部屋に入ってみるとどうだろう?

何とも言い難いこの雰囲気。

オレ一人だけが息を乱して、慌てた姿で。

全員がオレの方を向いて、何事だとでも言いたげな表情をしているではないか。

「………智哉さん、どないしたん?そない慌てて。うちなら心配ないで?」

終いにははやてに苦笑されながら言われる始末。

途端に恥ずかしさが込み上げて来た。

そして、オレにこんな恥ずかしい思いをさせる原因を生み出した張本人である、シグナムを睨んだ。

思いっ切り。

力の限り。

すると、シグナムはオレの視線に気付く。

一瞬どうして睨まれているのか解らなかったようだが、直ぐに思い当たる節が見つかったのだろう。

(…すまない。後でお詫びをしなければならないな。)

目を瞑り、念話でそう謝って来た。

何時もは気にするなで終わらせるのだが、今回ばかりは色々恥もかいてしまった事だ。

その言葉に甘えよう。

そう決心した。

「さ…さて、と。とりあえずシグナムさんとシャマルさん、それに……」

「……え?オレですか?」

「あ、はい。貴方もはやてちゃんの関係者みたいなので、少しお話に付き添って頂こうかと思ってだんですが、宜しかったかしら?」

「ええ、特に問題は無いので構いませんよ?」

そう言うと、はやての担当医であろう女性医師は部屋の外へ出た。

呼ばれたオレ達はその後に続いて部屋を出る。

はやては不思議な顔をしていたので、直ぐに戻るからと一言掛けておいた。



























「今回の検査では何の反応も出てはいないのですが、攣っただけ、という事は無いと思います。」

「はい……、かなりの痛がり様でしたから」

「麻痺が広がり始めているのかも知れません。今までは、こういう兆候は無かったんですよね?」

「と、思うんですが……。はやてちゃんは痛いのとか辛いのとか隠しちゃいますから。」

「発作がまた起きないとも限りません。用心の為にも、少し入院して貰った方が良いですね。大丈夫でしょうか?」

シャマルは入院した方が良いと聞いて、不安そうな表情をしながら、オレやシグナムの顔を窺う。

シグナムは目を瞑り何かを考えている様子だった。

「…そうですね、私はそうした方がはやての為にも良いかと思います。まあ、最終的には一番はやての近くに居る二人が決めるべきではあると思いますが。」

そう言いながらオレもシグナムの様子を窺う。

するとシグナムの口からも、はいと一言。

オレにはこの際仕方無いと思ったのが見て取れた。
























部屋に戻ったオレ達。

暫しの沈黙の後、オレが簡単に先程の内容をはやてに伝えた。

二人が中々切り出さなかったから。

「入院?」

はやてがそう返す。

「…えぇ、そう…なんです」

シャマルが言い辛そうにそう伝えると、はやては曇った表情に変えた。

ヴィータもはやてを心配そうに見つめている。

「あ、でも検査とか念のためとかですから、心配無いですよ、ね?」

シャマルはそう言って、丁度花瓶に水を入れて部屋に入って来たシグナムに無理矢理話を振った。

表情の曇ったはやてを安心させる為に。

シャマルの意図を解っていたシグナムは普段通り、落ち着いた表情で、はいと答える。

しかし、はやての口から出た心配は別のところにあった。

「いや、それはええねんけどぉ………あたしが入院しとったら、皆のご飯は誰が作るんや?」

そう。

食事だった。

オレは何故はやてがそんな事を心配する必要があるのか解らなかった。

普通、この場に居合わせた者ならばそんな事は心配しないだろう。

どう考えたってシャマルが居るのだから。

外見が子どもである、ヴィータはまあ置いといて。

シグナムが百歩譲って出来なかったとしよう。

しかしだ。

シャマルに料理が出来ない等と言う欠点は何処にも見当たらない。

寧ろ、それどころか普通に八神家の家事全般を一任されていると思っても、何ら不思議ではないだろう。

実際、この場に居るオレもそう思っている内の一人なのだ。

だが事実、はやての口からその様な心配事が出てしまったのだ。

「うぅ……」

ヴィータも少しの間を置いて、唸っている。

「そ、それは……まあ、何とかしますから」

あのシグナムでさえ、目の動きが変だった。

キョロキョロしながら、そして声も何時もの落ち着いた雰囲気のものでは無かった。

「そうですよ、大丈夫ですよ……多分」

シャマルに至っては、言葉の最後に”多分”をつけてしまっている。

それも苦笑いしながら。

全員思わぬ事をはやてに突かれてしまったのか、何時もの感じでは全く無かった。

はやてはう~んと少し唸っていたが、ヴィータが横から声を掛けた。

「毎日会いに来るよ!だから……大丈夫」

オレには最後の方だけ声が沈んでいるように聞こえた。

ヴィータも不安なのだろうか?

だが、それもこれも全ては主がはやてであるからなのだ、と改めて思う。

「ヴィータは良え子やなぁ。せやけど、毎日やのぉても良えよ。」

はやてはヴィータの不安を取り除こうとするかのように頭を優しく撫でる。

オレがフェイトにしてあげるように。

「やること無いし、ヴィータも退屈やん」

「う、うん……」

図星だったのか、ヴィータはまた唸る。

少しの沈黙の後……

「ん~、ほんなら私は三食昼寝付きの休暇をのんびり過ごすわぁ」

そう言って三人を安心させようとしたはやて。

だったのだが、束の間。

「あかん!すずかちゃんがメールくれたりするかも!」

どうしよう、と困った顔をした。

オレはそんなはやてを見て笑ってしまった。

「…あぁ!智哉さん笑ったぁ!酷いなぁ、もぉ。友達は大事にせなあかんねんでぇ?」

頬を膨らませて怒るはやて。

だが、そんな表情ですら可愛く見えてしまい、更に笑ってしまう。

それと同時に、はやての表情はフェイトと似ているなとも思った。

「…ふふ、大丈夫です。私が連絡しておきますよ。」

オレがはやてに怒られているところを見たシャマルも苦笑しながらはやてにそう言った。

「あぁ!シャマルまで笑ったぁ!」

暫くの間はやての病室からは笑いが絶えなかった……。

















それから暫く経ち……

「では、戻って着替えと本を持って来ます。ご希望がありましたらどうぞ。」

「う~ん、何にしようかなぁ?」

少し唸るとはやてはシグナムに持って来て貰いたい本を何冊か言う。

「んじゃ、オレもそろそろ戻るかな」

「ん?智哉はまだ残っていても構わないんだぞ?」

シグナムの言葉は嬉しかったが、オレも夕方までには帰る約束をしているのを伝えた。

オレ達は揃ってはやての病室を後にした。

病院の入り口を抜けた時。

ヴィータの足が止まった。

病院の方を心配そうに見つめている。

傍にヴィータが居ないことに気付いたシグナムはヴィータを呼ぶ。

シグナムの声に一瞬遅れて反応したヴィータは小走りでオレ達に追いついた。

そして、またオレ達は歩き出したのだった………。

























その後、オレはフェイトの通う、私立聖祥大付属小学校に連絡をした。

担任には色々聞かれてしまい、何とか言い逃れをして凌いだ。

とりあえず、明日から通わせることに。

その事をフェイトに帰ってから伝えると、少し複雑な顔をした。

まあ、無理も無いだろう。

今まで……いや、ついこの間まで一緒に学校へ登校したり、一緒に魔導師として戦ったりした親友である、なのはこと高町なのはと会うことになるのだから。

理由はどうであれ、不覚にもフェイトがオレを連れて管理局の下を離れてしまったのだ。

明日なのはと会えば、何かしらの問題が起きても不思議ではない。

オレは唯一にして最大の問題を、フェイトに任せる事しか出来なかった。

それと最後にごめんね、と付け加える。

フェイトはオレの気持ちを察してか、気にしないで下さい、と笑顔を見せてくれた。

「……えと、智哉さん」

少しの間を空け、そう切り出して来たフェイト。

「どうしたんだい?」

フェイトが話し易いように配慮しながら話し掛ける。

すると、先程の笑顔が何処かへ消えてしまっていた。

それどころか、何やら俯きモジモジしているではないか。

不思議に思ったオレはもう一度フェイトに声を掛ける。

「……フェイト?」

「…え?!あ、え……と、そのぉ…」

モジモジした感じは治まりそうに無い。

オレは思わず苦笑しつつもフェイトに話す。

「何を言いたいのかは判らないけど、落ち着いて話してごらん?」

その一言で少しは落ち着いた様子。

そして、フェイトはオレの目の前で大きな深呼吸をする。

その深呼吸を目の前にして、一応オレも胆を据わらせてみた。

「一つだけ………、お願いが…あります」

「そのお願い、しっかり聞こうか」

「その………少しの間、一緒に……寝て……くれません…か?」

言い終えたフェイトの頭からは湯気が出ているような気がした。

今の、たった今の一言だけでも、フェイトには相当な勇気が必要だったに違いない。

オレは苦笑しつつ、頑張った小さな愛しのプリンセスに言ってあげた。

「承知いたしました。私が愛するたった一人のプリンセスのご要望とあらば、是が非でも叶えて差し上げましょう。」

その言葉でプリンセスは顔を上げる。

挙げた顔は真っ赤だった。

しかし、そんな姿をもプリンセスはオレに綺麗だと思わせてしまう。

これは正直な感想。

決してお世辞ではない。

……まあ、こんな事を考えてしまうオレは重症なのかも知れないがそこは伏せておこう。

仕方ないのだ。

未来の嫁であろうフェイトが、愛するプリンセスが可愛過ぎるから。

オレはプリンセスの願いを聞き入れ、今夜を共にした……。


























~後書き~

第25話の終わりですw

如何だったでしょうかね?ww





今ふと思ったんですが………

久々に1週間以内の更新だw

今回はそこそこ良いペースで進んでましたw

この調子が続く事を願うばかりです、はい………w

2008年5月2日金曜日

<第24話 稀少技能>

二次創作SS『魔法少女リリカルなのは ~定められし運命~』























<第24話 稀少技能>



























トイレのドアを開けた瞬間、また身体が動かなくなってしまい、傍に居たフェイトに倒れ掛かってしまった。

戸惑いながらも、しっかり受け止めてくれたフェイト。

余りにも大き過ぎるダメージが容赦無く身体を襲って来る。

その度に、オレの身体は悲鳴を上げていた。

何とか痛みを堪えつつ、声を出さないようにはしてるが、身体は正直だ。

「…さ、智哉さん行きましょう。シグナム達が首を長くして待ってますよ。」

優しい声で話してくれたフェイト。

もう、色々心配掛け過ぎてこれ位じゃ驚かなくなってしまったか。

情けない限りだよ、全く。
























「やっと来やがったか。おせぇぞ神崎。」

「ヴィータちゃん、そういう事言わないの。智哉さんは病人で負傷者なんですからね?」

ヴィータは待ち草臥れたと言う顔を全面に出しながらトイレから戻って来たオレに話し掛ける。

そんなヴィータを見たシャマルは、だらしの無いと叱るのだった。

二人を見たオレは思わず苦笑してしまった。

笑ったオレを見たヴィータは膨れっ面を見せ、シャマルもヴィータの顔を見て苦笑していた。

「…仮面の女が闇の書に抜き取った魔力を、我々の言葉など無視して蒐集させてしまった。…本当にすまないと思っている。」

「お前の強大過ぎる魔力の甲斐あって、一気に200ページ以上も埋まった事は感謝してもしきれん。だが、不本意であったのが唯一の心残りだ…。私からも謝罪させて貰う、すまない…。」

そこへしんみりとしていたシグナムとザフィーラからの謝罪の言葉。

いきなりだったので少し驚いたが、オレは気にせず話し掛けた。

「…そんな顔するなって。お前等に奪われた訳じゃないんだからさ。それに結果的には残りは後少しになったんだろ?だったら今はそれで良いじゃないか。オレもはやての身体に降り掛かる呪縛を早く解いてやりたいと思ってるしな。」

笑顔で言ったオレの言葉に、シグナム達は何かを堪えているようだった。

恐らく、オレが別に良いからといった類の言葉を言う事は想像していたのだろう。

が、その想像を超える言葉をオレは自然に紡いでいた。

結果、シグナム達が何か……そう、涙を堪える事に。

ヴィータの顔は既に涙が零れ落ちた後があった。

それも今尚続いている。

我慢の限界だったのだろう。

だが決して声を上げて泣こうとはしなかった。

騎士としてのせめてのプライドがそれを拒んだ結果。

傍に居たシャマルも唇を噛み締め、痛みで涙を堪えている様子。

シグナムも女性でありながら将としてのプライドがあるのだろう、他の者が流さずにいる為、自分一人だけ泣くことは決して許されないと思っている。

それは顔を見れば容易に判った。

そんな居た堪れない雰囲気に我慢出来なくなったオレは皆に向かって優しく微笑みながら言った。

「………泣いても良いんだぜ?今はやては居ないんだ。泣きたい時に泣けない事だって沢山あっただろ?だったら今泣いておけよ、思う存分な。」

瞬間だった。

シャマルもシグナムも箍を外したかのように瞳から涙が溢れ、止め処無く流れたのだ。

「うわああああぁぁぁぁぁぁああああん!!!」

ヴィータはそれはもう赤ん坊のように大声を出して泣き出し、オレに抱き付いて来た。

「智…哉…さん……!ごめん……な……さい……!」

シャマルもヴィータに続いてオレに泣きついて来た。

精神力が強い人だと思っていたが。

見た目の綺麗な姿からは想像もつかない。

……いや、こういう女性はいるか。

それよりも。

泣きつくのは大いに結構なんだ。

………なんだが。

……一応、言っておこう。

オレは病人で怪我人だ。

本当であれば真っ先にベットで寝ていなければならない筈の人間なのだが。

先程、思う存分と言う表現は変だが、皮肉にも吐血したお陰で大分楽になった。

何とか今は一人で立っていられる状態まで回復。

つい先程まではフェイトとアイーシアに魔力を使わせてまで運んで貰っていた身なのに。

本当に不思議なもんだ。

自分でさえそう思っているのだから、フェイト達からすれば異常に見えているに違いない。

そんな事を考えながら、二人の頭をフェイトの時のように優しく撫でながらシグナムの方を見る。

シグナムは予想通り、その場で泣いていた。

ザフィーラに慰められながら。

しかし、流石はザフィーラといったところか。

女性陣が涙を流しても自分は流さない。

守護獣であっても、やはり男なのだ。

いや、漢と言うべきか。

(……やはり、もうこいつ等は立派な人間だな)

≪ええ、立派な意思や感情を持っているのですから。もうプログラムとは言えませんね。≫

(それもこれも、全てははやてのお陰なんだな)

「………?どうした、フェイト?」

ふと先程からずっと黙ったままのフェイトに声を掛けてみた。

「…ふぇ?!あ、えと、どうして智哉さんがはやての事を知ってるのか不思議で……。」

そうか。

フェイトにはずっと黙ったままと言うか、こいつ等の主がはやてって事を知らないのだ。

その一方でオレはどうしてフェイトがはやてを知ってるのか分からなかった。

だが、善く善く考えてみれば思い当たる節が一つ。

すずかだ。

この前温泉の帰りに一緒に寄った時に見せたはやての反応から二人は友達なのだと確信した。

そのすずかから、フェイトははやての事を色々聞いていたのだろう。

「ハハ、オレの場合、温泉旅行の時には既にはやてと友達だったんだ。オレもはやてにお土産を渡しに行こうと思ってたところにすずかが行くと言ったからさ。」

「そうだったんですかぁ…」

なるほどと言う顔で頷くフェイト。

「あ、そうだ。オレが歩ける位に回復したら、はやてに会いに行こうか。フェイトは会ってみたいだろ?」

「え!?良いんですか!?」

「まあ、オレが歩ける位になったらだけどね」

そう言うと、フェイトはとても嬉しそうに頷く。

フェイトの笑顔が見れて良かった。

その笑顔によってシグナム達もスッキリした顔になる。

顔は赤いが。

まあ、それは恐らく恥ずかしさから出たものだろう。

フェイトの笑顔は見た人や送った人の気持ちを宥める効果があるのだ。

それはオレが保障しよう。

……それにしても。

……この笑顔も後何回見る事が出来るだろうか?

頭の隅でそんなどうしようもない事を考えてしまった。

ヴィータとシャマルは絨毯に座ったため、そこからオレはベットまでフラフラしながらも何とか辿り着き、腰掛けた。

その時、フェイトが心配そうにしていたのは語るまでも無いだろう。

気分転換のため、話題を変える。

「…それじゃ、闇の書の呪縛やら管理局への今後の対応やらを今ここでしてしまおうか。そして、何より裏切り者扱いされているオレを助けたフェイトの事も考えなきゃいけないからな。」

「……私がしっかりしていれば」

フェイトの気持ちが沈んでいくのが目に見えてしまった。

だから、何も言わずにオレはフェイトの頭を優しく撫でた。

オレの手から伝わってくれるだろう。

オレがそんなことは無いって思ってる事くらいは。

「………それに」

付け加えるように、ゆっくり口を割ったオレ。

「それに……オレがヘマしたお陰でフェイトを巻き込んでしまう結果になったんだ。……だから、フェイトが気にする事は無いんだよ?」

言い終わっても、頭を撫でるのは止めなかった。
























「今日は突然すまなかったな、テスタロッサ」

シグナムが玄関を出る前にこちらに向いて話し掛けて来ました。

「そんな事無いですよ。智哉さんも戻って来た頃に比べて随分顔色も良くなりましたから。」

「そのようだな。………しかし」

フッと口元が笑うが、直ぐに不思議そうな顔になったシグナム。

それを見た私は疑問に思い、シグナムに尋ねます。

「しかし……どうしたんですか?」

手を顔に当てながら、うーんと少しの間唸ったシグナムは、やっぱり疑問は解けないようで。

「……いや、智哉が重症を負ったのは、今日なのだろう?」

逆に尋ねられてしまい、私もシグナムが何を言いたいのかを考えつつも、とりあえず答えてみる事に。

「…そう、ですね」

「リンカーコアを抜かれたのだから、少なくとも1週間は動く事もまともに出来ない筈。」

何となくだけど。

シグナムの言わんとしている事が解った気がしたんです。

そして実は、その事について私自身も疑問に思っていた事。

「……筈なのだが、ベットまでフラフラしながらとは言え、一人で歩いて行けたのが不思議で仕方ない」

「………それは、私も思ってたんだ。……智哉さんのあの回復力は尋常じゃないって。あの場でそんな事をいきなり言うのはどうかと思ったから、とりあえず言わなかっただけなんですけど。」

「……それならば、今からでも言って真相を追究するか?」

シグナムがゆっくりと言葉にしました。

何時かは聞かなければとは思っていたんです。

それが今日になるか明日になるか、一週間後か一ヵ月後か、はたまたそれ以上かに伸びるだけで。

だから、私は言いました。

「…そうですね、早い方が良いでしょうし、そうしましょう。」

シグナムは一度履いた靴を脱ぎ、再び智哉さんの家の中へ。

そして私と一緒に智哉さんの部屋へ行きました。

























≪フェイトさんとシグナムが戻って来ましたね≫

「……ああ、どうやらそうみたいだ」

ベットで横になりつつ、アイーシアと会話する。

≪二人とも智哉様の持つ異常なまでの回復能力に気付いていたのでしょうね≫

「…二人とも、恐らくそれを聞きに来るんだろうね」

オレの持つ特殊技能こと、レアスキル。

それは相手の能力を自分流にアレンジを利かせる事で自身のものとする、技盗能力ことスティールアビリティ。

これはオレが長年アイーシアと共に数多の戦闘を経験してきた事によって得たスキルだ。

だがオレにはもう一つ、レアスキルを持っている。

それが超常回復能力ことSARA(スーパーオートリカバリングアビリティ)。

これはオレがアイーシアを起動させると発動するようになっている。

自身の魔力を少しずつではあるが、常に消費し続ける。

体力や傷が無い間はその分の魔力は別に保存され、ダメージを負った時、自動的に溜められた魔力で回復魔法が発動する仕組みだ。

これは自動で発動する上に、魔法陣が一々展開されることも無ければ自身が何かの光に包まれる事も無いため、相手に悟られ難い事が一番の長所。

レアスキルだけに、短所は無いのだが………

その時、ガチャッと部屋のドアノブが開けられた。


























「……智哉さん、起きてますか?」

ベットで寝ているかもしれないので、一応声を掛けてみました。

「…ん、フェイトか。それにシグナムも。」

智哉さんが顔を私達の方に向けて、私の声に返事を返してくれたのでそのままシグナムと一緒に傍まで行き、座ります。

少しの間、智哉さんの顔色を窺ってから問い掛けました。

「……智哉さん、あの…」

「フェイトもシグナムも、オレの異常なまでの回復能力ついて聞きに来た。それで合ってるかな?」

「え!?あ、えと……」

智哉さんにいきなり思っていた事を言われてしまい、思わず取り乱してしまいました。

シグナムも驚きを隠せないようで。

そんな私たちを見て、クスクスと笑いながら智哉さんは続けます。

「まあ、リンカーコアを抜かれてからまだ半日も経ってない状態の人間が、フラフラしながらも歩けているなんて、普通であれば不可能も不可能、有り得ない事だろうから。」

アハハ、と笑いながら普段と変わらない表情で話しています。

これも真実なのでしょう。

少なくとも、私は智哉さんが言っている事は嘘には聞こえませんでした。

「……ま、簡単に説明しておこうか。オレの持つレアスキルは実はもう一つあってね。それこそが二人の聞きたかった内容なんだろう。『超常回復能力(スーパーオートリカバリングアビリティ)』って言うんだけど、長いからオレはSARって呼んでる。これのお陰で体力の回復スピードが異常なまでの早さになっているんだ。」

本当に驚くばかりの私。

レアスキル自体持っているだけでも凄い事なのに、それを二つも。

「……全く。一体後どれ程驚けば済むんだ?」

シグナムはと言うと、もう驚きを超えて呆れたような溜め息を吐いていました。

「そんな事は無い。現に欠点もあるしな。」

「え、欠点?」

レアスキルに欠点などあるのでしょうか?

そう思って、私は智哉さんの言葉に首を傾げてしまいました。

隣に座っているシグナムも、何を言ってるんだと言う顔をしています。

「…まあ、本来であればスキルって言うのは、長所はあれど、欠点なんて存在しないのが普通なんだけどな。回復するのは体力が優先されるようになってるんだ。だから、今回のようにリンカーコアを抜かれたりした場合なんかは、リンカーコアの修復は後回しで先に身体が動けるよう回復魔法が発動する仕組みなのさ。」

そうだったんだ。

だから智哉さんは、多少身体がボロボロでも立ち上がる事が出来た。

でも、それにしたって無茶な事をし過ぎな気が。

「だが、幾ら体力が回復しつつあるからと言っても、お前はリンカーコアを抜かれたんだ。魔力をしっかり制御出来るようになるまでは大人しくしていろよ?」

「そうですよ?何処まで行っても今の智哉さんは重症を負った怪我人なんですから。ちゃんと寝てなきゃ、私怒りますからね!?」

そう言って、智哉さんがベットから歩かないように釘を刺したんです。

すると、智哉さんもフェイトには敵わないな、と苦笑しながら私の言った言葉に頷いてくれました。

と、その時。

智哉さんが何かを思い出したようで。

「……それはそうと、フェイト。着替えとかどうしようか?」

………あ。

すっかり忘れてた。

取りに帰ろうとしたらシグナム達とバッタリ出会って。

それから色々あって、気付けば外はもう真っ暗。

冬のこの時期だから日が沈むのも早いし、何よりもう8時。

流石にクロノとか母さんももう帰って来てるだろうし。

今行けば確実に何か嫌な事が起こるでしょう。

そんな時。

「今日一日はオレのパジャマとか使って我慢して、明日でもフェイトの着る物とか買いに行こうか。買って来た物は家に置いておいて、来た時に着ると。」

「え、良いんですか?……でも、智哉さんに迷惑掛けてしまってますし……」

智哉さんの厚意はとっても嬉しい。

それも心からのだから尚更。

「そうした方が良いだろうな。智哉がこちら側で、テスタロッサも来たとなれば幾ら家族でも管理局ならば判らんからな。」

シグナムもそうした方が良いと言ってます。

でも……。

「勝手だとは思うけど、オレはフェイトが家族に拘束される姿を想像したくない、家族の仲を壊したくないし、いがみ合って欲しくなんかもない。折角出来たフェイトの家族なんだから、ね?」

そう言葉を紡ぎながら、私の頭を撫でてくれる智哉さん。

智哉さんの言葉は、私を気遣ってとかじゃなく、自然と出てくるんです。

その言葉にどれだけ救われたでしょうか?

感謝してもしきれません。

「……じゃあ、お言葉に甘えさせて貰っちゃい…ます」

モジモジしながらでしたが、そんな私を見ても智哉さんは微笑んでくれたのでした……。






























~後書き~

最初に書くべきこと。

ゴメンナサイ。

m(_ _)m

2週間以上も更新せず、本当に申し訳アリマセンでした。

m(_ _)m









いや~、もう色々あってですね。

バイトとか、学校のグループ活動とか、通夜とか。

とりあえず、次はしっかり最低でも1週間以内にはアップするんでwwwwwwww